何とかなるかな?
田河先輩が調べた範囲によれば、人形娘シリーズのカスタマーバージョンは、価格応談であるものの、どのようなタイプにも対応するとあった。幼い少女タイプからアスリート、有能な秘書タイプなどいろいろと・・・
しかし、考えてみれば人間並みかそれ以上の論理的活動をするガイノイドのプログラミングを組むのは物凄いコストがかかるので、そういったものに対応するソフト制作費は現時点では本体価格以上にかかるのは明白だった。これが、学習能力を持った自己成長型の制御システムが存在すれば可能であるが・・・
「智、俺の推測だがカナッペを人形娘に改造したのは、おそらく普通の人間らしい自我を持ったメイドロボというクライアントの要求じゃないかなと。この人形娘を販売している会社のホームページを見ると、そういったクライアントの要求を満たす人形娘の製作には時間と費用がかかりますとあるんだけど、もしかすると本物の人間を素体にした人形娘を出荷しているんじゃないのかと・・・」田河はタブレットを操作しながらそういった。
「それじゃあ先輩、香奈は人形娘のプログラミングの手間を省くために、改造されたというのですか? それじゃあ、香奈はもう・・・」智樹は相当不安になっていた。死ぬまで香奈は人形娘のままかと・・・
「そうだなあ、こういった機ぐるみのようなスーツは軍事用があるとは聞いたことあるぞ、たしか合衆国航空宇宙軍が制式採用するというのだが。でも民生用があるとは聞いたことないし・・・担当者に聞かないといけないだろうが、目的はプログラム情報収集のためにカナッペを人形娘に改造したのかなと。ところでカナッペ、君が人形娘にされる前にそんな話しあったか?」
”なかったよ! いきなり麻酔みたいなのを打たれて。気が付いたらわたしの身体を改造している最中だったわ。でも担当の人みたいなのが君は一年間その姿だ。戻る戻れないは君次第だといわれた。” 田河が質問すると香奈は少し考え込んでから筆談で答えた。
「そうか、カナッペはモルモットということかな。たぶん、本物の人間を内蔵した人形娘の研究を秘密裏にしていたんだろうか? でも無理矢理承諾もなく改造するんだから本当の事なのか判らないな」
「先輩、じゃあ香奈は人間に戻れるかもしれないというわけ?」
「ああ、しかし奴らが言う事は信じられないし、事実を隠蔽するために密かにモノとしてスクラップされる危険もある。無論、警察に駆け込むって手もあるだろうけど、遺失物として処理されたんじゃかなわないし・・・そうだなあ、やっぱ愛媛に帰る方がいいかな二人とも!」田河はタブレットの操作をやめて、電話をかけ始めた。




