都で王様に会いました
あれ?投稿できてないで書き直しx2にやり直し。
夏は暑い、当たり前のことなので油断してたのかもしれない。
勤め帰りのいつもの道、あの夜俺は死んだ。
俺がこの世界に転生したはこの体が5歳の時になる。
この子供の親達が安堵の表情をしていたところからどうやら大病を患っていたようだ、対外的には奇跡の生還。
どうやら本来のこの体の持ち主は病気に負けたようだ、その病気の後遺症で俺の寿命が異常に延びたことにしたらしい。
今から448年前(この世界の時間でだが)のことになるが、俺の体感的には13年前のことになる。時間の経過の感覚が違うのだ、例えて言うとオンラインゲームのゲーム内時間と現実時間のずれのようなものだ。
俺自身が体感してる時間の経過に対して、周りの時間の流れが尋常じゃなく早いのだ。これが年々加速していっているような感じだ。5歳から6歳になるのにこの世界の人達から見れば4年かかった、6歳から7歳には8年、7歳から8歳は12年、8歳から9歳は16年、9歳から10歳に20年かかった。
今年で453歳になる外観的には18歳だけれどね。えっ計算が合わない?10歳から11歳になるのに24年だったのにそれ以降は1つ歳を取るのに55年かかるようになった、かなりでたらめな感じがするが体感なのでそんなもんだろう。
俺はチートな魔力も身体能力も特別なスキルもなかったし、ごく普通の人族で、転生ものの主人公としては少し残念な仕様のようだ。
ただ時間だけは有り余るほどあったのでまずは前世では縁がなかった魔法を学ぶことにした、身体ができてない時期なのでこちらを優先したということもある。
「身体は子供、心は大人。」どこかで聞いたような台詞だけれどその通りなんだよね。
俺自身の感覚では8歳の時、こちらの時間で24年過ぎていたから家族からすれば29歳の時に家督を相続することになる。
その112年後(俺的に12歳の時)に大陸東部にあったサンヨウの帝国から旅立った6人の騎士達と共に魔王を封印し、パナンニックの建国に協力した。
俺が転生した国はここじゃないよ?大陸南東部の宗教国家のラープ教国ってところ。
そこの三大司祭家の1つで筆頭家だったんだけど、なんで過去形なのかはまた別の機会にでも語りたいと思う。
封印しかできなかったのは、ただの人間と魔王の有り様の違いからで、伝説の剣といった都合のいい道具を用意できなかったからに過ぎない。せめて俺が他の転生ものの主人公のようなチート能力があれば滅することができたかもしれないんだが。
そんなこんなでこの国の王家とは付き合いが長いだけに何の理由で呼ばれたのかが理解らない。
馬車は進むよガタコトと…いや街道は整備されてるんだけどね。石畳だしうちの馬車と違ってエアサスじゃないし、何故かめちゃ急いでるから揺れる揺れる。
「はぁ~ポルテンに会うことになるんだなぁ。」
「しかたないんじゃないですか?」
「あいつ、自分の娘を俺に押しつけようとしてるんだよ?。」
「いいことじゃないんですか?貴族と縁続きですよ?。」
「おまえにやるよ。」
「・・・遠慮しておきます。」
「なんでよー家より待遇いいかもよ?。」
などと、ロイとアホなやり取りをしながら進むと遠くに城が見えてくる。
都の中央にそびえ立つ白亜の城がパナンニック城であり、その周りを幾重にも城壁が取り囲みその外側には堀がある。その外に城下町が控えその外に外壁があり外堀は内堀の倍の幅、深さを持つ城下町には5つの橋からのみ入ることが出来る。
都には5つの衛星都市とも言うべき町が外堀から20キロ圏内にあり、5大騎士団がそこに居城を構えている。
真北のガルンベック候、北東のノーデット候、東南のシャルム候、南西のウエノス候、西北のポルテン候である。
俺は都からは西北に当たる地域に住むために必然ポルテン候の領民になる。領民が国王に呼ばれるということは領主も呼ばれることが多い、さっきの会話に出てきたポルテンとはつまり領主様のことだ。ちなみに今の当主もその前も生まれる前から俺は知ってる、まぁ初代からの付き合いだからなぁ。
迎えの馬車は近衛兵達とともに都に向かう。
途中の関所もフリーパスで、あっという間に都に着いた。
そのまま城に向かう、何をそう急ぐのだろう?。
城の馬車溜まりについたら、迎えの騎士達が両脇を固めて護送される。
謁見の間の近くの控え室に案内されると中には都の店を任せている大番頭が椅子に座っていた。
「大旦那様、お帰りでしたか?。」
「ああ、ちょうど帰ったところだった。元気にしてたか、腰の具合はどうだ?。」
「朝晩は少し痛みますが・・・じゃなくて今度は何をしたんですか?。」
「さぁな、覚えがないんだが、まぁ会えばわかるだろう。」
大番頭と呼ばれた初老の男性、彼の名は「カクタス・ファドレ」ナショナリオン家の筆頭家老で幼い外見の当主を支える役柄を代々続けている。
今年で79歳になる、既に隠居していていい年なんだが都の店を任せている。その彼がが立ち上がるまえに素早くその前に回りおしとどめる。
「いいんだ、そのまま座ってなさい。歳なんだから無理しないように」
そして、しばらくすると小姓が呼びに来た。
「あっ護衛の方はここでお待ちください・」
「ロイ、女関係じゃないようだ、おとなしく待っててくれ。」
ロイをその場に残して、大番頭と二人で謁見の間に入る。
「キーファ電気会社社長 テクニクス・ナショナリオン殿」
あいかわらず、無駄に高い天井と豪奢な甲冑の騎士達そして正面の一段高いところにはこれまた、豪奢な服装に身を包む中年の男が椅子に座っている。
赤い絨毯の道がその前に向かって続く、俺は大番頭と一緒にその道を歩み階段の下までやってきた。
そして、正面の椅子に座る男この国の王に向かって軽く頭を垂れる。
と挨拶の言葉を言う前に、国王は素早く椅子から立ち上がり
「これは、お久しぶりです。お呼び出しして申し訳ありません。」
そう声をかけたものだから、周りにいた貴族や、若い騎士達が目を見張り居住まいを正して・・・大番頭の方を省みた。
まぁそうなるわなぁ、大番頭さんはどうみても70を越えた爺さんだし国王は40代の中年のおっさんで、俺はどうみても16〜18歳位のガキだしね。近衛兵の気の利いた奴が椅子を持ってあらわれて、座るようにうながして大番頭を座らせようとした。
大番頭さんは恐縮して座れない、国王も憮然としてその近衛兵を見ている気まずい雰囲気なので俺がしかたなく座ると、近衛兵のみならず周りの貴族や騎士が騒然とする。国王と大番頭を除いてだが …
「久しいな、アンソニーいくつになった?。」
「はい、今年で42になります。師匠は変わらずお若いままですなぁ。」
「世辞はよい、そうかそうすると俺も随分年をとったものだ。」
椅子に越しかけ足を組んだ姿勢で答える、周りが騒がしい。まぁ見かけと実年令が違うのはよくあることじゃないか、ましてここはファンタジーな世界だというのに何を驚く。
もしかして、王様が立ってるのに俺が座っているからかな?仕方ないじゃん俺今年で453歳だよ、こんななりだけど。
「で、なぜこんな大層な呼び出しをする?何があった先代でも逝ったか?。」
「まことに申し訳ありません、部下が勝手にいえ私の躾が行き届いておりませんでした。ある案件が持ち上がり、国家的な一大事ということで直接事情を聞かねばならぬと騒ぎ立てこのような事態に相成りました。」
「なんだ、じゃあおまえはいつ俺が来ることを知ったのだ?。」
「先ほどふれがある直前に知らされた次第で。」
「なぁアンソニー?俺は静かに暮らしたいと言ったはずだよな?。」
「伝え聞いております。」
「直にも言ったよなぁ~昔のことだけど、覚えてるよなぁ。」
「もちろんです。」
「じゃあ良いわかった。ある案件を聞こうか?申し立てた本人から。」
「わかりました、内務大臣。話せ許可する。」
そう国王に言われ、今目の前で自分たちの君主がいつも威厳と尊厳を抱き自分たちを統括支配する国王が、16~18位の若造に頭を垂れ臣下のように申し開きをするのを聞いていた自分が何をしたのかしでかしたのかに気がつかぬまま、案件を話さなければならないようになり語り始めた。
いわく、怪しげな魔導家具屋なる得体のしれぬ者が、国内の町を巡り「かでん」と称する道具を売りさばいているという。
大層便利なもので臣民は喜んでいるとの噂を聞き、その現物を見に行かせ話を聞いたところ、その道具は魔力を動力源とするが魔法使いがいるものではなく、蓄えた魔力を使って動くという原理をきいて1台買い上げてその機構を調べると魔水晶が使われているのがわかったが、魔水晶は高額なものだしその流通量も少ないのでそうそう出回るものではないはずだし、貴重品でもあるので国が流通量を管理しているから庶民が容易く手に入れられるものではない。
調べてみるとその家具屋が工場を持つ村の近郊には鉱山がある。もしかしたらそこで産出した物を極秘裏に使っているのではないか、そうに違いない責任者を呼んで説明させ、産出してるのが魔水晶であれば貴重な国の資源であるから独占させてはならないので召し上げよということらしい。
「う~むそうきたか、そこまで調べれば鉱山の所有者もわかっただろうに、いやわかっていて召し上げようとしたか。」
そう言うと内務大臣は助けを求めるように周りを見回したあと下を向く、
同僚も見知った貴族や騎士達も目を逸らしたからだ。
「まぁいい、なぜ格安で用意できたか教えてやろう。あれはな人造なのだ私の150年に及ぶ研究の成果なのだよ、天然物は流石になあの価格で臣民に渡せるものではないわ。」
「人造・・・ですか?性能は同じで。」
「まさか、大きさに反して蓄えられる魔量は65%ほどか?そこまでにするのに95年かかったぞ、耐久性は本物に及ばぬな外そうとすれば簡単に割れただろう?内務大臣。」
「…極めて脆くまた魔力のチャージも上手く行きませんでした。」
「だろうな、そういう風に設定してある。商売道具だからな勝手に転用したり
補充されては商売として成り立たん。」
俺のその言葉を聴くと王は室内を見渡してから内務大臣に向かって告げた。
「そういうことだそうだ内務大臣、申し立ては却下する。」
「しかし、いやそれなら尚更、国の管理下に置くべきです。有事の際に…」
すでに引くに引けなくなったのか、内務大臣はくいさがるが
「誰と戦う?どこの国とことを構えたがっているのだ。おまえは内務大臣であろう、国の内政を民の生活を考えこそすれ何故戦を考える?おまえの後ろに誰が行るのだ?。」
「王よ、人造の魔水晶は我が社の製品にのみしか使えないが、予てより俺が望む発電所建築と国内全土への送電事業を行うのであれば、分けてやらんでもないぞというかむしろそうしてくれると、必然魔水晶が余ることになるからな。」
「それは、無理です。国家予算の枠を越える事業は我が国が崩壊します。」
「あっさり言うなぁ。」
「まぁそれは置いても国で所有し戦に備えるということは、軍務大臣もぐるなのかな?。」
見回して見知った顔の軍務大臣を見据える。若い頃の面影が微かに残る老人=デラント侯爵が俺の発言を受けて立ち上がり、王に一礼をした後に答える。
「いや、儂も今聞いたところじゃ、確かに魔力を蓄えておける魔水晶は欲しいが今は隣国とも関係は良好だし急いて必要というわけではなし、つまり必要はないということですナショナリオン様、軍は関係しておりません。」
「衛兵、こやつをつれていけ、問いただして背後関係を吐かせるのだ。」
王がそう宣言すると内務大臣だった男が連れ出される、そのときに内務大臣とは違う男の声がボソっと漏れた。
「人造か・・・」
ぞくっとくる冷たく深く暗い気配が室内にあふれた。
騎士達が思わず剣に手を伸ばし、女官達が座り込むほどの空気が。
「今の言は誰か?!。」
王の言葉は虚しく響き、誰も答えるものはいない。
怪しい気配も掻き消えてしまった。