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起死回生

「あやなちゃん!」

「急ぎます」


 顧問はアクセルを踏み込んだ。一瞬、後輪がぶれ、車は急激に速度を上げる。


「あ、あやなちゃんが……」


 麻衣子は震えていた。目の前に映し出される事実を拒むように。

 だが、画面から目線を離すことはできない。


 ――も、もしかしたら、あやなちゃんはただバランスを崩して転んだだけで。す、すぐにあやなちゃんは立ち上がって、いつものように笑って、そして……。

 麻衣子は祈った。しかし、レースの様子を報じる画面は、ただただ動かなくなったあやなを映し出すだけだった。


「せ、せんせぇ……」


 悲痛な叫び。既に、麻衣子の両目には涙が溢れている。小さな子どものように彼女は縋った。


「あ、あや、あやなちゃんがぁ……」


 彼女はもうパニックだった。言葉が過呼吸気味に途切れ途切れになる。

 頭の中で「命の保証はできません」という言葉が鐘のように鳴り響いた。


「大丈夫です。私が助けます。デメリットなしで、救って見せる」


 顧問は力強く言った。

 麻衣子には両手を組んで、祈ることしかできない。


 ――神様、あやなちゃんを助けて!




 十数分後。


『キキー!』


 タイヤが摩擦で甲高い音を出す。

 事が起きる前に車を出していたこと、そしてレースのための道路規制で障害物がなかったことが幸いして驚くほど早く現場に到着することができた。


「あやなちゃん!」


 麻衣子はすぐに助手席から飛び出す。

 車が停まる前から、フロントガラス越しに倒れたあやなの姿が見えていた。麻衣子は走る。ほんの短い距離なのに、嘘のように遠くて。あやなの元に辿り着くまでの時間が本当に苛立たしくて。悔しくて。まるで、水の中をもがいているようで。


「あやなちゃん!」


 麻衣子は何度もその名を呼んだ。涙で声が滲んでいても何も気にならなかった。


「あやなちゃん!」


 麻衣子は必死でその名を呼んだ。喉が、声が枯れそうになっても何も気ならなかった。


「あやなちゃん!」


 そして、ようやく辿り着く。

 そこには。


「ああ、ああああ!」


 涙をぬぐった麻衣子の目にはあまりに絶望的な光景が映る。自分が出しているのかさえ分からない声が喉から絞り出された。


「あああああ!」


 膝から崩れ落ちた。

 目の前には血の気が引いて真っ白で。なのに、破れた皮膚からは赤黒い血が滲んでいて。その流れ出る血が、あたかもあやなの体を動かす命のように思えて。瞳からは光が消えていて。

 そして、死ぬ直前の虫のようにあやなは力なくうごめいていた。


「あああ!」


 麻衣子は思わずあやなに抱きついた。

 何かから守るように、何かから離すように。

 このまま放っておけば、あやなが自分達の理解できない何かに連れ去られてしまうような気がして。


「ああああああ!」


 麻衣子は強くあやなを抱きしめた。そして、叫ぶ。


「せんせぇ!」

「任せて下さい」


 顧問はストレッチャーを慣れた動作で取りだすと、すぐに二人の元へと駆けつけた。そして麻衣子をゆっくり引き離し、そのままあやなをワゴン車まで運ぶ。

 そこから顧問は準備していたあらゆる機材を彼女の体に取りつけ、回復施術を開始した。


「……うぅ、うわああああん」


 麻衣子は泣きべそをかいていた。本当に泣きべそという表現が当てはまるほど、彼女はだらしなく泣いた。涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃで、誰にも見せられないような滑稽な顔。

 だって、あやなは戻っていないのだ。あれほど大げさな設備を使って、本校教員という回復施術のエキスパートが力を注いでいるのに、あやなのうつろに開かれた目には何も映ってなどいやしない。それどころか、どんどん何かが崩れ落ちていっているような気がする。あやなを形作る上で必要不可欠な何かが。


「ぜんせい! だいじょうぶっで!? だすげてぐれるって!?」


 麻衣子は顧問にしがみついた。


「……」


 顧問はこちらを振り返りもしなかった。額からは嫌な汗が噴き出している。


「ぜんぜぃ!」


 獣のような咆哮。

 ポツリと呻くような声。


「かなり、まず……いです。まさか……ここまで」


 麻衣子は腰から崩れ落ちそうになった。足に力が全く入らない。彼女の鼓膜には顧問の言葉が死刑宣告のように響いた。

 しがみつく手からも力が抜ける。景色がぐにゃりと歪む。

 あやなが。あの力強かった少女が。あの雄々しかったあやなが。自分を助けてくれたヒーローが。

 今では捨てられた人形のように痛ましくて。夏の白昼夢のようにおぼろげで。


 ――ああ、死んじゃうんだ。


 麻衣子の中で嫌に冷静な声がした。


 ――何もかも夢だったんだよ。


 振り向くと、そこにはあの頃の彼女が。

 いじめられて、否定されて。考えることを放棄した彼女が。


 ――期待しちゃだめだよ。


 その瞳に光はない。


 ――願っちゃだめだよ。


 代わりに泥水のように濁っていて。


 ――祈っちゃだめだよ。


 灰のように乾いていて


 ――縋っちゃだめだよ。


 廃墟のように荒んでいて。


 ――頼っちゃだめだよ。


 そして絶望するように立っていた。


 ――どうせ、神様は助けてくれない。


「ああああああああああ!」

 麻衣子は叫んだ。

 心が張り裂けそうで、引き裂かれそうで、押し潰されそうで。この世の全てが無価値に思えて。

 世界が。

 暗転。

 光が

 消え。

 闇が

 膨れ。

 全てが終わる。

 その時だった。


「え?」 

 麻衣子は驚いた。

 驚いて辺りを見渡す。

 周りにはそんな声がするものなどない。

 空耳かもしれない。

 麻衣子は耳を澄ました、


「――こ」

「……!」


 聞き間違えではない。確かに声が。

 麻衣子はすぐに立ち上る。手足に力が戻っていた。

 そして声がしたであろうその場所へ。


「あやなちゃん!」


 ストレッチャーの上の少女。麻衣子はあやなに駆け寄った。


「ま……い、こ」


 あやなの目が確かに開いていた。まだ、焦点は定まっていないが、うっすらと光が戻っている。


「先生!」

「なんとか……持ち直しました。予想以上に消耗していましたが、この子は回復力も人並み外れているみたいです」


 顧問は片手で汗をぬぐいながら応える。

 その顔には少しだけ安堵するかのような笑みが表れていた。


「よ、よかっだよぉー」


 麻衣子も泣いているような笑っているような顔をした。気が抜けて、また涙があふれ出て来る。


 しかし。


「――る」

「え?」

「わ……たし……は。は、し……る」


 耳を疑った。あやなはこんな状態で何を言っているのだろうか。

 あやなの顔は少しだけ赤味を取り戻していたが、それでもまだ病人のように青白い。


「何を言っているの!? そんなことできる訳ないじゃん!」

「ま……だだ。まだ……わた、しは……」

「ダメだよ! これ以上やったら、あやなちゃん死んじゃうよ!」

「わた……しは……ま、だやれ……る」

「もう、やめよう? あやなちゃんは十分頑張ったよ!」


 麻衣子は必死で止める。


「そんな……か、おをするな。まいこ……」


 そんな麻衣子にあやなは微笑んだ。


「わたし……は。そんな顔……をさせる、ために、戦うのでは……ない」


 声が弱々しく震えている。


「私が……勝てば皆、が笑う。本当……に嬉しそう、にな。だから、私は戦……うのだ。だか……ら、私は勝つ、のだ。私は皆の……喜ぶ顔が、見たいの……だ」


「そんなの! あやなちゃんの体の方が大事だよ!」

「ま……いこ」

「……」


 麻衣子はあやなの小さな手を『ギュッ』と握る。


「なに、を……泣いて、いる?」

「……」

「ま……た、誰かにいじ、められた……のか?」

「違う! 違うよ、あやなちゃん!」


 あやなの焦点はまだ定まっていない。ゆらゆらと瞳が揺れる。


「わた、しが。たす……けてや……る。何度、も。何度で……も」


 麻衣子は気付いていた。あやなの聴覚が戻っていないことを。

 あやなはただ朦朧とした意識の中を漂っている。

 それでも呼びかけ続けた。


「もう、十分だよ……あやなちゃん。私はもう十分あやなちゃんに助けてもらったんだよ。 ボクシング部の人達にいじめられていたときも。この世界からいなくなりたくなっちゃったときも。さっきだって、あやなちゃんが呼んでくれたから。私の名前を呼んでくれたから。絶望しても、戻って来れたんだよ? 神様なんていないって、誰も助けてくれる人はいないって。でも、あやなちゃんは助けてくれた。私をこの世界に引き戻してくれた。だから。だから、もう充分なんだよ?」


 麻衣子は泣いていた。

 あやなを想って。目の前で消え入りそうになっている、小さな小さな少女を見つめて。

 だが、少女は言う。その瞳には誰よりも愛おしい友の泣き顔が。


「まい……こは、うれしく……なかったか?」

「……!」


 目が、大きく見開かれた。自分でもそれがどんな感情で、何を意味するのかは分かっていた。でも、それに応えてはいけない。


「私が……しょう、ぶにか……ったとき、麻衣子……は」

「…………」


 それに応えてはいけない。決して。

 麻衣子は、目の前の友達を守るために耐えていた。自身の口から飛び出そうになる、感謝に似た言葉を。でも。目の前のあやなを見ているだけで、でも。


「うれ……しく、なかっ……たか?」


 でも、そんなのは決まっていた。


「……嬉しかったよ」


 ――柔道部の先輩達に勝ったときも、自転車競技部の美樹さんに勝ったときも。そして、ボクシング部の人達から助けてくれたときも。


「その言葉だけ……でじゅう、ぶん……だ」


 あやなは笑った。どれほどの苦痛の中で、だろうか。それでも麻衣子を慈しむように。聖母のように。

 そして、ゆっくりと起き上がろうとする。


「ダメです」


 顧問がストレッチャーのスイッチを押した。すると、瞬時に革製のベルトがあやなの両手両足を拘束する。


「あなたは常人よりもとても優れた肉体を持っています。ですが、それでも今は危険な状態に変わりはありません。もし、また動こうとすればあなたは確実に死ぬことになります」


 そう言って回復施術を続けた。

 嵌められたベルトに抵抗すらできず、弱々しく寝そべるあやな。

 麻衣子はあやなを見つめる。「私は走る」そう目で告げていた。


 ――そういえば、あやなちゃんはいつも笑ってたなぁ。勝負を挑むときも、勝ったときも。いつも。本当に嬉しそうに、本当に楽しそうに。


 麻衣子は顧問に向き直った。


「先生」

「ダメです。生命維持に問題がない所まで回復するのに少なくとも2時間はかかります」

「先生」

「諦めなさい」

「先生」

「何がしたいんですか?」


 顧問は非難の目を向けた。腹立たしさを隠さずに。


「先生……先生はさっき言いましたよね? 『デメリットなしで強くしてみせる』って」

「言いました」

「でも、それは。私は違うと思います」

「何が違うんですか?」


 顧問は厳しく細めた視線を崩さない。問いただすように麻衣子に言葉を返す。


「……デメリットならあります。それは……あやなちゃんが負けることです」

「そんなことですか?」


 鼻で笑う顧問。相手を馬鹿にしているというより、あまりに予想外の言葉を告げられて余裕をなくしているような。それを取り繕っているような。


「そんなことが、この子の命より大事なんですか?」


 厳しい言葉だった。強い言葉だった。相手が傷付くことを知ってなお告げるときの言葉。

 しかし、麻衣子は。

「私は……私は、あやなちゃんに勝って……もらいたいです。いつもみたいに、生意気な顔で。誰よりも自由に笑うあやなちゃんが……私も見たい」


 途絶え途絶えに言葉を紡ぐ。自分の言葉がどれほどめちゃくちゃなのかを自身で理解しているから。だから、スムーズになんて出てこない。しかし、それでも麻衣子は顧問から目をそらさない。『じっ』と強く見つめてくる。


「それで、どうするんですか?」


 語気を強めた。麻衣子の真っ直ぐな言葉に、純粋な想いに。けれど、未熟な考えに。顧問は苛立ちと別の何かを覚える。


「私が……助けます」


 麻衣子は言った。


「……」


 最初、顧問は彼女が何を言っているのか分からなかった。

 これほどの設備と、回復施術において最高レベルの技術を持つ自分があやなを回復させようとしている中で、一生徒である麻衣子に何ができるのだろうか。


「馬鹿げています」


 顧問はそう切り捨てる。

 この状況で麻衣子にできることなど何もないのだから。

 そもそも彼女をここまで連れて来た理由は、あやなのストッパーになってもらうことが目的であった。

 顧問は予想していたのだ。あやなが実際に死の寸前まで自分を追い込んだとき、そこから助けたとしてあやなは素直に自分の力をコントロールしようとするだろうか。答えはNO。こんな目に遭ったにもかかわらず、あやなはまだ走ろうとしている。

 だから、友達である麻衣子にあやなが全力を出したときの代償を実際に見せて、今後はあやなを止める監視役になってもらう。そうすれば、あやなが無茶をする前に自身の持つ常識を外れた力をコントロールすることも可能になるだろう。その術を学べるだろう。そう思っていたのに。


 ――とんだ期待はいずれですね。


 顧問はため息をつく。


「いいから下がっていなさい」


 麻衣子を車内の端に押しやると、顧問は回復施術を再開した。


「……」


 しかし麻衣子は顧問の手をすり抜け、あやなの体に抱きつく。


「あなた! この子を死なせたいんですか!?」


 思わず叫んだ。

 そして麻衣子をあやなから引きはがそうとする。麻衣子の両肩を掴み、力任せに。

 だが、顧問は気付いた。


「……?」


 麻衣子の体から白い光が漏れだしているのを。

 それは暖かい光。晴れた日の木漏れ日のように暖かく、天使の羽のように真っ白な。その光があやなに流れ、そして優しく包みこむ。


「まさか、そんな……力の流れがこんなにハッキリ見えるなんて」


 回復施術。それは従来の医療技術とは比べ物にならないもの。いや、全く異なる分野の力。人間の内に流れる生命力。他の国では気脈とも呼ばれるその流れを、治療に活用するという考え方は古来より存在した。人体のツボと呼ばれる部分を押し、その気脈の流れをスムーズにする。あるいは針を刺したり、灸を据えたりして、その流れに干渉する。

 この回復施術はその技術の系統にあるもの。それらを構成する知識の最先端。体に流れる気脈を、自分以外の他者のために使う技術。つまり、自身の内に流れる生命力を他人に分け与えるという発想。

 顧問がやっていたのは、全力を出したが故に枯渇させたあやなの生命力を、自身の生命力を分け与えることで補うというものだった。生命を維持できないほど消耗したあやなの肉体に、体力を回復させるための助力を。だが。


「こんな例は見たことがない……」


 顧問は驚愕した。

 確かに、回復施術を行っている人間の体が白く光ることはある。それらは生命力が視覚化されたものだと言われていて、顧問自身も調子が良いときはその現象を起こすことはできる。

 しかし、それは体の表面、つまり皮膚が淡く光る程度のもので取りたてて見応えのあるものではない。


 ――ですが、麻衣子さんは……こんなにも。


 顧問は思わず見入ってしまう。それほど、麻衣子の起こした現象は信じられないものだった。

 光がまた更に強く、濃くなっていく。それが止めどなく麻衣子からあやなへと注がれていく。そして、光が一瞬花火のように大きく光った。それはあたかも白熱灯が切れる寸前、自分を燃やし尽くすように光るような。


「……」


 あやなの目が開かれる。


「……?」


 彼女は自転車で倒れた時点からほとんど記憶が残っていなかった。だから、自身が置かれた状況も、どうして自転車競技部の顧問が自分の隣に立っているのかも、どうして麻衣子が寝ている自分の体に抱きついているのかも、全く理解ができなかった。


「む? ここは。麻衣子?」


 あやなは麻衣子に尋ねた。

 ゆっくりと顔を上げる麻衣子。その表情は涙でくしゃくしゃになっていた。

 そして彼女にこう告げる。


「あやなちゃん、レースはまだ終わってないの」

「……」

「トップは自転車競技部の部長。そして、あやなちゃんは倒れている間に皆に抜かれて、今レースの最下位」

「そうか」


 あやなはその言葉で何となく思い出した。自分が転倒してしまったこと。呼吸ができなくなって、視界も歪んで、何もかもが真っ暗になってしまったこと。


 ――力及ばず、か。


 その心に少しだけ寂しげな感情が灯る。レースを完走できなかったことよりも、勝負に負けたことよりも、麻衣子を泣かせてしまったことが悲しかった。その涙が自分のために流れ出たものだと分かったから。

 だが、そこまで考えて彼女の頭にある疑問が浮かんできた。


――麻衣子は今……何と言った?


 昏睡から目覚めた彼女の脳はまだ、しっかりと機能していない。ぼんやりと思考が巡っているだけ。しかし、その言葉は聞き逃さない。あやなは必死に麻衣子の声を思い返す。


 ――「まだ」。麻衣子は今、「まだ」と言っていなかったか?


 あやなの体に血液が、熱いエネルギーが流れ始める。心臓が待ちわびたかのように鼓動を強めた。


「……!」


 あやなの目が大きく開かれる。興奮で紅潮した顔のまま麻衣子に向き直った。

 そして、確かめようと口を開く。自分の耳にした言葉が聞き間違えではないかどうか。


「あやなちゃん」


 だが、それよりも麻衣子が呼びかけるのが先だった。

 そして麻衣子は『ニコリ』と笑った。


「勝って!」


 あやなは驚いた。今まで見て来た麻衣子はここまで美しい顔で笑っていただろうか。いつも頼りなく、いつも自身なさげで。そんな麻衣子が今は、空を駆ける鳥のように麗しい。

 今の状況も、聞き間違えも、もはや何も関係ない。その言葉と、麻衣子の嬉しそうな笑顔だけであやなには十分だった。


「心得た!」


 あやなは起き上がる動作で体を拘束していたベルトを引きちぎり、そのまま車から飛び出す。そして近くに停めてあった特注の自転車を見つけると、風のように飛び乗った。


『ギュンッ!』


 チェーンホールを高速回転させて、急速に速度を上げるあやな。彼女は一度だけ後ろを振り返り、麻衣子を見るとこう言った。


「待っていろ! 私は麻衣子をもう一度笑わせる!」


 麻衣子はそれに応えるように大きく頷く。

 そして。

 そしてあやなの姿が見えなくなると、麻衣子はその場にゆっくりと倒れた。

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