12月24日
「寒いな…」
隣に座っている幼馴染に語りかける、が隣は寒いと思っていないらしく、元気に答える。
「えーそうかなー?私はそうでもないよ」
「そんな薄着でか?」
つっこむと幼馴染は恥ずかしそうに照れながら言う。
「えっと、その…君が隣にいるから…」
一瞬聞き間違えかと耳を疑うがすぐにそうでないことに気づく。
「今のってその…えっとそゆこと?」
幼馴染がコクンとうなずく。
ふぅーとため息をついてから幼馴染を見つめ、そして口を開く。
「そのさ…。なんかさ…こう出会ってからもうかれこれ…、12年位?か。そんでさ、ずっとなんかうやむやな関係だったじゃん、そんでさ……その、えっと」
喉まで出掛かっている言葉を搾り出す。
「俺と…付き合ってくれないか……」
幼馴染は顔を耳まで真っ赤にして小さく「うん」とうなずいた。
手をそっと重ねる。
「とっても暖かい…」
「俺もだ…」
「ねぇ、」
こっちを見上げてくる。
こっちもじっと見る。
二人が近づく…
意識がはっきりする。頭を何かが駆け抜けていく、揺れて、ぶれる。ピントが合う。
「そうだ」
思わず立ち上がる。
「どうした…の?」
幼馴染が不思議そうに首をかしげて裾をつかんでいる。
この時期におかしなことにチャイムの音が聞こえてくる。
裾をつかんでいた引力が消えた。隣を見ると幼馴染は既に跡形もなかった。周りの景色が溶けていく、曖昧になっていく。
「チャイムだ、それがいつも合図だったんだ」
今までわずかに感じていた違和感が解けていく。そして此処がどういう場所かが分かる。
コツンと音がした
振り返るとロングコートを着た人がいる。ゆっくりとその人の口が開く。
「show must go on」
そのたった4つの単語を聞いただけで頭が溶けそうになる。自分が曖昧になり、合ったピントがずれ始める。
チャイムが耳元で響く
あと一話で終わります。よろしくお願いします。