7話
「可哀想だが、成績があがるのならいいではないか。俺も協力するぞ」
すっかりいじけているヒナを笑顔で流依は励ました。
(家庭教師もどきが二人も!?そんなの絶対ごめんよっ)
「いえ・・・お気持ちだけで・・・」
「使えるもんは使っとけって、俺も協力するし」
そういったのは別段勉強が出来るように見えないレンだった。
「レン先輩は・・・勉強得意なんですか?」
失礼だが不信感たっぷりで尋ねてみると
驚くべき返答が返ってきた。
「俺こう見えてだぜ特待生だぜ?」
「えぇ!?見えない!!」
「あはは正直だな」
「ご・・・ごめんなさい・・・・」
「いいよ。そう思われることも少なくないし。
まぁ、俺の家そんな裕福じゃなくってなぁ
必死に勉強して特待生になって授業料免除してもらうしかなかったんだ。
やりたい勉強は自転車でこれるこの距離の学校なら交通費かからねーし
つっても自転車必死こいで40分かかるけどな
だから遠慮なく聞いてくれ。応援してるからさ」
「レン先輩・・・」
真っ直ぐで心優しいレンにヒナは少し心を動かされた。
(最初は不良と間違えて絶対目を合わさないようにしようとか
出来る限り関わらないでおこうとか、絶対に仲良く、
ましてや友達になんてなれないなって思ってごめんなさい、
あと、勉学を励む姿を今ちょっと想像したけど
不釣合いとか思っちゃてごめんなさい)
「私レン先輩に教えて貰います。」
拓斗に向かって挑戦的な眼差しを向けると
こんどは流依が目を輝かせた
「俺にも頼っていいぞヒナ!!存分に頼ってくれ!」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
流依はどうしても頼ってほしそうだ。
そんな三人にを尻目に一人冷静な拓斗はヒナに向かって告げた。
「それで赤点一つでもとってみろ、
本当のバカと言っても過言ではないよな?」
(うぅ・・・拓斗先輩大っきらい!!)
ヒナは心の中で叫んだ。
夜は隣の絵莉依の部屋に遊びに行く約束をしていた。
ノックをして返事が聞こえたのでドアを開ける。
友達の部屋に遊びに行くなんて久しぶりだ。
「おじゃましま・・・・・」
「いらっしゃ~い」
視界に入ったのはベッドに寝転がり携帯ゲーム機をいじりながら
お菓子を口に咥えている絵莉依の姿だった。
普段のイメージと真逆の姿に一瞬呆気にとられてしまったが
少し親近感が湧いた。
しかしそれより気になったのは棚に並べられた美少女フィギュアだった。
ヒナの視線に気づいて絵莉依は自身もフィギュアに目を向けた。
「家に置くスペースがだんだん減ってきてたから丁度よかったわぁ」
(強い!!異世界をフィギュア置きにしてる!?)
「お母さんは人形ばっかり集めて何がしたいのっていってくるんだけど」
(ホッ、親は普通の人なんだ)
「人形じゃないわ、フィギュアよ!
っていった日から何も言わなくなったわ」
「・・・・・・・」
ヒナは少し絵莉依の母親に同情した。
「あれ、パジャマ持ってきたんだ」
ヒナの格好に気づき、そう言った絵莉依は部屋に用意されていた
薄いピンクの夜着用のワンピースを身にまとっている。
ヒナにはソレがお嬢様やお姫様が着ているイメージしかないし第一
「うん・・・そんなの似合わないし」
「そんなことないよ!着てみよう」
「絵莉依ちゃんみたいな美人には分かんないよ・・・。」
流依には劣るものの、その美貌から絵莉依は学園内の女子の中では一番の有名人で
いつも周りの注目を浴びている。
ヒナは同じ同性として絵莉依を自分とは真逆の存在として見ている。
そんなヒナの心情を知ってか知らずか絵莉依は独り言のように呟いた。
「そういえば私、中学に上がるまでは今みたいに少しも注目されてなかったな」
「そうなの!?てっきり産まれた時からちやほやされてたのかと・・・」
「うん、家柄も普通だし成績も飛びぬけて良いって訳じゃない。
でも私、少女漫画の主人公のように周りからちやほやされたいなって
小さい頃からずっと思い続けてたの」
突然の絵莉依の笑顔でのカミングアウトにヒナは顔を引きつらせた。
「へ・・・・へぇぇ・・・そうなんだ・・・・」
(やっぱり妄想壁の気が・・・!!)
「そうやって思い続けてたらね、中学に上がった瞬間何故か私の周りに自然と
人が集まるようになったの。小学校が一緒だった子たちまでも
私を慕ってくれるようになってて・・・なんだか不思議だった。
もちろん、少しは自分でも努力したんだけどね?」
思い返しながらも、不思議そうに語る絵莉依はヒナに向き合い
クスリとほほ笑んだ。
「まずは思い描く事が一歩なのかもね
私、今まで譲れない願いは大抵叶えてきたのよ」
思い描く事が夢、憧れ、願いへの一歩。
その表情は先ほどとはうって変わり神秘的に映った。
絵莉依への見方は憧れから尊敬できる気さくな友達へと変わった。
(なんだか魔法みたい・・・・・。
それが本当に魔法で、絵莉依ちゃんは魔法が使えるからこそココに呼ばれたのかもしれない。
だったら・・・・私は??)
異世界部の部員たちは”魔法”なとどいう大それた力があるのかヒナには分からないが
それぞれ他の人とは違う不思議な魅力があるのは知っている。
だからこそ、自分のこの世界での存在意義を問うてしまう。
次の日は若い魔導師達に町を案内してもらったりして過ごした。
この世界での同世代の友人が出来るのは単純に嬉しかった。