6話
「信じられない・・・要請が通っちゃうなんて・・・」
半ば飽きれながらヒナが呟くと
呑気な声が返ってきた
「な、大丈夫だっただろ
どうにかなるっていったら大抵どうにかなるって」
レンだった。
「そんな・・・根拠もないのに・・・」
ヒナは否定しつつも自分の中のもう一つの感情に気づく。
(何でだろう・・・大丈夫な気がしてくる・・・
私確実にこの人たちに流され始めてる!?
・・・って、流されてるのは最初からか・・・)
そうして異世界へと繋がる鏡が置かれた教室を部室として確保した
異世界部の五人は放課後さっそく集まって異世界へと飛ぶこととなった。
「昨日ぶりだな」
鏡の前で五人を迎え入れたクロードが告げた。
こちらの世界では一日しか経っていないらしい。
(時間の流れが違うのかしら・・・
難しいことは考えないようにしよう。私理数嫌いだし)
「向こうの世界で有名なホテルのロールケーキだ。」
そう言って拓斗はクロードに白いロールケーキ入りの箱を手渡した。
「・・・・・ありがとう」
(ちょっと困ってる・・・)
部屋に荷物を運びこむ前に一応皆が何を持ってきたのか少し確かめ合った。
結局荷物が一番荷物が少なかったのはヒナだった。
ヒナは荷物の整理をもう一度していると鞄から折りたたまれた紙が床にヒラリと落ちた。
「ん、何か落ちたぞ?」
素早く拓斗が紙を拾い上げ、折りたたまれたソレを広げると・・・
「何だこの点数は!?」
テストの答案だった。
「きゃああっ!!見ないでください!!
本当は家に帰ってから捨てたかったのにぃ!!
あ、この世界で捨てたら親に見られないですむかも」
ヒナは答案用紙を奪い取ろうと必死に背伸びをしたが
軽く阻まれた上、身長差の関係でまったく敵わなかった。
「ちょ、ちょっと返してください!
平均点は48点だから・・・3点足りなかっただけで」
つまり45点。
そんなヒナの頭上から冷たい声が返ってくる。
「我校は赤点が一つでもあると部活動への参加は一時的に出来なくなるのを知っているだろう?」
ヒナも拓斗をキッと睨みつけた。
「そうなった時は、私を置いて皆さんだけでここに来てください」
「そうなる前に勉強するのが筋だろう今から部屋で勉強しろ」
「なっなんでぇ!!?異世界に来るだけなら部活動とか関係ないじゃないですか!」
「馬鹿は見てて不快だ」
「酷い!!!」
もうヒナには拓斗は冷徹人間にしか見えなくなった。
(今後拓斗先輩が人間的な優しさを見せても今日の事は絶対忘れない!!!)
ヒナは根に持つタイプだった。