召喚術の活用法
町の外に出て,ある程度歩いたところで,俺は召喚をすることにした。
「召喚せしは,《タンサクソウサ》」
「応えしは,我,《タンサクソウサ》」
召喚したのは,この世界に来て一番初めに呼んだ望遠鏡のウニみたいな《タンサクソウサ》である。
俺は薬草と青薬草を取り出して,《タンサクソウサ》にそれらを見せた。
「こいつが生えているところまで案内してくれ」
「了解した」
そう言って,《タンサクソウサ》は宙に浮かび上がり回転を始めた。
そして回転を止めて言う。
「主が足で,東に1刻ほど歩いた森に入り,さらに300歩直進したところに目標物を複数発見した」
「オッケー。お疲れさん戻っていいぞ」
俺がそう言うと,《タンサクソウサ》はまた何もない空間へと帰っていった。
俺は早速東に進路をとった。
森に着き,しばらく歩くと少し開けた場所に出た。
その地には,目的の薬草と同じものがいくつか生えていた。
しかし,ざっと見た限りだと依頼達成に必要な数は無さそうだ。
まあ想定済みだけどな。
そう思った後,俺は精神を集中した。
「解き明かせ,《ブンセキカイメイ》」
「問いに答えましょうぞ,私,《ブンセキカイメイ》」
俺の呼びかけに応えたやつは,白衣を着た老人で,その背丈は手のひらに乗るサイズ。さらに老人の髭と髪は細かい文字や記号の集合で出来ている。
そして,さらに俺は呼び掛ける。
「恵みをもたらせ,《ホウジョウドジョウ》」
「育て咲かせよお! オデ,《ホウジョウドジョウ》」
続いて呼びかけに応えたやつは,俺の二倍ぐらいの背丈で,人の形をとっているが体表は土塊で出来ており,体のあちらこちらに苔や草や花を生やしている。
これぞ。同時召喚なり!
「よし。まずは《ブンセキカイメイ》。この薬草を調べてくれ」
「うむ。任せなさい」
そう応えた《ブンセキカイメイ》は,薬草と青薬草を手に取り,眺めるように見ていく。
途中ウンウンと頷き,そして最後は文字や記号で出来た髪と髭が浮かび上がり,薬草と青薬草をそれで包んだ。
「ふむ。解析終了じゃ」
「よし。それじゃあ解析結果を《ホウジョウドジョウ》に渡してくれ」
俺がそう言うと,《ブンセキカイメイ》は手のひらから文字や記号が渦巻いている球体を取り出し,それを《ホウジョウドジョウ》の方へ投げた。
《ホウジョウドジョウ》はそれを口から食べてもぐもぐする。
「よし。《ホウジョウドジョウ》。おまえはそれを元にこの辺にそれを大量に生やしてくれ」
「任されたぞお!」
《ホウジョウドジョウ》は,大きく手を振りかぶり,そして勢い良く地面を叩きつけた。
ドゴン!と鈍く重い音が鳴り響き,そして同時に雑草が生えていた地面は浮かび上がり,瞬く間に薬草が一番良く育つように耕された。
そして今度は高く飛び上がり,両足でおもいっきり着地する。
すると,なんという事でしょう。
何もない土から薬草と青薬草がわんさか生えてくるではありませんか。
ニョキニョキ,モサモサという効果音が一番適切であるようにすごいスピードで大量に生えてくる。
一言で表現すれば,「国民的アニメ映画の女の子二人がパジャマで夜の外でジャンプしているシーン」である。
「よし。計画通り! お疲れさん。二人とも戻っていいぞ」
「ふむ。また困ったことがあれば呼ぶのじゃ」
「オデ,腹減った」
《ブンセキカイメイ》は快く戻ってくれたが,《ホウジョウドジョウ》は戻るのを渋っている。
召喚された者の中には,俺の精神力(仮)以外の報酬を求めることがある。
そういった場合,しっかりそれに応えるのが召喚者とされた者の信頼関係を築くのに重要な点である。
「オッケー。取り敢えず,この辺の木の実を取ってくるから,それまで見張っておいてくれ」
「うん。わかっだぞ」
俺はそう言い残して,森を駆けまわった。
しばらくして,両手に持てる分だけ木の実や果実を取って戻ってくると,《ホウジョウドジョウ》の周りには,鳥や森の小動物が休んでいた。
相変わらず,動物に好かれてるなーと思いつつ俺が近づくと,動物たちは敏感に反応し,逃げてしまった。
少し悲しい。
「ほら。これで腹の足しにしてくれ」
「うおー!ありがとうだぞう」
《ホウジョウドジョウ》に木の実と果実を渡すと,あっという間にそれらを食べてしまった。
「んだ。オデ帰るぞ」
「おう,お疲れさん」
そう言って帰っていった。
それを見送った後,俺は軽い茂みのように生えた薬草と青薬草をあるだけ採集して,町へと帰還した。
楽勝楽勝。
こんな楽してノルマ達成とか,召喚マジでメシウマ!!




