僧侶ギルド
僧侶ギルドは,町の北よりの外壁沿いに建っていた。
建物は,側面を白い外壁に,正面を黒と黄色い横線のラインが入ったもので建てられていた。
一瞬,邪神崇拝かなにかだろうかとも思ったが,文化なんてものは,人が勝手に作り出したものなので,気に留めないことにした。
入り口の脇に建てられた掲示板の高そうな紙を使った張り紙には,
「神はあなたの全てを見ている」
………………怖っ!!
なんか説明を聞く以前に,本能的に回避したくなった。
しかし,見た目だけで判断するのは早計,よくない。
ということで,俺は僧侶ギルドの開かれた門に入っていった。
中に入り少し俺は驚いた。
天井まで吹き抜けて,建物の奥まで見渡すことができる造りで,奥にはおそらく信仰している神像が掲げられ,その下を壁にそって三段に分けられた椅子が並び,それを取り囲むように真ん中に台座があった。
まるで,公開審問をするかのような造りの礼拝堂だ。
「こんにちは」
俺が見慣れぬ造りの礼拝堂にカルチャーショックを受けていると声をかけられた。
その声の方を向くと,体の中心のラインを胸から足元までを黒と黄色の基調で彩られた白い外套を着ている女がいた。
「初めてお見受けする方ですね」
「ああ,このギルドに入るか決めかねているから,一応説明だけを聞きに来たのだけど」
「まあ!ではあなたも『アルハン』様の御加護を受けに来た方なのですね」
キラキラとした目で俺を見る女。
「いや,その,『アルハン』サマのことがまず分からないけど」
「まあ!」
俺がそう言うと,女は驚いたように目を丸くした。
「失礼しました。アルハン様をご存知ないのでしたら,信仰を求めて来られたのですか?」
「いや,単にどんなギルドか気になっただけで……」
「……………………」
「……………………」
彼女は表情が固まったまま無言になってしまった。
ひとつ言っておかなくてはいけないことがある。
渡り人だからって,別に世渡りが上手いわけじゃないのよ!
さて,どうするか。
ここは大人しく帰ろうか?
俺がそう思った矢先,女は表情を和らげて話しかけてきた。
「これも,きっとアルハン様のお導きでしょう。分かりました。アルハン様の素晴らしさをお教えしますわ」
「え,いや,けっこうで――」
「アルハン様は――」
俺の言葉を無視して,女は話し始めた。
仕方なく,俺は耳を貸す事にした。
彼女の話では,
1.アルハンというのは,この世界を作った神らしい。
2.全てのものに恵みと祝福を授けてくれるらしい。
3.黒と黄色の組み合わせはこの世の混沌を示すらしく,それを清らかに包みこむための白色だとか。
4.黒と黄色を使っているのは,その混沌があることを忘れず,なお清く生きるための教えだとか。
5.祈りはアルハンに届き,御加護を得ることができるとか。
6.彼女も重い病が治ったらしい。
「病が治ったってどうやって?」
「特効薬を飲みました」
え?
「それって薬のおかげじゃ……」
「いえ!アルハン様があの薬まで私を導いてくれたお陰です」
…………駄目だ。コイツ。
「あ,説明ありがとう。じゃあ俺はこれで!」
俺は足早に出ていくことにした。
「ああ,まだアルハン様の素晴らしさの一割も話していませんのに」
「ま,また今度で!」
俺は風の如くその場を去った。
取り敢えず,僧侶ギルドは選択肢から外すことにしよう。
さあ,次は魔法ギルドだ。