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戦士ギルド

質屋で所持品とこの世界の通貨を交換した俺は,戦士ギルドへと足を運んでいた。


ゼーの町の戦士ギルドは,堅牢な石壁で建てられていて,デカデカと木製の看板を入り口の上に掲げていた。

入り口の脇の石柱には,「腕に自慢があるなら戦士ギルドへ!! 新ギルドメンバー募集中!!」と豪快に書かれたポスターが貼ってある。

俺はそのポスターの印象で,このギルドがどういうやつらがいるのか予想しながら,戦士ギルドに入っていった。


「んあ? 依頼ですかい?」


入ってすぐ目の前にある受付にいる以下にも脱力している男が話しかけてきた。

無精髭に,寝ぼけた目の中肉中背の男で,髪と服装だけは,少し乱れているぐらいでまだマシといった風貌だ。


「いや,このギルドがどういうものか聞きに来ただけだけど」

「んだよ。冷やかしかよ」


男は依頼ではないと知って,面倒くさそうな口調になる。


「んで説明を聞きたいんだけど」

「あーん? 入団しに来たんじゃないなら帰ってくれ。こちとら色々と忙しいんだよ」


どう見ても忙しそうには見えない。

こんな接客能力が無いやつが受付で,このギルドが機能しているのか疑いたくなった。


「ちょっとガルさん。どうせ暇してるんだから,そのぐらいしてあげなさいよ」


後ろから聞こえてきた声の方を向くと,入り口ホールのテーブルに腰をかけている一人の女がいた。

赤めの茶髪に,ハッキリと開かれた目,愛嬌のある表情でこちらを見ている。


「うっせえなエイル。じゃあお前が説明してやれよ」

「あなたの仕事でしょそれは」

「ほら,お前。そこに座ってるやつから説明を聞いとけ。入団する気になったら俺のところに来い」


そう言ってガルと呼ばれた男はダルそうに机に伏せた。

俺は言われたままにテーブルに腰掛けている女のところに足を運んだ。


「悪いわね。ああいう人だけど,あれでもそれなりに腕の立つ人なのよ」


そう言って,軽く笑みを浮かべながら,女は俺に対面に座るように手で促した。


「そんな風には見えないけど,人は見かけによらずってやつか?」

「ふふ,まあそんなところよ」


俺はテーブルの席に腰をかけた。


「改めまして,私はエイル。このギルドの5番隊の隊長をやってるわ」

「これは丁寧に。俺は……」


さて,なんて名乗ろうか?

……まあ,別に本名でいいか。こういう小さいところでも世界に影響を与えるのが俺達の仕事だしな。


「ケンイチだ。よろしく」

「珍しい名前ね。どこの出身?」

「ここから西にかなり行ったところにある小さな村さ」


こういう場合,当たり障りのない適当なことを言っておくの常套手段である。

いきなり,異世界からだと言っても,変人扱いされて動きづらくなるかもしれないしな。


「へえ,そうなの。まあ戦士ギルドは出身地に関係なく,とにかく腕に自信がある人なら大歓迎だから大丈夫よ」

「それは助かるね」


あれこれ条件出されても困るしな。


「それで,今日は説明だけでいいの?」

「ああ,しばらくはこの町を拠点に活動しようと考えているから,どのギルドに所属しようか決めているところだ」

「なるほどね」


納得がいったようにエイルはうなずく。


「まあ,説明と言っても,あれこれ細かいことはあまり無いから安心して」

「わかった」


そのぐらいが丁度いいと思う。


「取り敢えず,このギルドの主な活動は,簡単に言えば『戦闘が必要な依頼を請け負い,解決すること』よ」

「まあなんとなく想像できるよ」

「ふふ,そうね。仕事内容の多くは,モンスター討伐になるわね。あとは,護衛の任務も結構あるわ」

「なるほど。わかりやすい」

「でもわかりやすい分,荒事が多いから,失敗は許されないし,怪我が致命的になることもあるから注意してね」

「ああ,わかった」

「まあ詳しい依頼の受け方とかは,入団してから説明を受けるから,もし入団したら聞いてね」

「了解」


エイルの説明は回りくどくなく,わかりやすい。


「あと,入団する際は『入団試験』があるから,受ける気があったら,受付で手続きして」

「入団試験って何をやるんだ?」

「それは担当になったギルドメンバーが決めるから,これだ!っていうのは無いわね。気分で内容を変えることなんてよくあることよ」

「なるほど」

「必要なのは,腕っぷしと臨機応変に動けるかだから,その辺を意識して受ければ大丈夫よ」

「……それは教えていいのか?」

「大丈夫よ。意識しても出来ない人なんて山ほどいるから,この程度の情報は問題ないわ」

「納得した」


なるほど。

大体このギルドが何をやっているかはわかったな。


「ありがとう。大方わかったよ」

「そう。なら良かったわ。あなたが実力のある人だったら,この戦士ギルド『ドーデン』はあなたをいつでも歓迎するわ」

「ああ,情報ありがとう。それじゃあ」


俺は机に銀棒(この世界の通貨は棒状のものである)を一本置いて,出口に足を運んだ。


「あら,別に良かったのに」


そう言いつつも,ニッコリとした笑みを浮かべているエイルを少し見て俺は戦士ギルドを後にした。



次は採掘者ギルドに足を運ぼう。

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