門番
三時間ほど歩いて俺が辿り着いたのは,程々の高さの外壁に覆われた港町であった。
淡い砂色の外壁は,海の青と潮風と陽の光の強さと相性がよく見えた。
俺は港町の門に近づく。
門に近づくに連れて,行き交う人の波が目立ってくる。
俺は港町に入るために,門番を探した。
門番をすぐに見つけた俺は,軽装の鎧を見に纏ったその門番に話しかけた。
「ども」
「ん? 何かようか?」
「この町に入りたいんだけど,いいか?」
「んん? 変なことを聞くやつだな。入りたければお前のその足で入ればいいだろ?」
不思議そうに門番は首を傾げる。
「ああ,そうなのか。悪いね。てっきり許可がいるのかと思って」
俺がそう言うと門番は軽く笑みを見せた。
「ははは! 変なことを言うやつだな。どっかのお国の城下町じゃないんだ。そんなことせんよ」
「そうなのか? 密輸とかするやつだっているだろう?」
「そんなのは勝手にやらせておくよ。第一,後ろ暗いものを運んでいれば,この門にある『解析』の魔法が反応するだろうからな」
ふむ,そんなものがこの世界にはあるのか。
魔法がある世界は2回行ったことがあるけど,常時発動している魔法を見たのは初めてだな。
門番は俺を見て,さらに言葉を続ける。
「むしろお前みたいに,俺に話しかけるようなやつのほうが,怪しいぐらいだよ」
「ああ,それは済まない。まあ悪さはしないから安心してよ」
「はは,どうせどこかの田舎から出てきたのだろ? 俺も暇だったからな。簡単にでいいならこの町のことを教えてやろうか?」
「それは助かるな。是非頼む」
そうして俺は,この世界で初めて会話した門番の男からこの港町のことを教えてもらった。
町の名前は「ゼー」
意味は,町のシンボルにもなっている渡り鳥の鳴き声からとったらしい。
渡り人の俺としては,縁起のいい話だ。
この町の特徴としては,予想通り海産物の輸出が大きな産業となっている。
海産物は「水」と「風」の合成属性である「氷」の魔法がかけられた出荷箱に収められて各地に輸出されている。
町の建物の構成としては,
「町役場」「商館」「海師場」「宿泊施設」「各種ギルド」などが俺が気にすべきものとなる。
「海師場」というのは,俺が一番最初にいた世界の漁業組合とほとんど同じものだ。
「各種ギルド」は,
「戦士ギルド」……モンスター退治などの荒事専門。
「採掘者ギルド」……薬草採取や鉱石採掘専門。
「僧侶ギルド」……この世界の神を信仰し,人々の回復専門。
「魔法ギルド」……魔法研究専門。
「盗賊ギルド」……人に頼めないようなこと専門。
ギルドはこの5つがこの街にはあり,城下町のような大きなところに行くと,さらに他の専門ギルドがあるらしい。
「盗賊ギルド」は禁止している町もあるため,他のギルドに関しては大抵の町と呼べる大きさのところにはあるらしい。
俺は簡単にこれらのことを門番から聞いた後,町に入り,まずは手持ちの異世界のものを換金してから,各ギルドを回ることにした。