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月光草探し

ハーレーイ山を登り始めて中腹にたどり着く頃には,日は傾き,赤み掛かっていた。

俺とニノンは仮眠を取るために準備を始めた。


「よっと,小石はこのぐらいどかせば十分だろ。ニノンこっちは準備できたぞ」

「はい。私の方も出来ました」


俺が寝るために簡単に地面を整えると,丁度ニノンも荷物の整理が済んだようだ。

さっきは,ニノンが少し不機嫌だったが,まあ,結局別にそんなに怒っていなかったようで,雰囲気はあっさりと元通りになった。


「そんじゃま,軽く寝るとしますか」

「はい。あ,さっきのマント一応被っときましょうか」

「ん,ああ,そうだな。モンスターに見つかっても面倒臭いからな」


俺はそう言って,【シリシスマント】を召喚して,二人分ぐらいの大きさまで伸ばした。

そして,俺はマントの端を掴んで,もう片方をニノンに手渡した。


「それじゃあ,おやすみ」

「はい。おやすみなさい」


そうして,俺達は陽が落ちるまで仮眠を取った。




夜になり,山の中腹ということもあって,肌寒さが身を包んでいた。

夜の山は,静かで,明かりも僅かな月光のみ,加えて殺風景が広がっているせいか,不気味な雰囲気が漂っている。


「ニノン,一応足元には気をつけて」

「ええ。ところで――」


ニノンは返事をして続ける。


「月光草の生息域ってもう入ってますか?」

「……え?」

「いえ,私は戦闘が専門なので,月光草のことはあまりよく知らないんですよ」

「…………」

「ケンイチさん?」

「ま,まあ,そろそろあるんじゃない,かな?」

「……なんで歯切れが悪いんですか?」


おっと,またニノンが少し不機嫌になっていらっしゃる。

いやでも,俺もよくは知らないしなぁ。


「ケンイチさんって,採掘者ギルド(ミレラリオ)の方ですよね?」


ニノンの少し低い声は,まるで,「お前本当に知らないのかよ。ってかそれなら採掘者ギルドのやつとかいらなくね?」と揶揄されているように聞こえる。


「まあ,ちょっと待っててくれ」


俺はそう言うと,思考を巡らすことにした。


まず,《タンサクソウサ》は夜目が効かないから使えない。

次に,月光草の特徴としては,夜に月明かりのように光ることぐらいしか知らない。

生息するための日照時間や水分量,温度や気圧,周りにの自然環境などなどの情報は全くもって知らない。まあ,山の中腹にあるってことは,ある程度の予想はできるが。


つまり,地道に探すのが,今考えられることだが,それでは色々と問題が出てくる。

ひとつは,食料問題。現在所持している食料では,最大でも一日が限度だろう。森で調達もできるが,如何せんモンスターがいるから危険を覚悟でやらなくてはならない。

ふたつ目に,協働依頼という点である。俺一人なら構わないが,依頼が長引くと,ニノンの生活を脅かす事態になるかもしれない。

みっつ目に,というかこんな山の中で何日も過ごしたくないという個人的意見。


これらのことから,導きだされた答えは,「地道に探しつつ,今夜中に目標を確保すること」である。

これは,二人では到底難しい条件だ。

うん。二人なら。


「よし決めた」

「??何をですか?」

「まあ,見とけって」


いつもの掛け声で,俺は召喚をすることにした。


「押し寄せろ!《タイグンヨウセイ》」

「「「呼ばれて飛び出て僕たち《タイグンヨウセイ》!」」」


目の前に召喚したのは,《ブンセキカイメイ》と同じぐらいの手のひらサイズの小人たちだ。

その数ざっと50匹ほど,一匹一匹をここに召喚したわけではなく,この一群で個の召喚として扱われる。いわゆるセットで1つの商品。バリューセット,ハッピーセットとかそういう感じだ。

見た目は白雪姫に出てくる小人のような格好で,ただその顔はあんなに凶悪そうではなく,どちらかと言うと衰退した人類を手助けしたり,困らせたりする妖精さんがマッチする。


そして,この召喚によって,危惧することがあり,俺はそちらの方を,ニノンの方を見た。

俺が見たニノンはブルブルと震え……。


サン・ハイ♪


「かわああああああいいいいぃいぃぃいい♪」


《タイグンヨウセイ》の方にダイブしていった。

いきなり,見知らぬ人にダイブされた《タイグンヨウセイ》は阿鼻叫喚となっていた。


「うわっ,でかい女が飛び込んできやがりました」

「エマージェンシー,エマージェンシーで御座います」

「ご主人たまご主人たま!助けてくださりやがれです。このやろう」


「何この喋り方!超キュートですぅ♪」


「うわあ,13号が巨人女に捕まったですぅ」

「みんなで助けるですぅ」

「32号は怖いので退避するのです」

「ず,ずるいでやがります」


「はぁはぁ,か,きゃわいいよ~♪はぁはぁ」


い,いかん。ニノンのやつ完璧にトリップしてやがる。目が完全にハートマークになってる。

これじゃあ,依頼が続けられん。


「あ,あ~ニノンさんニノンさん。もしも~し」

「あぁん,なんですか」

「……す,すいませんでした。ごゆっくりどうぞ」


「ご主人たま!?このやろう!」

「裏切りやがったのですぅ」

「許さんのですぅ絶対に許さんのですぅ!」


ああ,《タイグンヨウセイ》との信頼関係が薄れていくような気がするな~。

絶対後でお菓子寄越せとか言われるなこれ。


取り敢えず俺はニノンが落ち着くまで,《タイグンヨウセイ》たちを生贄に捧げて,座りながらその辺の小石を投げて遊びながら待っていた。



「あぁ~ん。いつまでもこうしていたい♪」

「はいはい物語が止まっちゃうからこの辺でね」


俺はなんとか《タイグンヨウセイ》をニノンから引き離して,命令をした。


「それじゃあ,『光る草』を探してきて,見つけたらいつものやり方で知らせてくれ」

「「「わかりましたです」」」

「それじゃあ,よーい,どん!」

「「「わあああ♪」」」


《タイグンヨウセイ》は一斉に辺りに散らばった。


「あの,あんな言い方で良かったんですか?」

「ん?ああ,あいつらは簡単な命令じゃないと自分が納得するまで考え込んじゃうから,あのぐらいの言い方じゃないと動けないんだよ」

「……そんなところもプリティーですね♪」

「そうかな?」

「そうですよ。可愛いのは正義ですから♪」

「そ,そんなもんですか」


ニノンの可愛いの基準がよく分からないが,深堀しないほうがいいだろうと俺の直感が言っている。


「ところで,あの子たち大丈夫なんですか?この辺モンスターもいますし,も,ももしかして食べられちゃったりとか」

「ああ,食べれられたりするね。よく」

「…………へ?」

「手頃なサイズだし,あいつら戦闘力全くないから,結構よくバクバク食べられちゃうんだよね。最初は1000匹ぐらいいたけど,今はもう50匹になっちゃったし,今回何匹帰ってこれるやら」

「………………」

「まあ,大丈夫っしょ。以外に容姿の割にあいつら性格はサバサバしてるから,そういうところあんまり気にしないし」

「………………」


チャキ


金属音と共に俺の喉元にニノンの大剣が当てられた。


「ちょ,ちょっと,に,ニノンさん?」

「今すぐあの子たちを戻しなさい。これはお願いではありません。命令です」

「きょ,拒否権は?」

「あるとでも?この状況で?」

「お,おーーいえす。ま,待てまずは落ち着こうか」

「早くしなさい!私は大きな勘違いをしていました。色々とすごい子たちや道具を出すから,少しは尊敬していたのに,こ,こんな悪逆非道な人だったなんて!!」

「いや,その,ね?ニノン」

「気安く名前を呼ばないで下さい。反吐が出ます。さあ早くあの子たちを戻して,私がこれからは保護します」


そう言ってニノンは大剣の刃を俺の首元にさらに少し深めて皮一枚を斬る。


「じょ,冗談だからさっきの!確かに戦闘能力ないけど,あいつらは物陰に隠れたり,ちょっとした危機回避能力で消えることとかも出来るから!それに最初から50匹のフルメンバーです!一人として欠けることもなく!」

「………………え?」

「すいませんすいませんすいません。ちょっと魔が差しただけです」

「…………そういうことなら早く言って下さいよ~♪危うく殺しちゃうところでした♪」


そう言って,ニノンは大剣を所定の位置にまで戻した。


怖いよ。何で笑ってるの怖いよ。この子凄く怖いよ。

この子に比べれば,アミュットのストーカーとか可愛いレベルだよマジで。

…………早く帰りたい。


俺がそんなことを考えていると,近くにいた《タイグンヨウセイ》の一匹が話しかけてきた。


「ご主人たまご主人たま!19号と34号と50号がそれっぽいの見つけましたですぅ」

「……あ,ああ,そしたらそれを持って帰ってきてくれ」

「了解ですぅこんちくしょう~」


そうして,先ほど報告にあった三匹がこの闇夜の中,淡い白色に発行する同じ草を持ってきたことで,おそらくこれが月光草だろうということで,無事に依頼物を収集することになった。


「それじゃ,お疲れさん」

「まつですぅ」

「お菓子寄越せですぅ」


やっぱりか。

えっと,確かどこかに……。


ゴソゴソ


あったあった。昨日依頼に出かける前にアミュットにもらった手作りの焼き菓子。何か混入されているかもと思って結局一口も食べなかったんだが,まあ毒見も兼ねてこいつらにやるか。


「ほい。これでいいか?」

「やっほうぅクッキーですぅ」

「今日は帰ったら紅茶会ですぅ」

「ん,じゃあな」

「「「ばいばーい」」」


そうして,《タイグンヨウセイ》は帰って行った。

そして,残されたのはしみじみと別れに泣いているニノンと早く帰りたい俺だけだった。


「さて,帰るか」

「…………はい」

「げ,元気だしなよニノン。また今度協働依頼でも会った時に会わせてやるからさ」

「ほ,本当ですか!?今更嘘とか無しですからね!?」

「分かった分かった。そのかわり今度はニノンが菓子持ってきてくれ。そうすればあいつらもお前のことを邪険にしないだろうし」

「わ,わかりました!丹誠込めて美味しいの作ってきちゃいます!」

「……いや,買ったやつでもいいんだけどね」



そうして,俺とニノンはボンヤリと明るくなってきた空を背に帰路についた。



1月から更新出来なかったのは,その間ニノンが《タイグンヨウセイ》たちと一方的なコミュニケーションをとっていたからです。

嘘です。

たまたま,そう言えばこの作品未完結だったことと放置していたことを思い出して,書きました。

また次回もきっと書くので宜しくお願いします><

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