スターと星屑
「お前はスターだ」
ステージの袖で、マネージャーの古賀は、隣に立つアキトの背中を叩いた。
アキトは汗で濡れた前髪を払い、スポットライトが降り注ぐステージへと足を踏み出した。
歓声が爆発した。
アキト、人気絶頂のアイドルグループ「ノヴァ」のセンターにとって、この光景こそが全てだった。
観客は彼を見つめ、彼の名前を叫び、彼の一挙手一投足に熱狂する。
彼は夜空で最も明るい恒星。
周囲のメンバーやスタッフ、そしてファンは、彼という強大な光を際立たせるための、無数の「星屑」だった。
アキト自身、そう信じて疑わなかった。
自分が特別で、自分が中心で、世界は自分のために回っていると。
ライブが終わり、楽屋に戻る道すがら、鏡に映る自分の姿を見るたび、その確信は深まった。
完璧なメイク、計算された笑顔、磨き抜かれたパフォーマンス。
これこそが「スター」の条件だ。
ある夜、深夜のダンスレッスンが終わり、一人になったスタジオで、アキトは窓の外を眺めていた。
東京のネオンは激しく輝き、本物の星空はほとんど見えなかった。
彼はふと、幼い頃の記憶を思い出した。
故郷の田舎町。祭り。まだアイドルになる前の自分。
その頃、彼にとっての「スター」は、祭りの舞台で歌う地元の歌手だった。
自分はただの、足元に散らばる「星屑」の一つ。
「いつか、あの光の真ん中に立つ」
そう決意して、この世界に飛び込んだ。
夢は叶った。
スターになった。
だが、満たされない何かが胸に残った。
翌日、彼は偶然、新曲の歌詞を書いているメンバーのユウヤを見かけた。
ユウヤはいつも控えめで、アキトの隣で踊る「星屑」の一人だ。
「何書いてるんだ?」
アキトは覗き込んだ。
ユウヤは慌ててノートを隠そうとしたが、アキトは構わず覗き込んだ。
そこには、美しい言葉が並んでいた。
「僕らが散りばめられた空で、君だけが輝くスターじゃない。一つ一つは小さくても、集まれば銀河になる」
アキトは言葉を失った。
「馬鹿だな、お前。スターは俺だろ。俺だけが輝いてりゃいいんだよ」
アキトはいつもの強気な態度で言ったが、ユウヤは静かに首を振った。
「アキト、俺たちみんな、光ってるんだよ。お前は確かに一番明るい。太陽みたいにね。でも、太陽一つだけじゃ、宇宙は真っ暗だ。俺たち星屑がいるから、夜空は綺麗なんだ」
アキトは反論できなかった。
その日の夜のステージ。
アキトはいつものようにセンターに立った。
スポットライトを浴びながら、彼は観客席を見渡した。
無数のペンライトが揺れている。
それは確かに、「星屑」の集まりだった。
そして、隣で踊るメンバーたちを見た。
彼らもまた、汗を流し、懸命に輝いていた。
アキトは気づいた。
自分は一人で輝いているのではない。
この無数の光、ファンという星屑、メンバーという星屑、スタッフという星屑。
彼らがいるからこそ、自分は「スター」として存在できるのだ。
「スター」は、一人では成立しない。
「星屑」という背景があってこそ、その輝きは際立つ。
彼は初めて、心からの笑顔を見せた。
計算されたものではない、自然な笑顔。
その瞬間、アキトの輝きは、今までで一番明るかった。
彼はスターであり続けたが、星屑たちへの感謝を忘れることはなかった。
彼らがいるから、夜空は美しいのだと、心から理解したからだ。
少し文がおかしいかも知れません…!




