表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王♂は勇者♀を溺愛したい-捨てられ勇者、魔の地で家族ができました!-  作者: 三嶋トウカ
【第一部】第一章:迎えの日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/56

第9話:城内案内_1


 つつがなく食事の時間は終了した。これまで生きてきた中で、一番生きた心地のした瞬間だった。


「はぁぁ……お腹いっぱい……」

「じゃあ散歩ついでに、城内を案内しましょう」

「ありがとうガァト!」


 少しだけ休憩して、ミトスはガァトとともに城を見て回ることにした。


「ガァトはずっとこのお城にいるの?」

「えぇ。自分の記憶の限り、この城にいるね」

「外へは? よく出るの?」

「偵察もあるし、ウィル様が出かけるならその護衛。それはこっちの世界でも、人間界でも変わらない」

「仕事熱心なのね」

「そうか? まぁ、楽しいからやってる。苦じゃないしな。何でも知れることは楽しいぞ」

「私は、村の外へ出られなかったから。私の世界は村野中曾、せいぜいその周辺くらいしかなかったの」

「自ら外へ出ようとは思わなかったのか?」

「最初はそう思ったのだけれど。段々それが当たり前になって、疑問にも思わなくなっちゃったの。でも、やっぱり変よね、村の外へほぼ出たことがないなんて。……私、十八になるっていうのに」

「まぁちょっと、過保護が過ぎやす、ね」


 ガァトは言葉を濁した。なぜミトスが村の外の世界へ連れ出されなかったのか、ガァトはおおよその見当が付いていた。だが、この話は自分がするべきではないと口をつぐんだ。話はきっと、ウィルからあるだろうと。


「この魔族領……人間は魔の地、って呼ぶんだがな。実は人間がいるんだ」

「ええっ⁉︎ 人が住んでいるの⁉︎」

「そうだ。この城を中心に、奥へ行くと魔族や魔物が……まぁ、あんまり人とまだ関わりたくない奴らだな。それがいる。で、人間領……いわば、ウィルが住んでたところだ。そっちに近い土地は、人間と共存してる」

「……嫌がらなかったの? ……こんなこと聞いたら失礼ね」

「いや、そう思うのが普通だ。変わった奴らがいてな、でもそのおかげで、オレたちが前面に出なくて良い時もあるし、何より飯が美味い」

「それはとっても大事なことね!」

「だろ?」


 先ほど食べた料理を思い出し、ミトスは笑った。


「この辺は物好きも多いが、暴れる奴なんていない。だから城の入口は、基本的に解放されている。門番はいるから、先にそこから挨拶に行こう」

「えぇ」


 ガァトはミトスを連れて、一旦城の外へ出た。


「そこの門の両側。屋根の上にも。それからこの空。暗くてわかりにくいかもしれないが、飛んでるヤツらさ」

「両側……? あっ!」


 ミトスは門の脇にいるガーゴイルと、空を飛び回るドラゴンに気が付いた。


「あの石像……もしかして、動くの?」

「あぁ。立派な門番さ」

「空は……あんなに大きな影……」

「よし! お前ら降りて来い! グルルアァァァア!!」

「きゃっ!」


 大きな声でガァトがひと鳴きすると、空から大きな影が急降下して地面へと降り立った。

 

「グルルルル……」

「ド、ドラゴン……」

「そうだ。こいつらは中々気のいいヤツらでな。こうやって空を見回って、トラブルがないか見回ってくれてるんだ。気性は荒いほうだが、これでも人懐っこくてな。仲良くなれば百人力だ」

「よ、よろしくね? 私の名前はミトス。あの、ウィルの妻になるために、ここへきたの。……仲良くしてくれるかしら?」

「グルッ……」


 地上へ降り立ったドラゴンは、一体だけではない。ミトスとガァトの周りを、何体ものドラゴンが囲っていた。


「スンスン……グルルルル」

「……私、ニオイを嗅がれてる?」

「確認してるんだろ。敵じゃないってことを。お前ら、このお方はウィル様の妻だ。丁重に扱うように。……じゃれても噛んだり引っ掻いたりはするなよ?」

「そんなことされたら私すぐ負けちゃう……。勇者見習いとして頑張ってきたけど、こんなに大きなドラゴン、勝てる気がしないわ……」

「グルル……ルルル……」


 ドラゴンたちはミトスのことを認めたようで、伏せるかたちで頭を下げた。


「撫でても良いの?」

「この姿は服従の証だ。大丈夫、触ってみろ」

「う、うん……」


 ミトスは恐る恐る目の前にいた一体のドラゴンの頭を撫でた。


「グルルル……」

「かっ、可愛い……!」

「ドラゴンに対してその台詞、たいしたモンだ」

「ホラ! 目が優しいの! それに、口も開かない! 喉を鳴らしているから、きっとこのまま撫でていても怒らないわね」

「はっはっ! そうかもしれん。さ、次はあっちだ」


 ガァトの視線の先にはガーゴイル。初めに見た時とは角度を変えて、まるでこちらを見ているようだった。


「……食べられたりしない?」

「大丈夫だ。挨拶してみたらわかる。見た目は人間から見たら、ちと怖いだろうがな」


 パッと見はただの石像だ。しかしここは魔族領にある魔王の城、そんなに単純な話ではない。


「こっ、こんにちは!」

「……」


 ギロリとミトスをひと睨みしたかと思うと、大きくその口を開けた。


「わっ!」

「心配すんな。ミトスのことを試してるだけさ。堂々としてりゃあいい」

「わ、わかった。……こんにちは」


 ミトスはガァトに言われた通り、ジッとガーゴイルの目を見据えて、ゆっくりとあいさつし直した。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……ギィィ……」


 石膏でできた硬い羽根を鳴らしながら、門番として鎮座していたガーゴイルは、二体ともミトスの前へと降り立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ