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第12話  襲来 3

 その音でダンは驚いて目を覚ます。急いで窓に走り寄って、広場を見る。

 すでに嵐は過ぎていて、風は強いが雨は降っていない。波はまだ激しくうねっているが、それでもかなり収まっている。

 異常が起こっているのは、造船場だ。炎を上げながら、崩れていってる。

 通りには、大勢の大人たちが走り回っている。

 だが、造船場の消火に向かうよりも、港の方に走って行ってる。

 大人たちの怒声、怒号に、悲鳴も混じり、街中が騒然となっている。

 ダンと同じように、騒ぎに目が覚めた街の人たちが、窓から顔を出して騒いでいる声も聞こえてくる。

 兵士たちも続々と港に走って行く。

 非常事態を知らせる鐘が、高台からヒステリックに鳴り響く。

 湾内に目を走らせると、そこには沢山の船が、未だに高くうねっている波間に浮かんでいる。

 造船所の上げる炎に照らされた、その船の帆柱の天辺には、髑髏マークの黒旗が掲げられている。

「か、海賊だ!!」

 ダンが叫ぶ。

 30隻以上にもなる海賊の大艦隊がヘルネ市の港に殺到していた。

 

 窓から外を見ていると、通りからダンの父親がダンを呼ぶ。

「ダン!!みんな高台に逃げるぞ!!急げ!!」

「分かったよ!行こう、2人とも!」

 ダンはネルケとパインを促して、家の外に飛び出す。

 通りはパニックになっていた。

 港へ向かう者、高台に避難しようとする者。右往左往する者。

「こんな事ってあるのか?!」

 ダンも動揺が収まらない。

 アール海には多くの海賊がいる。アインザークとグレンネックを繋ぐ航路を妨害している事は知っている。

 しかし、他国ならともかく、この大国アインザークの、しかも端っことは言え曲がりなりにも王都ガイウスに、海賊が大挙して押し寄せてくるなんて言う事は、多分今まで無かったと思う。

 少なくとも、ヘルネ市の大人たちは警戒していなかった。だからこその、この混乱ぶりだ。

 

 結局最後は、ネルケに手を引かれながら、ダンはパインと共に高台にたどり着いた。

 人々は高台から不安そうに港の様子を見ている。

 ダンも、人混みを押し割って、港が見渡せるバルコニーに出た。

 普段は眺めの良い子のバルコニーで、のんびりおしゃべりする人たちがいるのだが、今は恐怖と不安の色に染められた人々が、ただ呆然と港を眺めていた。


「ダン!無事か!?」

「エド?!レオンも!」

 バルコニーにはエドとレオンハルトがいた。すぐに2人はダンたちの元に来る。

「どう見る?」

 ダンの隣に来ると、エドはすぐに尋ねた。

 ダンは、炎に照らされて、不気味に赤く色づく港と、無数の海賊船。それに立ち向かう少数の小舟に乗った冒険者と、ようやく船を出そうとしている兵士たちの様子が見えた。

 海の上では、沢山の光が飛び交っており、すでに魔法戦は始まっている様だ。


「兵士たちの初動が遅い。冒険者たちの数も少ない。圧倒的に不利だ」

 パッと見ただけで、ダンがそう断じる。

「上陸されるかな?」

 レオンハルトが厳しい表情をする。ゴブリン襲来事件で壊れた弓の代わりに、パインに特別な弓矢を作って貰っていた。その弓を握りしめている。

 このまま戦いに参戦しそうだ。

「父さんも戦いに参加している」

 レオンハルトが言う。

 戦闘経験のある大人は、恐らく港に向かっていて、すでに戦闘しているのだろう。

 だが、海賊船と、小さな漁船とでは勝負にならない。

 海賊にも魔法使いはいるし、強い戦士もいる。戦闘経験も豊富だろう。


「勝てないけど、時間を稼げば何とかなるはずだよ。多分冒険者ギルドから、メッセンジャー魔法で王城に連絡が入っている。ブラウハーフェンに常駐している海軍艦隊が来るはずだよ」

 そう言ったが、ヘルネより北にあるブラウハーフェンの方は、まだ嵐が去って間もない頃だから、この風の中、潮に逆らってヘルネ市に来るのにどれくらい時間が掛かるか分からない。



 ダンはジッと港の様子を眺める。

「ん?」

 海賊たちの動きに違和感を感じる。

「どうした?」

 エドが尋ねる。

「いや。海賊たちの狙いは、多分商船かな?あまり積極的に港には攻撃してこないし、湾の外に待機している船も5、6隻ある」

「確かに。商船には積み荷が乗っているだろうから、それを奪うつもりかも知れない」

 レオンハルトが同意する。嵐の時期なので、港には商船が沢山係留してある。それによって、冒険者も、兵士も船を出しにくいし、動きも揃っていない。

 海賊たちは、そのバラバラな動きにつけ込んで、各個に攻撃を集中している。

 あれだけの海賊船だから、強制的に上陸して、街の物を略奪する事も出来るだろう。

 なのに、敢えてジワジワと攻め寄せているようだ。

『味方(海賊)の犠牲を出さないように戦っているのかな?』

 海賊がそんな戦い方をするのか、ちょっとイメージとしては湧かない。


 改めて、湾全体を眺める。


「こうしちゃいられない!!戦える奴は武器を持って加勢しに行くぞ!!」

 高台の誰かが叫ぶ。

「おおお!!」

 複数の人たちが叫ぶ。

 止める声、叫ぶ声、怒鳴る声、泣き声が高台を埋め尽くす。

「違う!!あれは陽動だ!!みんな、待って!!」

 ダンが叫ぶ。ダンの声は大勢の声にかき消される。

「どうした、ダン!?」

 エドが詰問する。

「海賊の狙いは商船だ!!でもそれは海上からじゃ無い!!」

 ダンは湾の北端に立っている灯台を指さす。

「メグを見つけた所!あそこはこの辺り唯一の浜辺だ!あそこから上陸して行けば、港はすぐ近くだ!!今頃小舟で砂浜に向かっているに違いない!!」

 エドも、レオンハルトも、そして、ダンの声が届く範囲にいた大人たちも、その言葉を聞いてギョッとする。


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