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第2話  邪眼の魔女 2

 学校が終わるのは13時。

 ダンは帰り道を急ぐ。

 いつもはここで誰かと遊ぶ約束をしたりするのだが、今日は、誰にも声を掛けずに家路を急ぐ。

 ただし、家には入らないで、そのまま隣の魔法道具屋に行く。


 入り口から見ると、昼間でも生け垣が影を作っていて、最初の6段の階段を上るのが躊躇ためらわれる。

「大丈夫だって。お店なんだから、いきなり取って食われたりはしないだろ?」

 自分にそう言い聞かせて、階段を上る。

 昨日も通った敷石の先に、白い柵の玄関ポーチがある。


 昨日は分からなかった左奥の建物の屋根は黒だった。オレンジに紺に黒と、三色の屋根の建物が合体しているのだ。

 それと、ポーチには手書きで書かれた看板が置いてある。

 ダンは近づいて看板をのぞき込む。

「なになに?『日用品あります』?『素材があれば魔法道具を作ります』?」

 イマイチ内容は分からないが、手書きの看板を用意するなら、親切な店主なのだろう。

 少し安心して、ダンは扉をそっと開けてみる。


 カラン、カラン。

 ベルは鳴るが、ゆっくり開けたので、音は小さい。

「すみませ~~~ん」

 小さな声で、店の奥に声を掛けてみるが、店内には誰もいない。


 店の奥に2つ廊下への出入り口がある。多分右の建物と左の建物にそれぞれ繋がっているのだろう。


 誰もいないので、ダンは改めて店の様子を窺ってみた。

 いくつもの棚が置かれていて、そこには雑多とした商品らしき物が置かれていた。

 はさみ、バケツ、便せん、何か分からない液体、人形、鍵、火箸、フライパン、アクセサリー。

 統一性が全く無い。

 棚には、「欲しいものがあれば申しつけて下さい」と張り紙がある。

 何でも取り扱っていて、客の注文に応じて取り寄せてくれるのだろうか?

 はっきりしているのは、ここにある物は、みんなありふれた物で、魔法道具には見えない。

「まさか、この人形が火を噴いたりしないよな」

 ダンは呟きながら、棚に座らされている布製の人形をそ~~~っとつついてみた。

 人形は、バランスを崩して、パタンと倒れたので、ダンは一瞬ビクッと体を震わせたが、結局何も起きなかった。



「何か用か?」

 突然声を掛けられて、ダンは今度は完全に飛び上がった。

「うひぃ!」

 声のした方を慌ててみると、そこには黒いマントを纏った人がいた。

 

 なんと形容したら良いのか、昼間に明るいところで見ているのに、ダンには判断できない。

 女の人であるのは分かる。

 しかし、声同様、外見から年齢が分からない。少女の様な、老女の様な。千年以上生きている雰囲気がある。

 肩から化け物は生えていないが、大きな丸まった肩アーマーを身に着けている。

 

 髪の毛は半分が白髪で、半分が黒髪。

 肌は張りがあるが、青白い。

 唇は紫。

 目の周りが黒くシャドーのメイクをしているように見える。

 そして、その目つきは鋭く、冷気を感じさせる迫力があった。

 額には、やはり赤い目がある。だが、もしかしたら、入れ墨かメイクなのかも知れない。

 

 とにかく恐ろしい雰囲気があり、改めて叫び出しそうになり、必死に口を押さえて耐える。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ~~~~ッッっと、背景から音が響いて、闇が伸びてきそうな雰囲気をしていた。


 ダンが何も言わないので、その店主らしき女性は首を傾げる。

「ふむ・・・・・・。客では無いのか?」

 静かな囁き声の用だが、刺すような恐怖を感じた。

「そ、その・・・・・・」

 必死に絞り出した声は、うわずってしまう。ダンは後ずさりする。

 それを追うように、店主が足を一歩進める。

「客ならば望みを言うが良い。その代わりに、貴様が最も大切な物をよこすが良い」

 店主が紫色の唇を歪めて、「クックックッ」と笑った。

『魔女』

 ダンの脳裏にその言葉が思い浮かんだ。強大で邪悪な魔女に違いない。

 大人たちが引っ越し作業中に恐怖して建物から出て来た理由が分かった。

 あれは本当に怖かったからだ。

 なんで、こんな化け物が隣に引っ越してきたんだ?!

 ダンは得も言われぬ恐怖に包まれていた。


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