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第11話  メグ 4

 仲間のゴブリンを喰っているのを見て、岩陰に隠れていたダンは、思わず吐き出しそうになっていた。

 それでも、時間を稼ぐ為にも、息を殺して待つ。

 ゴブリンの動き出しが遅い方が助かる。

 

 だが、数分ほどして、少ししかありつけなかったゴブリンたちが、不平のうめき声を上げながら、ウロウロしだした。数匹が海から距離を取る為に、草木の生えた坂を上れないかと崖に手をかけ始める。高低差は2メートルも無いので、がんばればよじ登れてしまう。

 それはさせてはならない。


 頃合いだと判断して、ダンは隠れていた岩陰から飛び出して、腕に抱えていた石を、次々とゴブリンに投げつける。

「うわあああああああっっ!!」

 怯える心を奮い立たせる為に、大きな声を出す。

 ダンに気付いたゴブリンたちは、一瞬驚いたが、すぐにニヤリと嗤う。次々投げつけられる石を気にする事も無く、今度はダン目がけて殺到する。

「うわあああああっっ!!!」

 今度は恐ろしさから叫び声を上げて、ダンは狭い岩場の道を全力で秘密基地のある窪地に向かって走る。


 先頭を走るゴブリンが倒れる。

 低い崖の上から、レオンハルトが矢を放ったのだ。矢は、ゴブリンの太ももに突き刺さり、ゴブリンは転倒する。後ろから来るゴブリンは、転がる仲間にぶつかり、更に転ぶ。そして、その上を他のゴブリンたちが踏み付けていく。狭い道なので、1人ずつしか通れない。避ければ海に落ちてしまう。

 海は怖いが、矢は怖くない。獲物も逃がしたくないし、後で上の奴も殺して食べられる。

 ゴブリンの思考は、いつも自分勝手のご都合主義だ。欲望だけに真っ直ぐで、残虐行為を楽しむ。


 更に矢がゴブリンに傷を負わせる。次々矢が射かけられ、倒れたり、負傷するゴブリンが増えていくが、完全に倒すまでは至っていない。

「くっ。分かってはいても、人間の形をしたものを射るのは抵抗があるな・・・・・・」

 木々に隠れて矢を放つレオンハルトが呻く。

 矢は全部で20本。家から持ってきたのは、その内の6本。後の16本は秘密基地の樽の中に入れていた予備の矢だった。

 すでに10本放って、2本外している。


 逃げるダンは、最後の小さな岩を乗り越えて、窪地に姿を消す。

 それを見たゴブリンたちは、一直線になって岩を飛び越えて窪地に飛び降りた。

 しかし、地面は思っていたよりも遠かった。

 矢を受けなかったゴブリンたちは、小岩を飛び越えた先に待っていた深い穴に落ちてしまったのだ。

 この穴は、主にエドとネルケが掘った穴だった。

 ネルケはドワーフだけあって、穴を掘るのが上手く、ボロボロのシャベルだけで、岩をどかして、地面を掘ってしまった。

 エドは、木の板でネルケを手伝った。ダンは足手まといにならないように、掘った土を多少運んだだけだった。

 穴の大きさは2メートル四方で、深さは1メートルちょっとだろう。

 ゴブリンの頭は穴の外に半分出ている。

 

 だが、それで取り敢えずは充分だった。

「うわあああああ!!」

「やあああああ!!」

「おりゃあ!おりゃあ!!」

 穴を避けて窪地に降り立ったダンと、エドと、ネルケとで、木剣、木の棒、シャベルで、ゴブリンたちの突き出た頭に殴りつける。

 何度も何度も、必死で殴りかかった。

 もちろんゴブリンも抵抗したり防御したりしながら、何とか穴から這い上がろうとする。

 落ちたゴブリンは5匹。メグが3匹倒したので、まだ小岩の一本道の上にいるのは、7匹。

 矢を受けたりこそしているが、全く怯む様子も無く、仲間を踏み付けてまで、ダンたちに飛びかかろうとしていた。レオンハルトの矢が飛んでくるので、足が止まっているに過ぎない。


 その時、1メートルほど下の海から、メグが飛び上がってきた。そして、ゴブリン1匹に掴みかかると、海に引きずり込んでいった。

「メグ?!そこまでしなくていい!!もう逃げろ!!」

 ダンの計画とは違う。そもそも、メグは確実にゴブリンたちを引きずり出すだけで、1匹仕留めるとか、海に落とすとかまでして貰う予定では無かった。あまりにも危険すぎるから、そんな事は考えもしなかったのだ。

 だが、ダンの思いを無視して、再びメグが細い一本道に飛び上がる。

 

 しかし、今度はゴブリンも身構えていた。飛びかかって来たメグの腕を掴んで、道の上に引き倒し、持っていた棍棒でメグの頭を殴りつける。

「きゃああああっ!!」

 更に、尖った棒の先端をメグの尻尾に突き刺す。

 メグの頭から、尻尾から血が噴き出す。

「メグ!!」

 ダンが叫ぶ。

 ゴブリンを殴るのに必死だったネルケもエドも、メグの危険を知った。

 メグの体に、ゴブリンが馬乗りになり、むき出しの腕にかじりつく。

 腹にもかじりつく。

「きゃああああああっっ!!」

 メグの絶叫が響く。

 メグの姿は、襲いかかるゴブリン4匹によって見えなくなった。


「うわああああああっっ!!」

 ダンは叫ぶと、穴に落ちているゴブリンの持っている棒を奪い、ゴブリンの頭を踏み付けて小岩を乗り越える。

 そして、メグに覆い被さるゴブリンの腹に、棒の先端を突き刺し、そのままの勢いでぶつかる。

 メグに襲いかかっていたゴブリンたちは、一度メグから離れた。

 その隙にダンはメグの腕を掴んで引き起こすと、一緒に海に飛び込んでいった。

「バカ!!お前泳げないだろ!!」

 エドの叫びは、海に落ちたダンの耳には届かなかった。



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