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第11話  メグ 2

 4人がかりでメグを下ろすと、全員が窪地に降りる。

「ここが秘密基地なの?何も無いじゃない!」

 ネルケが肩をすくめる。

「隠していないと、秘密基地じゃ無いだろ?」

 ダンとレオンハルトとリオで、窪地の壁の一カ所の枯れた茂みをどかす。

 すると、ちょうど人1人が入れるくらいの小さな穴が現れた。

「わあ!すごい!」

 ネルケが嬉しそうに、すぐに中に入ろうとする。ドワーフは洞穴とか大好きな種族だ。

「ダ、ダメだよ!中は狭いんだ!」

 先に中に入ったダンが、ネルケを押しとどめようとするが、問答無用でネルケは洞穴に押し入る。

「真っ暗なのに!」

 ダンが文句を言うが、ドワーフはいくら暗くても目が見える。だから、洞窟の中の様子はよく見えた。

「何々?ろうそくと瓶と、小さな樽。木の棒に弓矢・・・・・・。弦が切れてる。後は」

 ダンと2人入ると、もうそれだけであまりゆとりが無い空間を、ネルケはごそごそとあさる。

「ロープにショベル。これ、盾?クルミの殻、いっぱい。捨てればいいのに。あ!木箱!中は?」

「ちょっと、ネルケ!」

 ダンが抗議しても、ネルケは構わず漁る。ダンはネルケと密着しているが、ネルケが何をしているのかは、全く見えていない。外から差し込む光など、洞窟内では小さな点だ。

「本だ!え~と。・・・・・・なにこれ?よれよれの『ただ中』ばっかり」

 「ただ中」とは、冒険者の活動を念写付きで紹介している雑誌である。冒険者ギルドや、書店で買えるが、安いとは言え、ダンたちには買えないので、もらい物を大切に保管して、何度も読み返して楽しむのだ。

 ここにあるのは、すでに飽きるほど読んだ雑誌である。

 

 ネルケは、呆れたようにため息を付く。

「な~んだ。これだけ?」

 何を期待していたのか、不満そうな口調である。

「これだけって何だよ?!ここは僕たちの冒険の拠点なんだから!」

 ダンはちょっとムキになって言う。

「壊れた弓矢と木の棒とくるみで?男の子って、これだから可愛いよね~」

「これだから、女の子は秘密基地に入れたくないんだよ」

 ダンがブツブツ言いながら、目当てのロープを取り出す。

「ダン。僕も入りたいんだけど・・・・・・」

 レオンハルトが入り口からのぞき込む。

「俺も入ってみたいな!」

 エドが言う。

「じゃあ、交代だ。ネルケ、出よう」

「やだ!」

 ネルケは洞穴に寝そべる。本能的に洞窟に居心地の良さを感じているのだ。

 渋々ダンが出て、1人ずつ交代で入った。

 

 レオンハルトは、樽の中身を確認したかったようだ。

 樽の中には、狩猟用の道具が入っていて、今回も少し補充しておいたようだ。

 エルフは種族的に弓の扱いに長けていて、幼い頃から弓の修行として狩猟をして育つ。

 レオンハルトは、修行の拠点として、今もこの秘密基地を使っているそうだ。

 

 次にエド、ブリュックとアンナマリーが入る。

 リオとメグは入らなかった。


「じゃあ、行くよ」

 ダンが促すと、ネルケが「え~~~」と不承不承出て来た。

「今度ここ、もう少し掘って広くしてもいい?」

 ドワーフの血が騒ぐのだろう。放っておいたら、入り口に装飾まで施されそうだった。

「少しならいいけど・・・・・・。1人では来るなよ」

 1人で来たら流石に危険だ。

「1人では来ないわよ」

 ネルケは機嫌が良さそうだ。



「ザシャさんとテオさんが言うには、この先でマーメイドを見たそうなんだ」

 ザシャとテオは漁師だ。実際に見たのは、もっと沖になるのだが、船を出せないのだから、まずは陸から確認しに来たのだ。

 メグの話では、マーメイドは度々陸に上がるので、人目に着かない海岸にいる場合もある。

 小さな岩を乗り越え、幅1メートルほどの足場を進む。

 少し進むと、開けた場所に出る。ちょうど一つの岬の先端に当たる場所だ。1メートル近く下が海で、波が押し寄せては砕けて、そのしぶきが舞い上がり、時々ダンたちにも霧のように降りかかる。

「もう一つ先の岬に行くんだけど、高低差があるから、メグをロープで引き上げるようにするからね」

 岩場を海に沿って進むと、ダンの言う通り、先に木々の生い茂った崖が出現した。

 さっきの段差と違い、足場になる岩が沢山あるので、よじ登れる場所はある。


「僕とレオンで先に行くから、みんなは待ってて」

 この辺りに詳しいのは、ダンとレオンハルトとリオなので、みんなは同意して待つ。

 2人は岩場をよじ登って崖の上に出る。

 ダンは、手近な木にロープを巻き付けようとするが、その動きをレオンハルトが止めた。

「レオン?」

 ダンが尋ねようとすると、レオンハルトが厳しい表情で唇に指を当てて静かにするように合図する。

 ダンはレオンハルトの様子にただならぬ気配を感じ、静かに頷くと、みんなに向かって、静かにして身を隠すように手振りで伝える。

 エドはそれを察して、背中の木剣を手に持って、みんなを手近な岩の影に隠す。


『どうしたの?』

 みんなを静かにさせてから、ダンが小声で囁く。

『風上からの匂いが気になる』

 匂いと言われても、ダンには分からない。

 レオンハルトが、弓に矢を番えながら、静かに前進する。

 ダンもそれに続いて進む。

 レオンハルトは、見事に足音も立てなければ、枝葉にぶつかって揺らす事も無く進んで行く。

 ダンもその後をピッタリ付いて行く。

 すぐ前を行くレオンハルトの緊張感が高まっている事をビシビシ感じる。


 少し進むと、ダンも異変に気付いた。獣臭い匂いに混じって、エレスの言葉では無い、獣が吠えるような話し声が聞こえてくる。

 「ギャー、ギャー!」、「ジャシュジャシュ!」、「ゲヒャヒャヒャ!!」

 聞いているだけで不快な気分になる声だ。

『ゴブリンだ』

 レオンハルトが木々の隙間から様子を窺って言う。

 ダンも、レオンハルトの隣から様子を窺う。

 するとそこには、15匹のゴブリンが座って何かの肉を生のままかじっていた。


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