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第11話  メグ 1

 季節は巡り、8月も中頃になる。

 この頃になると、朝晩の空気に、少し湿り気と、涼しい風が混ざってくる。強い雨が降れば、そこからいよいよ体感的に秋となる。

 日中は半袖でも大丈夫だが、朝晩には長袖が欲しくなってくるのだ。


 この頃、ダンたちは、学校が終わると海へ行っていた。ヘルネ市の大きな湾の南側は、漁師たちの港であり、メインの市場に漁で取れた物を水揚げしたら、漁師の港に船を係留する。

 その為、街の南側は漁師の集落となっている。

 漁師はこの付近の海について詳しい。だから、サメの出現しやすい所や、マーメイドの目撃情報を聞いて回っているのだ。

 メグを仲間の元に戻す約束を、早く果たしてやりたい。


 メグは陸での生活にもすっかり慣れていた。

 パインが、メグの台車用にと、専用の車輪を作って、ダンが台車を作り、より移動しやすくなった事もあり、店の手伝いや、お出掛けを楽しんでやっている。

 ちなみに以前の車輪は、山車を燃やす前に取り外し、今は素材集め用の荷車に使われている。

 メグが陸の生活に馴染んだとは言え、やはり早く親の元に帰してやらなければならない。

 だから、ダンたちは情報を集め、陸沿いではあるが、海を見に行っていた。



 この日は学校が休みなので、松林の先の岬にまで来ていた。

 アインザークの多くの海岸はリアス式海岸だ。鋸歯(のこぎりば)のようにギザギザした海岸が続いている。そのおかげで、港湾として使える地形も多い。

 

「なんか久しぶりだね、ここまで来るの」

 歩いて街から1時間程度だが、この辺りは民家は無い。

「僕は時々来ていたよ」

 ダンの言葉に、レオンハルトが穏やかに微笑む。レオンハルトは、今日は狩猟用の弓矢を持っている。

 ダンも大きな鉈を腰に下げている。

「おいおい。この辺りに何かあるのか?」

 ダンとレオンハルトの会話を聞いて、エドが怪訝そうな声を出す。エドは背中に木剣を背負っている。

 一応街の外に出る以上、野獣と出くわす可能性もあるので、最低限の武装をしている。

「僕たちの秘密基地があるんだよ」

 ダンが言う。

「そんなん、俺知らねぇぜ!!」

 仲間はずれにされた思いで、エドが抗議の叫びを上げる。

「あたしも知らない!!」

 ネルケも同様に叫ぶ。

 すると、ダンが苦笑しながら言う。

「・・・・・・だって、ネルケは女の子だろ?秘密基地は男の子の遊びだよ。それに、エドは、あの頃秘密基地を知っていたら、きっと壊しに来ていただろ?」

 ダンの指摘を受けて、エドが「うっ!」と呻く。

「そ、そうだな。うん。悪かったよ・・・・・・」

 ダンを目の敵にしていた事を、今はエドは反省して恥じている。

「ずるいよ!女の子だって秘密基地で遊びたいのに!!リオは知って居たの?!ブリュックは?!」

 ネルケはブリブリ怒りながら、怒りの矛先を増やしていく。

 矛先を向けられた2人は、ブンブン首を振る。

「・・・・・・リオは嘘ね」

 同じように首を振ったのに、ネルケには見抜かれてしまった。リオは長い首をうな垂れて「すみません・・・・・・」と白状した。

 ネルケに対して、意見を言ったのはアンナマリー、6歳だった。いや、誕生日を迎えたから今は7歳である。

「ネルケちゃん。秘密基地ごっこって、男の子がする野蛮で下品な遊びなのよ。女の子がいたら出来ないような事をする為に男の子だけで集まるんだから。女の子が女の子だけでお人形遊びした方が盛り上がるのと同じなの。やたらと立ち入ったらダメなんだからね!」

 これには、言われたネルケだけでは無く、男連中も言葉を無くす。決して「違う」とも「誤解だ」とも言い切れない。

「あはははは。一番の大人は、アンナやな~」

 メグが笑いながら言う。


「と、取り敢えずさ。まずは秘密基地に行ってみよう」

 ダンが提案した。

「やらしい物とかないやろな~」

 メグがカラカラ笑う。

「無いよ!!」

 ダンが真っ赤になって叫ぶ。



 左手が急峻な坂で、木々が生い茂っている。

 右手は凸凹の岩が連なり、すぐに海が広がっている。

 ダンたちは坂の縁を歩いている。そこには道などない。

 メグの新しい台車は、かなり凸凹でも登り降り出来るが、流石に大きな岩を乗り越えたりする事は出来ないので、岩場には降りずに移動している。それで、大きな木の根の張り出しや、崩れそうな足場があるため、みんなで協力して乗り越えて進んでいる。

 少し行くと、窪地にでる。周囲との段差が2メートル近くあるフライパンの様な形をした地形である。

 ちゃんとした円形では無いが、直径にして20メートル程度の小さな空間だ。

 一カ所だけ、小さな岩の段差となっていて、そこは高低差が50センチ程度だ。その岩の先は、幅にして1メートル程の狭い道になっている。

 そこだけ見ると、ちょうど窪地がフライパンの鍋部分と持ち手部分のようになっている。斜面の左手は高低差が3メートル以上の崖で、右手はすぐ下に海が迫っている。


「はしご、まだ残っているかな?」

 ダンが窪地沿いに、生い茂る木立の中を進む。

「あるはずだよ」

 レオンハルトが、先に走って行き、茂みの中から、隠されていた木製のはしごを引きずり出す。

「結構ボロくなっているね」

 ダンが笑う。

「それでも時々直しておいたから、充分使えるよ」

 レオンハルトが、窪地に向かってはしごを下ろす。

「ええ~。それ大丈夫なの?」

 ネルケが不安そうに言うが、レオンハルトとダンは、ギシギシはしごを軋ませつつ下に降りる。

「俺は飛び降りられるぜ!」

 エドが飛び降りようとするが、ダンが止める。

「待って。エドとネルケでメグの手を持って下ろしてあげて!下で僕たちが受け取るから」

「ああ。そうだな!」


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