第10話 夏祭り 7
窓に近付くと、ゾウ広場が一望出来る。
賑やかな曲になっていて、広場では沢山の人たちが踊りを楽しんでいる。
ダンは目立つヒヨコのかぶり物を探したが、広場のどこにも見えなかった。
「あ!鐘が鳴った!」
ネルケが叫ぶ。
赤地区の住人は、大抵が海が見える建物の2階にいるようだ。同じくらいの高さから、歓声が聞こえる。
そして、港の先の海上に、赤い光が灯った。
次の瞬間、赤く尾を引いて、炎が立ち上っていく。
一直線に上っていく炎は、上空でいくつにも分裂して、炎の大樹が育っている様に見える。
ドンッッッ!!!
ヒュルルルルル~~~!!!
光に少し遅れて、巨大な音が響き渡る。
それで、踊りに夢中になっていたゾウ広場の人たちも、上空に立ち上る炎に気付いた。
みんなが見上げる中、大きく枝を広げた炎の大樹は、高さが300メートルにも達した辺りで、一気に弾ける。
巨大な火球で形作られた球体が、空一面に出現した。
炎の花が、何輪も一度に開花したのだ。
ドンッッ!!ドドドドドンッッッ!!
ドンッッ!
ドンッッ!
パパパパパパパパパパ~~~ッッ!!
バチバチバチッッ!
凄まじい音が、遅れて轟く。
「すごい!すごく綺麗だ!!」
「なんて音なの?!でも、綺麗~!!」
ダンとネルケが音に負けないように、大きな声で叫ぶ。
赤地区の人たちが、歓声と拍手を送ると、音と現象に驚いたり恐れたりしていた人たちも、ようやく空に咲いた炎の花を鑑賞するゆとりが生まれた。
次第に歓声と拍手は、広場、通り、建物の窓を問わず、街中に広がっていった。
炎の花は、約1分ほど上空で輝き、やがて、色を薄くして消えていった。
「パイン!ありがとう!!」
窓から消えゆく炎を眺めていたら、どこかの窓から誰かの声が聞こえた。
「パイン!ありがとう!!」
また別の声が聞こえた。
パインたちは、急いで坂に面した南側の窓に向かい、そこから坂の上に目を向ける。
すると、坂の上の赤地区の人たちが、それぞれの家の2階の窓から顔を出して、パインに手を振っている。
「すごかったぞ!!」
「良い物見せてもらった!!」
「パイン!ありがとう!!」
「また見せてね!!」
皆が皆、笑顔でパインに手を振っている。
「・・・・・・」
戸惑った表情で固まっているパインの肩をダンが叩く。
「ほら、パイン。みんなに手を振ってあげな」
言われて、戸惑いながらパインはこっちを見ている人たちに手を振った。赤地区の人たちも、それぞれの窓から、笑顔でパインに手を振り返した。
「良かったね、パイン。これでパインもみんなの仲間だね」
ネルケがもらい泣きをしながらパインに抱きつく。
「う、うむ・・・・・・」
パインは、まだ戸惑っているが、少し嬉しそうに小さく笑った。
その笑顔を見て、ダンも笑った。




