表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/82

第9話  罪と山車 9

 そして、翌日。

 祭りまで3日。

 木曜日から祝日になり、祭りは4日間続く。山車はその間、街中を練り歩き、最終日の夜に市場の広場で燃やされる事になる。

 

 午後になり、赤地区の夏祭り担当者と、数人の大人たちが足の豆亭に呼び出される。

 まさかと思い、倉庫に入ると、そこには完成した山車があった。

「信じられん。子どもだけでこんな短時間で・・・・・・」

「どうやって作ったんだ?!」

 大人たちが驚いてダンを見る。

「友達に手伝って貰いました。後は足の豆亭の人にも」

 未だに家に帰らず、全身が真っ赤に汚れて、髪にも糊が白い塊になって張り付いているダンが答える。

「しかし、それだけで出来る物じゃないだろう?!」

 大人たちは首を傾げる。と言うよりも、あからさまに不審そうにダンを見る。

「あの魔女か?!」

 そう言った口調は、怒りがにじみ出ている。

「いいえ。あの子は何もしてません。でも、確かにあの子の友達には協力して貰いました」

 ダンは怯まずに答える。

「友達?!どうせ魔法道具かなにかだろう?」

 大人の声に非難の色が明らかに混じる。

「いいえ。竜です」

 ダンの返答に、大人たちは話しの流れが読めずに戸惑う。

「竜?!」

「皆さんの中には見たかもしれませんが、パインの右肩に住んでいる不定形の竜です」

 火事の時に、得も言われぬ不気味な物が、形を変えて膨れあがるのを見た人が、思わず怒鳴った。

「あんな化け物の手を借りたのか?!」

 ダンは毅然として反論した。

「化け物では無く、竜です。あの竜は魔法道具の力でパインの装備の中に封じられていますが、竜自体は魔法道具では無くちゃんとした生き物です。それに、皆さんは勘違いしているようですが、魔法と、魔法道具とでは、根本的に性質が違う物なんです。だから、これは神事に対しての違反にはなっていません」

 この事は、ダンは確認していた。

 そもそも、魔法道具自体が希少なので、それを使って何かする事など想定もしていないのだから、禁止する決まりも作られていない。

 ダンに、そこまでキッパリと断言されると、適当な決まりしか覚えていなかった大人たちは黙るしか無かった。


「僕のせいで火事を起こしたのに、生意気な事を言ってすみません」

 ダンは大人たちに謝った。

「沢山の人に迷惑を掛けて、助けられて、何とかギリギリ形にしました。どうか不備は無いか確認して下さい」

 言われて、大人たちは改めて山車を確認する。


「ふむ。ちょっと雑ではあるが、炎の形を表現出来ているじゃないか」

「虎を乗せる土台もちゃんとあるな」

「思ったよりも丈夫だな・・・・・・。と言うか、かなり硬いけど、これは何で作ったんだ?これも魔法道具か?」

 山車を確認すると、大人たちの表情は徐々に明るくなっていく。

「それはマーメイドが協力してくれたもので、マーメイドの秘薬で固めてあります」

 ダンが情報をぼやかして伝える。

「ああ。坊主の店で働いているマーメイドだな。可愛らしいって女房が昨夜言っていたぞ」

「海の一族はあなどれんな~」


「おお?!軽い!!」

 1人が山車を軽く押してみたら、滑るように山車が進んだのでもの凄く驚く。

「本当か?!俺にもやらせろ!!」

「軽い!しかも、音が静かだし、なめらかだ!」

 大人たちが興奮する。

「この車輪は何だ?!少し浮いているぞ!?」

 二重の輪になっている外側の輪は、シャフトが接続されている内側の輪から、少し離れて浮いている状態である。

「これは。・・・・・・その。僕の車に使っていた車輪で、パインに作って貰った魔法道具です」

 少し前のダンは、人通りの激しい赤地区の坂道を、手作りの車で駆け下りる迷惑行為を繰り返していた事で有名だった。

「ああ。あのいたずらの成果がこれなのか」

 祭り担当の大人の一言に、他の大人たちも大声で笑った。

「こんな良い物が手に入ったなら、あのいたずらも、やった甲斐があったな」

「そりゃ、俺たちも怒ったりするけど、思い返せば、ガキの頃はそんな事ばっかりやってたからな」

 すっかり場の雰囲気は明るくなって、大人たちも嬉しそうに山車を見て話が盛り上がる。



「まあ、これならもう坊主の事を責める者はおらんよ。あの倉庫も、市長がもっと立派な物を作ってくれるらしいって、造船所の連中も喜んでいたからな」

「まあ、その。なんだ?・・・・・・あの魔具師の子も、祭りを楽しんでくれるといいな」

 最初に悪し様に「魔女」と言っていた人が、バツが悪そうに言う。


 そこで、ダンは、言うべきかどうか悩んでいた事を提案してみる。

「あの。先日は火事を起こしてしまいましたが、あの魔法道具は、以前にマイネーが見せてくれた炎の柱を、もっと綺麗に、派手に見せてくれる物なんです。だから、祭りの日の夜に、2発だけ空に打ち上げて良いでしょうか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ