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第8話  恐怖の魔女 4

 ダンは、いつも通り、最後にはパインの魔具店に行く。

「遅かったな、ダン」

 今日はパインは玄関近くに立っていた。

「お待たせ。もしかしてここで待っていたの?」

 ダンが尋ねると、パインは無表情で首を振る。

「たまたまここにいただけだ」

「フーン」

 ダンはそう言うと、パインと奥のカウンターまで行く。

「今日も変わりなかった?」

 ダンが尋ねたのは、客が来なかったのかと言う事だ。それに対して、パインは満足そうに頷く。

「変わりない」

 パインは店をやっているが、客が来る事は煩わしいとしか感じていないのだ。

「それってどうなんだろうね?」

 ダンは苦笑する。それから、パンと手に入れた酒をパインに渡す。


「ふむ。よかろう」

 酒を受け取ると、すぐにパインは額の目の封印を解いて、酒を瓶ごと吸い込む。

「そろったな」

 そう言うと、パインの額の目から、赤い光と共に、細長い筒が3本出現する。

 筒の材質がなんなのか、ダンには分からないが、光沢があって、それでいて金属のような冷たさは無い。

 大きさは長さが60センチ、太さが直径20センチ程になるだろう。それが3本である。


「これ、どうなっているの?」

 ダンはカウンターの上に出現した筒を1本手に取ると、筒の中をのぞき込む。

 しかし、筒の中はすぐに行き止まりになっている。逆さから見たが、やはりすぐに行き止まりになっている。

 筒の側面には、炎を象った模様が美しくあしらわれていて、その炎の向きから上下はわかる。

 そして、下の方には1本だけ紐が出ている。

「ふむ。これが『花火』だ」

「『花火』って、何だか素敵な響きだね」

 意外と重みのある筒を、クルクル回して眺めながらダンが言う。

「どうやって使うんだい?」

 ダンが尋ねると、パインが貰ったパンをかじりながら答える。

「下側面に紐があるだろう?それに火を点けると・・・・・・。アイ、ちょっと待て!ギイ!そのパンは私が食べる!」

 説明の途中で、パインはショルダーアーマーの中のアイとギイと、パンの取り合いを始める。


 しばらくダンは待っていたが、パンの取り合いは終わらない。

「火ねぇ・・・・・・」

 ダンはポケットに入れてあった「火付け棒」を取り出す。

 そして、スイッチを押して火を灯してみる。

 もちろんそれをいきなり紐に点火するような事はしなかった。

 しかし、紐の方は、ダンが思っていたよりも遥かに引火し易かったようで、火との距離は20センチ以上離れていたのに、パチッと小さな火花が紐から弾けた。

「え?!」

 ダンは驚く。その間にも、パチッ、パチッと火花の数が増えていく。

「うわっ!これ!!」

 悲鳴を上げた時には、紐からシュ~~~~ッと勢いよく火花が吹き出し、紐をどんどん燃やしていく。

「何だ?!これ!ヤバい!!」

 ダンは焦って筒の先をのぞき込む。

 

 ダーーーーーーーーーンッッッッッ!!!


 凄まじい爆音が、「パインパイン魔具店」周囲数キロに

渡って響き渡る。

 

 赤い火の玉が、魔具店の壁を突き破って飛翔し、ゾウ広場を横切り、造船所近くに落ちる。

 

 ズバババババババッッ!!

 

 再び連続した爆音が轟く。



 ダンは、無事だった。

 筒から火の玉が飛び出す寸前にパインが気付き、ギイが伸びて筒をダンの手からはじき飛ばし、盾のように広がって守ってくれたからだ。

 パインの身はアイが黒い体を大きく膨らませて守っていた。


「ど、どうなったの?!」

 耳の奥がガンガンとする中、ダンが呟く。

「マズいな」

 店の中は、火の粉が飛び散って数カ所から火の手が上がっていた。だが、パインはそれに構う事無くギイを使って凄まじい速度で店から飛び出して行った。

「パ、パイン!火事になってる!」

 ダンが叫んだ時、いつも来客を知らせるベルが光り、周囲の炎を吸い込んで消してしまった。

「ま、魔法道具だったの?!」

 ダンは驚きながらも、慌ててパインの後を追った。

 ダンがゾウ広場に出ると、向かいの造船所の隣にある小さな倉庫が激しく燃えていた。

 そして、すでに造船所にたどり着いていたパインは、ギイを大きく広げて、燃え上がる倉庫と造船所の間に立ち、造船所に火が燃え移るのを防いでいた。

 当然、炎がパインに襲いかかって来て、パインは炎の中に飲まれていく所だった。


「うわあああっっ!パイン!!」

 周囲からも大勢の人が集まる中、ダンも炎を吹き上げる倉庫に走る。

 倉庫から、カカカカカッと音がし、次の瞬間、倉庫は綺麗に内側に倒壊する。

 吹き上がる炎の熱で、人々は近付く事が出来ない。

 近くにいた冒険者たちが駆けつけてきて、人々を避難させたり、魔法使いが水魔法を使ったりする。


「下がってください!!」

 空から声がした。人々が見上げると、水色の髪の美しい女性が、空を滑って倉庫の上を旋回している。

 第一級神の水の女神ウテナだった。

 ウテナは足先だけに水を生成して、その上を滑って宙を移動していた。

 ウテナの指示に、冒険者たちが素早く反応して、人々を火災現場から遠ざける。



 ウテナはそれを確認してから、指先を燃えさかる炎に向ける。

 次の瞬間、倉庫の周囲一帯が水の玉に包まれた。直径30メートルになる水の球体は、その中で激しく渦を巻き、一瞬で炎を消し去ると、形を崩し、ザザザ~~~ッと広場の方にも流れて行った。


 ダンは、水の流れを気にせず、冒険者たちの間をすり抜けて倉庫の方に走っていく。

 炎に包まれたパインは、水の球体にも飲み込まれたのだ。無事でいるとは思えなかった。

 しかし、ダンの心配を余所に、びしょ濡れになったパインは、やけどどころか、煤一つ付かずに瓦礫と化した倉庫の跡から歩いて出て来た。

 左肩のギイはショルダーアーマーに戻っているが、クロヒョウのアイは、濡れた自分の体を迷惑そうになめている。

「パイン!パイン!!大丈夫なの?!」

 ダンが叫んでパインに駈け寄る。

「大丈夫じゃ無い。びしょ濡れだ」

 パインも、うんざりしたように白と黒の髪をかき上げる。


「魔女だ!!邪眼の魔女だ!!」

 髪をかき上げた事で目立った額の赤い目を見て誰かが叫んだ。

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