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第6話  素材集め 4

「どうした?」

 ダンが悩んでいると、パインが戸惑ったように尋ねてくる。

 ダンは力なく笑った。

「あはは・・・・・・。客としては、お金が払えないからさぁ~」

 素直に言った。

「金など何の役にもたたん。邪魔なだけだ。それよりもお菓子が欲しい」

 お金でお菓子を買えるのだと何度説明しても、パインはそれを理解しない。ここだけは奇妙なくらい理解できないようだ。

 あんまり言うと、「うううううううう~~~~」と、泣き出してしまうのだ。

 だからこそ、ダンが金銭面ではサポートしなければと思ったのだが、実際は何の役にも立てていない。そもそも、客が来ないし、来ても逃げて行ってしまう。

 ダンの書いた張り紙は、まだ役に立っていない。

 

 お金が無理なら、せめて何かパインの役に立てる事や、喜びそうな事をしてあげなければいけない。

「・・・・・・何も思い浮かばないや」

 頭をひねっても何も浮かばない。

「まあ、いいや。それより、パイン」

 ダンは話題を変える。

「何だ?」

 パインがさっそくクリームパンをかじりながら言う。

「夏祭りだけど、一緒に踊らないかい?」

 レオンハルトに言われたからでは無いが、パインも誘うつもりだった。

「ば、馬鹿者!!」

 珍しくパインが叫ぶ。

 しまった。怒らせたか。そう思ったが、パインは首を縦に振っている。

「良いに決まっている!それなら炎の魔法筒は作らねばいかんな!」

 意外な程積極的なパインに、ダンは驚く。


 これには理由がある。

 薬の一件のあと、いつも遊ぶみんなにダンはパインを紹介した。

 特に同じ年のネルケとは家も隣だし、仲良くして貰いたかった。

 果たして、思ったように2人は仲良くなったようだ。

 ・・・・・・仲良くはなったのだが、どうも張り合っている様な時がある。

 そして、昨日、ネルケは夏祭りの話をして、ダンと一緒に躍る約束をしたとパインに自慢したのだ。

 羨ましかったわけでは無いが、パインは何となく悔しかった。

 だから、ダンから誘ってきたのは嬉しかった。

 なぜなら、ネルケは自分から誘ったと言っていたからである。


「すまんが、素材集めを頼めるか?!」

 パインの勢いに、ダンは押され気味に頷く。

「も、勿論いいよ。でもお金が・・・・・・」

「私が作りたいのだから、金などいらん!」

 パインがここまで積極的に発言したり要求したりする事など無かったので、ダンは驚きながら頷く。

「わ、わかったよ!じゃあ、素材を集めてくるよ。それと、食料保存の魔法道具についても詳しく教えてくれるかい?」





 翌朝、ダンは学校に行く前に、肉屋のルッツの店に寄った。

 早朝の仕入れが終わって、今は開店前の準備をしている。

 肉屋では、開店すると同時に、昨日売れ残った肉の加工をし始める。

 そうすると、良い匂いが通りに流れ出す。

 

 この坂道は、パン屋、お菓子屋、食堂、宿屋、肉屋が並んでいるため、朝から食欲をそそられる良い香りがする有名なポイントだ。

「おはよう、ルッツ!」

 朝からダンが訪れるのは珍しいので、ルッツは少し意外そうな顔をする。

「よう、ダン。遅刻しねぇのか?」

 ダンが苦笑する。

「僕は遅刻した事、両手の数くらいしか無いよ」

「そりゃすげぇ。俺は遅刻の常習犯だったからな」

「自慢にならないよ」

「お前もな。遅刻はしちゃダメだろ!」


 そんなやり取りを楽しんだ後、ルッツが尋ねてくる。

「それよりどうした?良い嫁見つかったのか?」

「違うよ。ちょっと聞きたい事があるんだ」

 ダンは声を潜めて、店先から、店の中に入ってルッツの耳に口を寄せる。

「内緒の話なんだけど・・・・・・。肉が新鮮に保存できる魔法道具があったら欲しい?」

 ダンがそう言うと、何事かと思って聞いていたルッツが笑う。

「なんだそりゃ?!そんなもん欲しいに決まってるだろうが!」

「例えば、それが手に入るなら、どうする?」

 真剣な様子のダンに、ルッツは少しだけ真面目に考える。

「その魔法道具があったとして、どの位鮮度が持つのか、使用限度はどの位なのか?大きさとか、保存量とかによって違ってくるよな?」

 指摘されたことにダンは一々頷く。

 それから、更に声を潜めて、更に店の奥にルッツを押し込む。


「お、おいおい」

 ルッツは戸惑う。

「例えばだけどね。保存量はルッツの貯蔵室分で、鮮度は一ヶ月。使用限度は素材の補充を一ヶ月に一回するだけで、補充が出来れば限度無し。魔法道具の大きさは、このくらい」

 ダンは手で、分厚い本くらいのサイズを示す。

「いやいや!そりゃあすげぇよ。実際そんな物があったら欲しいよ。そうすりゃあ、俺も休日を作って嫁探しも自分で出来るよな」

 肉屋は基本的に休日は作れない。よほどの場合には、仕入れも、加工品の販売も諦めて店を閉める事になる。

 だが、肉の鮮度が保たれるならば、仕入れすぎとか、在庫とかを気にせず休日を設定できる。

「・・・・・・だけどな、ダン。そんな物あっても、俺には買えねぇよ」

 ルッツが苦笑する。完全に子どもの空想話を聞いている調子になっている。

「・・・・・・代金の代わりに、月に一回、一週間分のお肉を1人分用意してくれたら、その時に消耗品の補充も含めてやって貰えるとしたら?」

 その言葉に、ルッツはダンに顔を近付けて、睨み付けるように見て、牙を剥く。

「おいおい、ダン。お前、まさか、あの坂下の『邪眼の魔女』の事を言っているのか?」

 ダンは頷く。

「・・・・・・確かに、最初の頃と違って、この頃は良い噂も聞くが、俺は見かけただけで震えが来た。正直どこまで信用して良いのか分からねぇ」

 ルッツの言葉に、ダンは軽い失望を覚えた。するとルッツは慌てて言い訳のような言葉を言う。

「いやいや。俺もスプリガンだ!別に差別しようって言うわけじゃ無いけど、種族的に『魔女』って呼ばれている連中に良い印象が無いんだ!」

 スプリガンの多くの部族は、かつて人権が認められる前までは、魔女に奴隷として扱われ、人間からは魔女の手下として差別され、虐げられてきたのだ。


「じゃあ、今日の夕方、僕と一緒に魔法道具屋に行ってみようよ。・・・・・・まさか子どもが平気だって言うのに『怖い』って言うんじゃ無いよね?」

 そう言われると、ルッツも断る事が出来なくなった。


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