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ホワイトウィッチトライアル  作者: 初芽 楽
第4巻 迷子の魂
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エピローグ

 エレン達はリリーとフォルトナーの霊体を助け出した後、湖の岸辺で真守まもり達と合流した。そしてすぐに真守まもりが交霊会を行い、四人の霊体を霊界へ送った。結局、一人だけはこの世界に留まることになった。彼女の名前はシャーロット・フォルトナーであるらしく、彼女はこんなことをエレンに伝える。


「霊体として目覚めさせてくれたことには感謝する。しかし私はこれでは終われない。あなたはまだ真相に辿り着いていない」


 エレンもそれは分かっている。フォルトナー実験の全て理解しているのならば、シャーロットやフォルトナー四姉妹も霊界に行くことができるのだ。彼女達の肉体がどうなったのか等、解明すべき謎はまだ残っている。

 そしてシャーロットは寝ているリリーを見ながらこうも伝えた。


「私はしばらくこの娘に憑くことにする。安心しなさい。もうこの娘を支配するようなことはしない。他に行くところがないだけだ。それに、私がいることはこの娘にとっても都合の良いことなのだろう」


 シャーロットの言う通りだとエレンは考える。リリーの憑依状態については解決したが、エーテル欠乏症については何一つ解決していない。むしろリリーの肉体と魂の隙間を埋める霊体が激減したことで悪化したとも言えるだろう。


 そもそもフォルトナーの霊体との交霊会は、全員の霊体を霊界に送ることを前提とした作戦だった。霊体の認識を持った霊体は物質世界に長くとどまることはできない。リリーのエーテル欠乏症の治療のために霊体を残すという選択肢は捨てていた。


 もちろんエレン達はエーテル欠乏症の対策も考えていた。ミヨクと同じように夜刀神やとのかみのエーテルをリリーに繋げるということだ。しかしその方法を取るならばリリーは真守まもりやミヨクのすぐ近くで生活しなければならず、リリーの生活に大きな制限を加えることになる。シャーロットが夜刀神やとのかみのエーテルと同じような役割をになってくれるのならばリリーの自由が増えるだろう。


 エレンはシャーロットの提案に従うのが最善だと判断した。


「分かったわ。リリーが良いと言うのならだけど」

「そうだな」


 その後リリーが別荘で目を覚まし、エレンは交霊会の顛末てんまつとシャーロットの提案を彼女に話した。リリーがフォルトナーに再び憑依され、エレン達と戦闘を行ったことも包み隠さず語られたが、リリーは取り乱すことなく大人しく聞いていた。そしてシャーロットの提案もすんなりと承諾した。


 それどころかリリーは自分の胸を見ながら笑顔でこんなことを言っていた。


「これからもよろしくね。シャーロットさん」


 自分の身体を乗っ取り、命を危険に晒した張本人であったにもかかわらず、リリーにとっては既に友達なのだろう。彼女もフォルトナー家の霊体の事情をみ取ってくれたようだとエレンも安心した。


 とはいえシャーロットもいずれは霊界へ送らなければならない。それに『白い魔女』の魔術を行使しなければエーテルが減ることはないミヨクと違い、リリーはこれからもエーテルが減る可能性がある。エーテル欠乏症の治療方法を早く見つけなければならないことには変わりない。


 そして午前七時、ソニア達ヘンシェル教会が来た。ヘンシェル教会の到着を待たずに自分達で問題を解決しようとしたことをソニアに叱られたものの、最終的にはエレンとミヨクはリリーを救ったことを褒められ、後日ヘンシェル教会で表彰されることになった。


 リリーはヘンシェル教会の紹介でメイスラにある孤児院に転院することになった。ミディアムが多く、リリーと同じような被害に遭った人もいるようだ。きっと彼女にとってより良い環境となるだろう。リリーも転院を快く受け入れた。


 こうしてエレン達は無事にメイスラに帰って来た。紆余曲折うよきょくせつはあったものの、別荘に行った元々の目的もおおむね達成されたと言っていいだろう。飛行魔術は完成した。エーテル欠乏症を治療する手掛かりも、これからシャーロットの協力をあおいでいけば増えていくだろう。


 リリーや琴音ことね達と別れ、我が家に向かってメイスラの街道を歩いている時、エレンがフォルトナー四姉妹に話しかける。


「申し訳ないけど、あなた達の本当の家に帰るのはまだ先の話になりそうね」


 フォルトナー四姉妹にとって帰るべき家は、メイスラにあるゼーラー家ではなく、自分達の肉体だ。そこに帰るまでは、彼女達は未だに迷子だと言える。エレンは迷子を家まで送っている最中である。

 そこでエリザベスがこう伝える。


「いいよ。ご主人様」


 他の三人もエリザベスに同調するように首を縦に振った。エレンはそんな彼女達を見て微笑みを浮かべた。


「そうね。わざわざ言うことでもなかったわ」


 今のフォルトナー四姉妹はエレンの守護霊であり、従者であり、家族だ。彼女達が霊界に行くことができるようになるまでは、彼女達の帰る場所はエレンと同じだ。


 そんな話をしている内に、エレン達はゼーラー家の前まで来た。扉を開けて、今は家にエレン達の帰りを待つ人がいるわけではないのだが、それでも言う。


「ただいま」


 これからみんなと楽しい生活を送れるように、フォルトナー四姉妹が本当の家を見つけた時に気持ちよく言えるように――。

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