魔導士ホワイト
魔導士ホワイト
ツタン帝国の最大魔力保持者ホワイトは苦しんでいた。彼女は魔力を戦争の道具として使用したくなかった。しかしツタン帝国は妹を人質として戦闘への参加を強要した。
ホワイトの特性は風と雷である。己の力で人を殺めるのが辛く悲しく、どうしようもなかった。妹1人に犠牲になってもらえば他の人間を殺さずに済むのであるが、そんな計算のうえ割り切れることではない。
この苦しみから逃れるため自殺しようとしたが、「お前が死ねば妹を殺す」と言われてしまった。私はどうすれば良いのだろう。
ツタン帝国の議会から次の命令が下った。裏切者のレッドを見つけ出し殺せとの指示だ。
レッドを殺した暁には、妹を人質から解放してやるとの条件が付けられた。
レッドは、なぜかブルー及びイエローも殺したようだ。何があったかは分からないがよっぽどのことであろう。あれほどまでにツタン帝国に貢献してきたのだから。
レッドの情報をキャスターから聞くに、ブルーもイエローもどうやらカメール王国の次期王女のアリシアを殺す目前で対決になったらしい。どうやらレッドはアリシアを守るために反旗を翻したようだ。
そして、キャスターからとんでもない情報がもたらされた。
このことはツタン帝国の議会にも知らされていないことだが、なんとレッドはもともとツタン帝国の民ではなくカメール王国の兵士を改造したとのこと。
当時記憶をなくしていたので、実験していくうちに頭角を現しツタン帝国の戦士に数えられるまでになったのだが、どうやら最近記憶を取り戻したのだろう。
それならば、現在の彼の行動の意味がすべて理解できる。レッドは本来の“彼”に戻ったのだ。
敵ながら同情すべきことだらけだ。自分の意志とは関係ないところで戦地に送り込まれる兵士の気持ちなど、腐った連中には一生分からないのだろう。
ホワイトはレッドを殺せるか、殺す覚悟が自分にあるのかわからないまま、アリシアがいる戦地に向かうのだった。