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呪われたカメラ②

 カメラから出た写真に令嬢が写っているのを見た瞬間、俺は悪寒が走り、カメラから遠ざかるが後ろには壁があり勢いよく壁にぶつかってしまった。背中の痛みのおかげで少し冷静になった俺はおそるおそる出てきた写真を見る。

 俺の後ろには白いワンピースを着た女性が立っていた。彼女の顔は俺の体に隠れてしまい伺うことは出来ない。俺はすぐに幻中に電話をかける。数コールなってもあいつは出てこない。どうするべきだろうか。とにかくはこのままカメラを出しときたくはないので、なにかにしまってしまおう。

 すぐさま手頃な袋がないのか、部屋を漁る。するとちょうどよいところに先日もらったお菓子の紙袋があった。これに入れてしまおう。そして触りたくはないが、致し方ないとカメラを手に取り袋に入れようとすると、数回シャッター音が勝手になる。今俺の指はカメラのシャッターに触れていない。出てきた三枚の写真が足元に落ちる。現像された写真には俺の後ろに手を伸ばす彼女の姿があるのだ。

「・・・・・・」

 この時、俺の精神は限界を超えてしまい、気を失ってしまった。


 それからどれくらいの時間がたったのか、目が覚めると床に仰向けになって寝ていたことに気付く。体を起こして時計を見るが、一時間程度しかたっていない。また体に痛みは感じられない。思っていたよりも気を失うぎりぎりでゆっくりと倒れることでも出来たのだろうか。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。すぐにカメラをしまわないといけない。そう思い、近くに落ちているであろうカメラを俺は探し始める。

「あれ・・・カメラがない?」

 なぜかカメラがどこにもないのだ。俺が気を失うまで持っていたのだ。遠くに転がることなんてありない。しかし俺の近くにカメラは見当たらないのだ。これはどういうことなのか。不可解な状況に混乱している。

 その時、俺はふと自分の後ろに誰かいるのを感じた。別に人の影が見えたとかではない。ただ直感で後ろに誰かいるのではないかと思う。俺はゆっくりと後ろを振り返る。それと同時にもしものことがあった際にすぐに動けるようにしゃがんでいた状態から徐々に立ち上がろうとする。

 しかし俺が振り返るよりも前に、そいつは俺の肩に手を置いてきたのだ。背筋が凍る。怖くて後ろを振り向くことが出来ない。俺が固まったままでいると、そいつは俺に顔を近づけてくる。

「見て」

 その声は女性の声であったのだ。頭の中に直接話されているかのような奇妙な感覚だ。俺はその時何を思ったのかふと女性の方を振り向こうとした。しかしその瞬間俺は意識の世界から現実に引き戻される事になったのだ。

 目が覚めると、俺は先ほどの夢の中と同じように床に仰向けで寝ていた。とりあえず起き上がると、外がすでに明るい。時間を見ると、すでに日をまたいで朝の8時であった。昨日は疲れていたこともあったが、まさか気を失ってそのまま寝てしまうとは。

俺はカメラを探そうと辺りを見渡す。カメラが周りに見当たらない。ベッドの下にでも落としたのか探してみると、思っていたとおりベッド下の奥に転がっていた。手を伸ばしカメラを取って、傷がないか確認する。すると部屋のチャイムがなる。こんな早い時間に誰なのかと思い、ドアの覗き穴から訪問者を確認する。見るとそこには眠そうにあくびをしている幻中が立っている。俺はすぐにロックを外して、ドアを開ける。

「おはよう。まさかこんな朝早くに来てくれるとは」

「写野、おはよう。昨日の電話から早めに来た方が良いかなと思ってな。何も無かったか?」

「いや・・・何も無かったわけではないな。とりあえず入ってくれ」

 幻中を中に入れ、俺は昨日起きた出来事について話始める。幻中は俺の話を興味深そうに聞いていた。俺が持っている写真を見せると、幻中はまじまじと写真を見つめているのだ。どうやらカメラの不具合で撮れてしまったものなのか気になったらしい。だがもう俺には昨日の夢のせいで偽物とは思えない。

「どうだ?本物だと思うか?」

「正直俺もこれだけ見ただけじゃ分からないな。それにお前が見た夢の話についてもだ。写野には悪いが、居間の俺には恐怖心から見てしまったものなのかという考えは捨てきれないな。夢の中だとなんて言われたんだ?」

「ただ、「見て」と言われただけだ」

幻中は「何を伝えようとしているのか、もう少し情報は欲しいよな」と呟きながらカメラを手に持って、レンズを俺に向けて写真を撮る。フラッシュが炊かれていたせいで、眩しさで俺は手で目を隠す。

 出てきた写真を幻中が確認すると、幻中はなぜか気まずそうな顔をする。まさかまた俺の後ろに彼女が映ったとでもいうのか。

 俺は幻中に「おい。見せてくれ」と尋ねると、幻中は首を縦に振り、俺に写真を見せてくる。

 渡された写真には令嬢が、眩しそうにフラッシュの光に対して手で顔を覆う俺の後ろに立っていた。 

 目の前で起こった現象に幻中もこのカメラが本物であることを信じざるを得なかった。

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