出立
懐かしい夢を見た。なんてことのない過去の記憶だ。
昔遊んだ公園で、みんなと一緒に遊んでいる夢。何の変哲もない変わり映えのしなかった、それでも楽しかった日々を見ていた。
今は何をしているんだろうか。あの時の約束を覚えているだろうか。もし会えたら、何を話そうか。あの時交わした約束を覚えているだろうか。
このままじゃだめだ。
肌寒さを感じて、目を覚ます。まだ寝起きで身体のあちらこちらが機能していない。頭痛を振り払うように伸びをして、ふと気づく。ツァーラさんがいない。
昨晩寝る前は火を挟んで目の前にいたのに、今はどこにもいない。どころか火も消えている。
「ツァーラさん?」
どこへ行ってしまったのか、全く見当がつかない。焚火の残骸に少し触れてみる。まだ温かい、どころか熱いくらいで火を消したのはそれほど経っていないのかもしれない。
俺はこの場合、ツァーラさんを探しに行くべきなのか、それとも待つべきなのかがわからない。どうしようかと迷っていると、足音が一つ聞こえてきた。そちらの方に目をやるとツァーラさんがいた。
「おぉ、起きてたか。じゃあ朝ごはんにしよう」
そういうツァーラさんの手には、激しく暴れまわる兎がいた。
「あの、その手に持っているのは?」
「ん? あぁこれは今日の売り物だ。これを使って君の装備を買う」
よくわからないから、はぁそうですか。としか言えない。ツァーラさん自身が何も不思議なことではないようにしているから、余計に聞きずらいし、よく思い出してみれば、兎を生でみるのが初めてではないが、そんな風になっているのは少しだけ痛々しく思えた。
「まあいい、とりあえず朝ごはんにしよう」
暴れまわっていた兎は縛り付けられおとなしくなっていた。そんなものを視界に入れながら食べる干し肉は少しだけ食べずらかった。
「そういえば、これからのことを話してなかったな。私たちはこれからアイレスに向かおうと思う。
あそこはここら辺では一番栄えているからな。何かと都合がいいだろう」
「すいません。なにからなにまでお世話になりっぱなしで」
「いや、いいよ。乗り掛かった舟だし、私も一人旅には少々飽きてきたところだしね」
そういってくれるのはありがたかった。何もわからない土地で、何もわからない世界でたった一人というのは、俺では心が折れていたことだろう。
ツァーラさんとの出会いに感謝しながら、彼女についていった。
本当にこれでええんか?
ま、大丈夫っしょの精神で、ほかでもない俺の為に書き続けます。
頑張りまーす