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隣の変な奴  作者: 藤雲あさぎ
第三幕
25/31

文化祭☆約束

 気まぐれ、としか言いようがない。普段スケジュールに組み込まれていない学校に行けば、少しは刺激があるかもと、ただそれだけだった。


「おはよう良い朝だねはじめましてあたしせいら、君の名前は?」

 新種の生物に出会った。


 名前も顔も知らなかったが、こいつが噂の変人だと、すぐに理解した。なんたって最速記録で噂になった人物だ。両の手で数えられるほどしか出席していない自分でも、入学早々校長室に忍び込んだアホの話はさすがに耳に入っている。

「澤平……斗真」

「斗真、早速なんだけどあたしと遊ばない?」

「あそ……なに?」


 そうして突然現れた自分のもとに神谷せいらは突然現れ、毎休み時間付け回されるはめになった。

 はじめこそ興味があったものの、四時間目を過ぎたあたりでもうへとへとだった。

 なぜみんな同情の視線をよこすのか。それが分かったところで、帰ることにした。


 だけどその日は、突然変異としか思えない奴だけが収穫ではなかった。

 文化祭、か。

 学校中その話題で持ちきりだ。どうやら桃太郎を演じるらしい。

 イベント行事は嫌いだ。自分はいっこうに楽しいと感じることがないのに、周りは盛り上がる。全校生徒のみなさん折り鶴を折りましょう、と言われて、ひゃっほう折るの楽しみ! となるだろうか。ならない。

 学校からの手紙なんて読まないから、文化祭の存在をトンと忘れていた。嫌な時期に来てしまったと後悔する。

 気分がささくれ立ってくる。

「……ぶっ壊してやろうか」

 呟きは誰にも聞かれることはない。


 しかし言ってから、ほんとにそうしようかと考えた。でもそんなことしたらただでは済まない。それでもいい?

 自分にとってこの世界は、現実に娯楽がなさすぎる。

 だって中学最後の文化祭なんでしょう? このまま流されて終わりにするもしないも自分次第。この学校で行動を起こすならただひとり、自分だけ。待てど暮らせど来ないものは、自分で作って掴むしかない。

 なら、やってみようか。

 帰宅途中のつま先は、気づけば学校を向いていた。

 


 五時間目終了のチャイムが鳴って。

 校門を再びくぐったら、「ねぇ」と声が降ってきた。

 銅像の肩に腰掛けるというあり得ないことをするのは奴だけだ。

 ぴょんと飛び降りると、謎の生命体は言った。

「今日の放課後、放送室前に集合ね。遊ぼう」

「却下」

 とすぐに返事をしそうになって、待てよ、と思いとどまる。

 こいつ、隣のクラスだよね……。

 それに放送室には、演劇で使うだろう機材があるはずだ。

 三秒のち、「いいよ」と頷く。

 使えるものは使う主義だ。

 


 さて、放送室にて奴と対峙した。

 しかしその前に疑問を解決したい。

「あんた、なんでオレに付き纏うの。今まで接点なんて無かったよね」

「え? 友達とは遊ぶものでしょ?」

「いつ友達になったのかって聞いてんの」

「友達ってのはある時点からなるものじゃないよ」

「話通じないなぁ……!」

 こいつはダメかもしれない。使おうとしたことが間違いのような気がしてきた。

 でもこいつがいる前で犯行は起こせない。なんとか共犯にしたい。

「ねぇ。友達は友達でも、盟友って知ってる?」

「固い約束を結んだ仲」

「そう。ところであんた、口は堅い?」

「あたしは約束したことは絶対守るよ」

「そっか。で、オレたちさ、」


 悪い笑みにならないように。うわべだけは友好的に。

「盟友にならない?」


 そうして、右手を差し出す。

 その手を神谷せいらは数秒見つめたあと、「じゃあ」と言った。

「盟友になれば遊んでくれる?」

 交換条件か。やむを得まい。

「いいよ。オレと遊ぼう」

 すると、布に水が染みていくように、奴の顔にじんわり笑みが広がった。

 

 約束したことは三つ。——自分が放送室に来たことは誰にも言わないこと。鍵は変人が借りて、返却すること。CDを割ったのは神谷せいらだって証言すること。

 

 これでいい。二組のを割ることで、この事件を自分のクラスの生徒は気に留めることもない。二組が意図的に割られたのではと勘繰っても、真相にはたどり着かない。不思議人間が盾となる。

 さぁこれであとはボロが出ないように家に居続けるだけだ。——文化祭まで。


 これは前菜にすぎない。メインはお祭り当日だ。

 自分の命を賭けた勝負。何もなく飛び降りるか、それとも。

カクヨムのほうで本作は完結しました。わーい。


次話から、1日1話ずつ更新予定です。つまり明日から!

時間は朝8時。お楽しみに!

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