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第一章8『ワンオブザチルドレン』

  瞼が重い。それに身体のあちこちが筋肉痛になっている。

洛錬がゆっくりと目を開くと木でできている知らない天井がそこにはあった。周りの壁も同じく木造で、辺りから出てくる木の良い香りが自然と鼻に入ってきた。

 

「スースー。」

—うん、誰かいるのか?

 目線を下にずらすとそこにはさっきまで一緒にいた女騎士で無い別の女性がそこにいた。

 その女性は金髪で、服装は教会にいそうな修道服でいる。

—うわーこの人も凄く可愛いなー!


 いや、今はそれより優先すべきことがある。そう、ここはどこなのかだ。勿論この建物の事ではなくこの世界についてだ。何度も自分の頭の中で自問自答を繰り返す。

 さっき水色髪の子が魔法を使ってたし、あのおっちゃんも異世界って言ってたし、やっぱりここはアニメとかゲームとかでありがちな異世界ってことなのか?いやだとしても指輪だけであんな化け物がごまんといる世界で戦えるのか?


—いや、絶対無理だろ。多分次戦う機会でもあったらもう俺は...


「あっ、目が覚めましたか~?良かったですちゃんと目覚めましたねー。多分怪我は完全に治ってると思うので、もう歩いたりもできると思いますよー。それとトワが待ってると思うので食堂まで行ってくださいね。」

 そう話す彼女の声は甘く優しそうな雰囲気を十二分に発していてとても可愛い。が、それよりも驚かせられる光景がそこにはあった。左目はその髪色に似合う綺麗な金色の目だったが、それに対し右目は闇を見つめているような真っ黒な目だった。

 —義眼...なのか?いや異世界だったらオッドアイでもあり得なくは無いのか。うん多分。

「そんなに私を見つめて何かありましたか?」

「いや、いえ何でもないです。」

「あっもしかして私の名前でも気になるんですかー?私の名前は『シス=カバリー』と言います。是非シスお姉ちゃんと呼んでくださいね。」

 そう言って彼女は人差し指を顔に近づけて右目で軽くウィンクをしてそう言った。

「じゃ、じゃあシスさんで良いですか?」

「う~ん、もうお姉ちゃんなのに...。なんで皆呼んでくれないのだろう…。」

  物寂しそうに小声でぼやく。

「もう仕方ないですね、取り敢えず時間が無いんで食堂まで向かってください。」

「分かりましたシスさん。」


 ベットから立ち上がる。自分の身体の辺りを見渡すと服は所々破れているが傷は一つも付いていない。脱臼していたはずの左腕も本調子に戻っている。最初に付いていた額の怪我も完全に治っていた。

—凄げー!!やっぱり魔法とかなのかな?

「あ!言うのが遅れてすいません。シスさん、俺の体を治してくれてありがとうございます。じゃあそろそろ行きますね。」

 お辞儀をしてこの部屋を後にする。

「私、お姉ちゃんなのに...。」

後ろからそう小声でぼやいた気がしたが取り敢えず気にせず部屋を出た。



 部屋を出るとそこには10、20、30…50と左右に沢山の扉が並んでいた。

 廊下の横幅は人が5人並んで歩けるほど広く、歩くたびに床の軋む音が聞こえる。壁には燃え移らないようにした蝋燭が立てかかっている。

—えっと、食堂ってどこー?ここ広くて分からないんだけど。うんまあ、取り敢えず歩くか。


「お~い、こっちだぞ!分からないのか~?」

  廊下の一番奥の右側の扉から明るい声が聞こえた。

—良かった元気そうな声だ。多分彼女も治してもらったのかな?


 部屋の奥まで進んで、木で出来たドアノブに手をかける。

『ギギー』


「失礼しま...」

  言葉を失った。彼女を見ると、右肩から脇腹にかけてが包帯でグルングルン巻きになっていた。

—何で?俺は完全に治してもらったのに何で彼女はそのままなんだ?

 洛錬がそうこう考えているうちに、彼女は困ったような様子で口を開いた。

「どうした、そこに突っ立っているのではなく早く座らないか。飯が覚めてしまうぞ。」

と、椅子に座るよう促す。

  怪我の状態は後で聞こう。取り敢えず今は彼女の言葉に従っておくか。

「はい!今行きます。」

  そう言って洛錬は食卓にダッシュで向かった。

 多分食堂であろうこの部屋はかなり広く、机と椅子が大量に置かれていて100人以上が余裕で座れる程だった。食卓にはパンとポタージュスープみたいなやつと何か良く分からない肉で出来たステーキが並んでいた。

 うわ、めっちゃ美味そうだな!!いやでも何の肉で出来ているんだ?ちょっと怖いな、もしかしたらヤバい肉とかじゃ...








—20分後

 

 美味い!!何だこの肉は新しいのに何か慣れ親しんだようなこの味は。やっぱり促されるがままに食ってみるものだな。あれ、何で彼女はちょっと二ヤ付いているんだ?

「ふっ美味いだろうそれは。何といっても私が作ったからな。」

 洛錬が思っていたことが顔にでも出ていたのか、洛錬言うより先に彼女が話していた。

「はい!確かにこれ凄く美味いですね!ちなみに何の肉を使っているんですか?」

「えっと、普通に牛だぞ。そんなに珍しいものだったか?」 

  いや~おっかしいな、確かに牛って言われたら牛っぽいけど何かちょっとだけ違う気もするんだよな。

「いや別に何でもないですよ。」


「そ、そうかではそろそろ本題に移るとするぞ。」

  顔色がまた一段と真剣になった。

「今回の戦い感謝するぞ。何と言ってもあのバイターを一体倒したのだからな。」

「『あの』って、そんなにヤバい奴だったんですか?」

「ああそうだ。あれは10年前、シアナ国への遠征のことだ。奴らバイター達の軍団による被害として第一師団の2割、2000人ほどが喰われたと言われている。」

 えっ、軍団だと...あんな奴が大量にいたというのか?

「あいつ等が複数体いたって言うんですか?」

「ああ、その遠征の時には50体ほどいたらしいからな。まあ、いたと言っても今回は5体しか現れなかったし、君が倒した奴は私が聞いていたその特徴に合わない、特異的な強さを誇っていたがな。」


 彼女の右手は強く握りしめられており、微かに震えていた。

―あいつはバイターの中でも特別だったっていうのか。でも、特別だとしても似たような奴が50体もいる 世界じゃあ、俺の行き来するだけに過ぎないこの力なんて敵わないだろ...。

「何か他に聞きたいことはあるか?」

「えっと…」




一時間後


彼女から聞いた話はどれも興味深く、ここが異世界であることを確証づけるものばかりだった。

まずこの国について聞いた所、この国は『北のノーマリ』『中心のリーシウ』『南のナイシア』の3つの巨大な島で出来ているらしい。で、今俺たちがいるのがナイシア島の最北端、『カロク』という防衛都市の郊外らしい。更にここナイシア島は海の向こうにある『獣人国家シアナ』に10年前から占領されてしまっているらしい。


 次にその国の人達の特徴について聞いた所、人口の約6割ほどが顔や体の機能がまるっきり獣である、『完全獣人』と呼ばれるらしい。そして約3割が耳やしっぽ、羽などの一部のみが獣になっている『半獣人』で、それ以外が人間という三つに分かれているそうだ。

ちなみにバイターは誰かの魔法で作られた使い魔だと言っていた。

 

「他に何か質問したいことはあるか?」

  う~ん何かあるかな~。いやそうだな...

「あの、魔法ってどうやって使うんですか?」

「そうか魔法についてか~。う~んなるほど魔法か~。」

  そう言って腕を組んで悩んでいる。

「まあ説明しても良いんだが、説明したところで一日二日で使いこなせる者はいなかったからな。説明はまた今度で構わないか?」

「は、はい分かりました。」

 あー残念だな。魔法が使えるんだったら俺も戦いようがあったかもしれないのに。このまま戦うことなんてあったら俺はもう参加なんてしたくないんだけど...。



  いつの間にか彼女の視線の先は洛錬の頭の上になっていた。

 —うんどうした?俺の頭の上に何か付いてい...


「おーいトワ、俺を呼びたかったらちゃんと呼べよなー。」

  後ろからそう突然声が聞こえた。低い声恐らく男だろう。後ろを振り返ると確かに茶髪の多少筋肉質の男が腕を組んで立っていた。

―は?いつの間に俺の背後に!?

「うん、どうした君。何でそんなに驚いたような顔をしているんだ。」

 今気づいた。どうやら俺は口をあんぐりと開けて馬鹿らしい姿を晒してしまっていたらしい。

「ああそうだな、そうだよな。さっきトワから聞いた限り君は民間人だったな。まあ、だったら気配消しの訓練も受けていないから看破出来なくても仕方が無いか。」

 と言って腕を顎下まで持ってくる。

「いや待てキャス、それはキャスの気配消しが特段特別なだけだろ。私は勿論大半の奴は使えるが、あれほどの使い手はお前しかいないだろ。そんな意地悪な事を言うなんて感心せんぞ。」

 彼女の方に目線を移すと、髪を掻き揚げて呆れかえったような顔をしている。

―正直可愛い。


「ってかトワ、さっきからのお前の口調、あれなんなんだよww。普段俺と話しているときはあんな口調じゃねぇじゃん。何、あのザ・女騎士みたいなのは。ヤベーマジ笑えるww。」

  後ろにいる茶髪男は腹を抱えて笑っている。

「ねーもーキャスってば、お願いだからばらさないでよー。今の今まで結構上手く女騎士を演じていたのにー。っていうか私普段からシスとニヒルとあんたの前以外では普段からあんな感じの口調じゃない。ねえ、もう少しぐらい隠すのを手伝ってくれても良いと思うんだけど!!」

 目の前にいる彼女は机に手をかけて立ち上がって抗議していた。

 

 うんどうしたー、彼女のイメージが音を立てて崩れたんだが。もう少ししっかりしていると思ってたんだけど...。何をどこで間違えたー?

「まあ言ってしまったことはしゃあないだろ。っていうかお前名前をまだ言ってねーじゃん。人としてめっちゃ失礼だぞ~。」

 彼女は悔しそうな顔をして右手で拳を握りながら口を開いた。

「クッ...私は『トワ=スレンド』よ。皆からは『トワ』と呼ばれているわ。どっかのムカつく奴みたいな感じじゃないなら全然ため口で良いわよ。っていうか誰もいない所で畏まるのは面倒くさいからやめてね。」

喋っているうちに彼女の顔には笑みが戻っていた。

 素の感情から見せる彼女の顔は凄く可愛い。

「分かり...分かった、そうさせてもらうとするよ。」

彼女、いやトワは満面の笑みで頷いてくれた。


次に後ろの男が自分のことを語りだした。

「で、俺の名前は『キャス=ルー』だ。俺はこいつとかからは『キャス』と名前で呼ばれているよ。まあ俺は何と呼んでもらっても別に構わないし、ため口で良いからなー。」

軽く言ってキャスは笑っていた。

 そんな自分のことを『キャス』と名乗る男の見て呉れは、トワから感じ取れるような凛とした騎士のようなものではない。それはお世辞にもトワよりも強いと思えるようなソレでは無かった。



―あっ俺も名乗らないと失礼だよな。

「ああ分かったよ。ちなみに俺の名前は『倉井洛錬』だ。まあ名前がかなり長いから皆からは『ラク』と呼ばれているよ。」

そうラクが自分の名前を言うと、キャスは右手を突き出してきた。


 握手をすれば良いのだろうか。と、頭の中に一つの感想が生まれる。

 そうしてラクは椅子から立ち上がり、キャスと同じように右手を突き出して握手をした。

「ラク、今回はどうもありがとう。俺がなかなか戻れなかったばかりにうちのトワが死にかけてしまったからな。」

―い、いやそんなに畏まらないでくれ。トワが死にかけてしまったのは元はと言えば俺のせいなんだから...。

「うんどうしたそんな顔をしているんだ?」

「あの、トワが死にかけたのは俺が悪...」

「うん?聞こえないな。そんなことより、これからの戦いよろしく頼むよ。」

 

 —―っつ、、、はっ!!


 キャスは今確かに『これからの戦いよろしく頼むよ』と言った。聞き間違えなんかのハズは無い。だが明らかに俺には似合わない言葉だ。バイターを倒すのも一体が限界で、それに、俺はただの男子高校生だ。


 

 焦ってトワの方に顔を向けると、彼女は困り顔をして口を開いた。

「えっとラク、まだ言ってなかったっけ?一つお願いがあるの。どうか私たちのチームに入って欲しいの。そう、私たちのチーム『ワンオブザチルドレン』に!」


すみません説明回です。

一つでも良いので☆☆☆☆☆に色を付けて頂けると幸いです。

また、よろしければブックマーク登録や感想を頂けると嬉しいです!!!!!!!!!!!!!

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