第一章6 『締まらない勝利』
第一章6 締まらない勝利
『カァーカァーカァーカァー』
『プップー』
聞き慣れた何気ない日常の音。この少しくすんだ空気。つまり俺は
「帰ってきたのか…?」
でも何で?俺は『指パッチン』なんてしていないのにどうして帰ってこれたんだ?
体のいたるところが死ぬほど痛い。体を見ると手足に無数の切り傷ができており顔に至っては右頬辺りが大きく火傷している。左肩も脱臼したままだ。
周りは既に日が沈み始め、辺りが黄みがかっている。帰宅ラッシュなのか、通りの車の量も増えてきた。
手前にいた赤い車が洛錬の目の前に停まり、運転席の窓が開いた。
「オイそこの坊主、突然車道に出てくるなんて危ない...っておいおいその体大丈夫かよ。体のあちこちが怪我しているぞ。待ってろ、今救急車を呼ぶからな。」
目の前のスキンヘッドに黒いサングラスをかけた褐色気味のおじさんが、カバンからスマホを取り出した。
「あ、ありがとうございます。でも全然救急車なんて大丈夫なので。」
そう一言告げて洛錬は足を最初にいた路地に足を引きずりながら向かう。後ろからおじさんが「オイオイ大丈夫な訳無いだろ」とぼやいてくれたのが微かに聞こえた。
「ハア、ハア、ハア」
何とか路地裏まで着いたか、よし早く向こうに行ってあの後どうなったかちゃんと自分の目で確かめないと。それに彼女の様態も気になるしな。
脱臼してダラーンと宙ぶらりんになっている左腕に力を込めてどうにか『指パッチン』をした。
『パスッ』
この足場、それにこの何もない景色ってことはつまり
「戻ってきたのか...」
目線のかなり先30m程のところには植物の化け物がいたであろう爆散した死体と、黄緑色の液が辺り一帯に散らばっているのが見えた。
うわーグロいなー。っていうか良くこんな化け物を倒せたな俺。いや、でも次はもう無いだろーな。それに彼女が助かっているんだったらもうこれ以上戦いたくな...
—ハッ
『ドスン、ドスン』
考えている内に後ろから重い足音が聞こえる。
ヤバい、また新しい怪物か?今何かヤバい奴が来たら絶対に助からないぞ。あ、来る...
「おーい大丈夫かー?全然出てこないから心配したぞ。待っておいてくれよあと5分もしないうちに増援が来るからな。」
明るい元気な声だった。
良かったー彼女だったか。
そう思うや否や体の力が一気に抜け疲労感がどっと振り込んで来た。
「ありがとうございます。それより俺なんかよりもあなたの方こそ右肩から大量に血が出ているのですけど大丈夫なんですか?」
彼女の元気な声と裏腹に怪我の様子はかなり悪い。さっきよりも怪我の様子よりも悪く右肘の手前までが溶けてただれている。普通の人だったらその痛みにぶっ倒れてもおかしくない状態だった。
「うん私か?まあ大丈夫だ。増援が来るまでは耐えれるだろうし、それに私は鍛え方がそこら辺の人とは全然違うからな。」
彼女は左手を腰に当てて軽口をはく時のようなテンション感で話している。
もしかして俺を心配させないように元気に話してくれているんじゃ…本当に優しい人だな。俺も彼女の優しさに答えないとな。
洛錬の顔には自然と笑顔が灯っていた。
「なら…良かったです。俺も五体満足でこの通り元気で...」
あれ本気で力が抜けてきた。あれヤバい意識が意識も抜けてき...
―バタン
最後に見えたのが彼女の焦った姿だった。
ああ本当に可愛いな。
「おい大丈夫か。おい、目を空けろ!」
あー何か言ってくれてるんだろうな。もしかして心配でもしてくれてるのかな?でも何も聞こえねーや。
「やっと来たか、おいこっちだ!早くこっちに人を寄こせ。早く至急だ!!」
そうして俺の周りに人が集まってくるのを感じ...
あっ意識が...。
次回主人公出ないです。
できればもっと多くの人に見てもらいたいので、
一つでも良いので☆☆☆☆☆に色を付けて頂けると幸いです。
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