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第一章5 『無双とはかけ離れた戦い』

 奴の、バイターの顔を見る。そこには口が4つと、腕の代わりの枝が10本あって5本の触手を振り回して自分の枝を持て余している。

 —正直怖い—


 そう思いつつ足を一歩繰り出す。

 —やっぱ怖い。—

 また一歩繰り出す。

 —もしかしたら死ぬかもしれない。—

 さらに一歩繰り出す。

 —口から心臓が出てきそうだ。—


 そうして彼奴との距離がぐっと近づいていく。

 

 —―でも、でも



          —戦うんだ—



 そうしてまた一歩繰り出す。


 いいか俺、アイツの顔をちゃんと見るんだ。俺がアイツの攻撃を避けながら戦うには『指パッチン』をする以外にない。だからちゃんと見ろ、目を開けろ

「開けろ!!」

 洛連は額の血を拭った後、自分を鼓舞するために叫んだ。


 洛錬が自分を鼓舞するのに対し、奴は余裕なのか薄ら笑いをしたままこっちに枝を飛ばしてくる。

 まだだ、まだ、まだ、もう少しギリギリまで引き付けろ。そうしないと軌道を変えられて終わりだ。それと俺、左手は『指パッチン』の状態にしておくんだ。


 突然一瞬、いや永遠とも思える間、奴の動きがスローモーションの様に見えてきた。

 は?どうした何が起こっているんだ?

 いや行ける。これなら生ける。活ける。逝ける。往ける。いける。イケル。良く逝く好く善く往く育衣玖行くいくイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイク


 アイツの顔しか見えないし、何か頭いかれてきたし、こりゃあ大量のドーパミンが入っているな。それに集中力がいつもの10倍は優に超えているな。一般的に言うゾーンってやつかヤベーな。まさかこんな時に、いやこんな時だからゾーンになったのか?

 そんな風に客観的に物事を考えられる自分と、今の状況に恐怖や絶望、興奮といった感情を渦巻いると

感じる自分もそこにはあった。

 そうこう思っているうちに枝が近づいて…..。

「今だ!!」

『パチン』



 瞬きをする間も無く辺りの様子が変わっていた。

『ブーン、プップー』

『バサバサバサ』

 車の走る音と鳥の羽ばたく音が聞こえた。足の感覚も岩からアスファルトに変わっていて後ろを振り返ると骨董屋であろう店の後ろ姿があった。

 戻ってきたのか…?

「いや、まだだ!」

『パチン』


 足の感覚がアスファルトから岩に変わった。

 あと25m


 目線の先にいる奴は狐につままれたかのように真ん中の首?をかしげている。が、こっちを注視し続けていた。その後すぐに意識を戦いに戻したのか、今度は口を三つ飛ばしてきた。

 来た来た来た口だ!確かあそこにこのサイコロ爆弾を入れれば良いんだよな。いや駄目だ、口を開いていないし速度が速すぎる。これじゃあ入れられそうにないな。なら本体に付いている口の方に入れるしか無いか。なら走れ、俺――。

「グウェアボアジャダァヴァ~~~~~~~~」

 奴は三つの口を後ろに下げた後、口から黄緑色の液体を吐き出してきた。

 これが彼女が受けてしまった酸?みたいなやつか、さあ来るぞいまだ気張れー!

 今洛錬の目はギラギラと逝っている。

「今だ—―!」

『バチン』


 洛錬は現代に戻ってからも足を駆け続けた。

「そこのお前車道を走るなー!」

 おじさんからの怒声が聞こえる。

「すいません!!」

 今は他のことを考えるな足を動かせ、一瞬でも動くことを止めるな俺!

『バチン』


 洛連が戻ってくるとバイターは驚くこともなく4本の枝を飛ばしてきた。

 どうやら一回見ただけで俺の『転移?』に対応したっていうのかよ。おいおい待ってくれよ、お前目なんて付いていないくせによ。

「だがな、人間様に勝てると思うなよーーー!」

 『パチン』

 —現代に戻る―


 『パチン』

 —異世界に行く—

 8本の枝が飛んでくる


 『パチン』

 —現代に戻る―


 『パチン』

 —異世界に行く—

 あと20m

 頭上の触手が5本飛んでくる。


 『パチン』

 —現代に戻る―


 『パチン』

 —異世界に行く—

 二本の鎌をこっちに向けて打ち、背中に向けて10本の枝が戻ってくる。


 『パチン』

 —現代に戻る―


『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』『パチン』…………………………………………………………




『パチン』

                  —異世界に行く—

 あと5m


 戻って来たのか、もう何回、いや何十回繰り返したか分からなくなってきた。それにあっちこっちに行く度に意識が、意識が追いつかなくなっちまう。それに致命傷や奴の酸は受けていないが腕に、足にカッターで切られたような切り傷が大量に出来ちまってるよ。あーめっちゃ痛えーよ。でも奴との距離は後5mぐらいしか残っていないよな。

—これなら...行ける!!


「グァゴヴァダァ~ボゴァ~ゴガシャ~~~~!!」

 バイターは空に向けて大きな雄叫びをあげ、足の代わりしている枝をじたばたとし始めた。

 どうやらお前はここまで近づかれたことがないらしいな。

「さあ、そろそろこの長い戦いを終わりにしようぜ!」

「グワァ~~~~~~!!」

 奴はここら一帯に響き渡るほどの咆哮をした後、今までで一番速い速度で枝を飛ばしてきた。

一手目を心臓に向けて真っすぐ飛ばし、二手目を一手目の死角になるように下に隠し、三手目を洛錬 の頭上に向けて放ち、四手目を高く上げて背中に向けて打ち、五手目を地面に忍ばせ、残りの枝と鎌を防御に回していた。

洛錬は頭が追いつかず、口を開けて目の前で起こっていることに釘づけになってすぐに行動に起こせずにいた。

...ハッ、囲まれたか?今までで一番頭使ってきやがって。早く飛ばないと指パッ…


—マズイ間に合わない!?ヤバい来......!!




「ヴァニッシュ・シータ・ファイヤーボール!!」

 彼女の声が聞こえた。

ごめんなさい、結果として戦わせることになってしまって。

 奴はそれと同時に突然目の前に現れたサッカーボール程のサイズの火球を受け、洛錬の胸の前に迫っていた枝の動きが一瞬だけ止まった。

でもその一瞬が欲しかったよ!

—今だ!!

『パチン』

『パチン』


「グワァ、ガァ~~~」

 魔法を受けて苦しんでいる声が聞こえたが、実際バイターの体には傷一つ付いていなかった。しかし彼女の攻撃に焦ったのか、枝についている3つの口を体の裏に回した。

 

—でもよ、正面にある口はどうしようも無いよなぁー!

「口を開けておけよ、このクソ植物がーーー!!」

 そう洛錬が右手を突き出した途端、バイターは頭の上にある触手を5本全てこちらに向けて飛ばしてきた。

『パチン』

『パチン』


「俺が目の前に来たからって油断すると思うなよ!!今の俺は無敵だーーー!!」

「ヴォアーー!!!!」

 そう言って右手に持っているサイコロ爆弾を足を滑らせながら『バイター』の正面の口に投げ込んだ。


―やっ….た…か?


 洛錬は投げ入れた事で気が抜け体の体勢を崩してしまい、投げ入れた右手からバイターの目の前の地面に激突した。

「アッーーー!!」

 痛ってーーーーーー!!今、体のどこかをやってしまったのか?

「ゴブボエガ、ゴ、ガァ、ガギョア、バェアー」

バイターは断末魔をあげつつ体の内側が次々と赤く膨れあがり、今にも飛散しようとしている。

マズイ早く左手を動かさないとヤベー!


—ッ左手が動か……何だ、肩が脱臼してしまったのか?やばい今度こそ本当に死んじまう!

 早く、早く飛べ、動け、飛んでくれ、動け、飛べ、飛べ、飛べ、飛べーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!



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