第一章3 『ただいま世界』
一目見て分かった。足もとのアスファルトに真上にある電柱。それに後ろで走っている自動車の音に向かい側にある骨董屋と隣にあるコンビニ。これはどうやら…
「帰ってきたのか?」
いやそれともアレは夢だったんじゃないか?
—っ、口元が痛い—
夢であることを否定するかのように口元が切れていた。
どうやら夢じゃないようだな。でも、夢じゃないとしても俺はただの高校生だ。あんな得体のしれない化け物と闘うなんて絶対に嫌だ。でもこのままじゃ彼女が…..。どうしよう、どうすればいいんだ?何か助ける方法は?
…そうだあのおっちゃんだ。俺にこの糞指輪を押し付けやがったおっちゃんなら奴を倒したり、何かヤバいチート級の道具でも持っているんじゃないか!?
が、周りを見渡してもそこには誰もいない。でも、道路の向かい側にある骨董屋が目に留まった。向かいにある骨董屋は木造でできた壁に瓦の屋根でできており、その存在感を放っている。
そういえばあのおっちゃん、自分のことを骨董屋の店主とか言ってたよな。
「行くか」
洛錬は骨董屋に足を走らせた。
「おっさんいるか。こっちは大変なことになっているんだ!!」
『キィー、ガガガ』
怒りと焦りの気持ちから扉を思いっきり開けようとしたが重く開け辛く、木で出来た扉が甲高い音を発した。明らかに立て付けが悪い。
骨董屋の中には鉄でできた甲冑に胡散臭そうな男の銅像、怪しげな仮面に謎の羽など色々なものがあった。だが、どうやら特段あの植物野郎に効果がありそうなものは何も無いように見えた。
クッソ何かとんでもない様な魔法具的なやつとか、チートを使える魔法の杖とか、何か魔剣的なやつはないのか?他にも強酸とか爆弾みたいな実際にある奴でもいいから何か強力な道具は無いのか?クッソ何か俺にできることは何もないとでも言いたいのか何か、何か、何か、
—『何か』—
いやアレっ?これってさっきどうにか逃げようとしていた時と状況が同じじゃないか。ということはつまり…あーそういうことか。俺が指輪を使って奴と闘えば良いってことじゃないか。
つまり俺が……。あの怪物と……。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。イヤダ。イヤダ。イヤダ。イヤダ。イヤダ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。
そうだぁ!俺は仕方なく向こうの世界に行ってしまったんだ。良く授業中に異世界に行って無双していることを想像したりするけど、こんな仕打ちは求めていないんだ。それに俺はただの高校生だ。だから別に逃げたって構わないに決まってる。そうだ、俺は悪くなんて…………
ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、床と手のひらに赤い液体が垂れた。
これは俺の額の血か。そういえば、そういえばあの子も血を流して。流して。流して……。
—彼女の姿がフラッシュバックしてきた。—
彼女は右肩から脇ほどにかけて溶けてしまって大量に血を流しているよな、それも死ぬかもしれないぐらいに。そうだヤバい、その時間も迫ってきているんだ。もしかしたら今の俺なら助けられるかもしれない。それに『信也』お前は誰かを見捨てる事なんて許してくれないよな。
—「助けないと」—
そうだ、今よく考えたら向こうの世界に行ったときのくらいかけた最初の攻撃は、俺が受ける位置だったんだ。それで彼女は俺を助けるために怪我をしたんだ。俺なんかのために。そうだな尚更助けないと。
そう決意を固めて握り拳を作った。
が、それを否定するかのように膝から下がガタガタと震え、『ドッドッドッドッ』と心臓の鼓動が思いっきり早くなっている。
多分今までにこんな事は無かったよな。
—でも、でも助けないと。—
そうして洛錬は震えた左手を右手で抑えながら、指パッチンをした。
『バチン』
きりが良い所で終わりたかったのでかなり短かったと思います、
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