07 倦怠期
特使勇者チームモノカ一同、今は野営で休憩中。
あの王族一家との激闘の後、大きな闘いは今のところ無い。
王都の方では、最前線から帰還してきた勇者や騎士たちが何やかんやと揉めているようではあるが、私たちが特使勇者としてお呼ばれされる事態には至っていないようだ。
まあ『裏悪多』を失ったとはいえライクァおじさんが目を光らせている王都で暴れる阿呆はいないだろうけどね。
そしてチームモノカは、今ちょっと倦怠期ちっく。
先日、マクラのおねだりを叶えてニケルちゃんたちと会ってきたけど、楽しい時間が楽し過ぎるほど反動もまた大きいのです。
「あー」
ノルシェが短剣を抱えてソファーでごろごろしております。
前までは寝床の中でこっそりと行っていた愛刀『リリシアン』への頬ずりを、今では日中人目もはばからずにやっちゃうようになりました。
乙女の敵たちの手足の腱を情け無用と切りまくったノルシェは、悪党どもからはとてもとても恐れられる存在となりました。
それとともに、貴族のご息女たちや庶民の娘さんたちからは、『乙女の守り神』として絶大な人気を博しております。
その『乙女の守り神』さんが、愛刀に頬ずりすりすりして身悶えする姿。
これはこれで面白いのですが、やはり少々不憫です。
何とかせねば。
「うー」
アイネがカーペットの上で身悶えしております。
冒険大好きなアイネではありますが、何も大冒険だけをお望みってわけではありません。
小さな町の迷子のひとりも放ってはおけない根っからの人助け気質。
子供の頃から好奇心の塊だった彼女、少しでも退屈を感じると、ほらご覧のとおり。
これはこれで面白いのですが、やはり少々不憫です。
何とかせねば。
「zzz……」
マクラは私の抱っこでおねむ。
チームモノカのお母さんとして日々家事全般をこなすうちに、誰よりも完璧にこなせるようになりました。
そして整理整頓が行き届いた室内では、めったに追加お手伝い事案は発生しません。
自らの日々の頑張りで臨時おこずかい入手先までもきれいに片付けてしまったマクラ。
我慢しすぎは駄目だよって何度言っても過分なおねだりはしないので、ニケルちゃんへのお手紙を出す回数が増やせません。
安心しきっている寝顔なのですが、やはり少々不憫です。
何とかせねば。
そしてシジミはと見渡してみれば、
「ごめんくださーい」
どなた?