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飛竜を投げて恋されて  作者: 黒森 冬炎
ブルートパーズ
8/70

8•裏町



 スーザンとエシーは昼から呑み続けて、そのまま夕方になる。それぞれの支払いを済ませたあとで、裏町の立ち呑み屋、ギルバート・オーウェン・ハウスへと向かう。


 日も落ちて薄闇の中、街路樹がオレンジ色に光っている。朧な光の靄をまとった街の木々は、レジェンダリー王国名物である。

 灯火の(ディスタービング)魔法(スリープ)で木を丸ごと包み込む。王宮にある担当部署から、正確に全国津々浦々、全ての街路樹に魔法が送信されるのだ。お陰で国民は安全に夜歩きが出来る。


 裏町の細い路地には街路樹がない。木を植えるスペースがないからだ。そのため、裏町は暗い。暗闇に紛れた犯罪も起こる。そうしたことの取り締まりは、王宮騎士団の市中巡回部隊が行なっていた。魔法犯罪も行われるため、巡回騎士は武芸も魔法も得意な模範騎士が多い。



「エシーじゃねえか!デート?」


 ギルバート・オーウェン・ハウスに向かう道すがら、2人組みの巡回騎士に行きあう。1人はエシーの知り合いらしい。


「故郷の友達。飛竜投擲部隊のスーザンだ」

「どうも。スーザンです」

「なんだ、長槍卿(ロングリーチ)デイヴィスの彼女か」


 スーザンから殺気が溢れる。


「え、なに?」


 巡回騎士がたじろぐ。


「それさ。あいつの妄想だった」

「は?」

「だけど、幼馴染の俺ですら知らねえネタ押さえててやべえよ」

「ん?」

「子供の頃こいつがやらかした話まで詳しくてさ」


 エシーの説明を聞いて、巡回騎士は顔を顰める。


「妄想じゃねえじゃん。焼き餅かよ」

「違うっす!そんなやつ、ほんとに知らないんす!怖すぎるから、いま調べてんす」

「え」


 スーザンの必死の訴えに巡回騎士は固まった。


「丁度いい、ゲイリーも協力してくれ」

「え?俺今勤務中」


 ゲイリーと呼ばれた巡回騎士は、明らかに迷惑そうな顔をする。だがエシーは食い下がる。


「あいつの故郷のこととか、交友関係とか、何でもいいから教えてくれよ」

「んー?あんま仲良くねえし?」

「思い出したらでいいからさ」

「思い出したらな」

「助かるぜ」

「あんま期待すんなよ?」

「ああ」


 ゲイリーは相棒と共に巡回に戻ってゆく。


「仲良くない人にまで伝わってんの、こまる」


 スーザンは顔を引き攣らせる。


「王族との縁談が出てんのに、最悪だな」


 エシーが共感して眉を寄せる。そのまま2人は黙ってギルバート・オーウェン・ハウスを目指す。


 早い時間から日の射さない裏町は、じめじめとして黴臭い。ゴミこそ落ちていないが、表通りほどの清潔さが保たれるのは難しいようだ。清掃にもお金がかかる。裏町の住人や商店には、そこまでの余裕がないのだ。せいぜい自分の家の前を掃除する程度なのである。


お読みいただきありがとうございます

続きもよろしくお願いします

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