60• それぞれの闘い
スーザンは、エシーが交代に来るまで待機だ。
擲竜のトーマス班は、山から降りて首都勤務になる町番であった。だが、現地の様子を聞いて、部隊長に相談して本部長に現地での協力を申し出る。
「リチャードの旦那が2日も戻らねぇってことは、そんだけやべえってこってすぜ」
「人界最強の3人が行ってる」
「スーザンが3人だと短期間では無理だって判断したでしょ」
「ワイバーンでの突入は有効に見えます」
部隊長が口を挟んだ。
「フィリップ班の3人は脱落したが」
「数を揃えて団体で突っ込めば」
「試してみる価値はありますよ」
部隊長の口添えで本部に許可を取り、町番だったトーマス班5名を引連れて現地へと向かう。
ミランダは、街の噂を集めて回る。
「あんたとこ、ご亭主のお里は高級酒の産地じゃなかった?最近新しいお酒出ないの?」
「それがさあミランダ、畑がラスカルジャークにやられちゃってねぇ」
この5年で、国内にある高級酒の産地は壊滅状態だ。移住先は、どこからでもゴルドフォーク。「元と同じ作物が作れるから」と言うが、気候も地形も特徴的な場所でしか育たない原料の酒もある。当然、その産地からの移住もある。
「やっぱりおかしいよねえ」
エシーが通信係としてスーザンと交代する為にやってきた。
「そんで、姉御は何してんの」
「分析は機械が勝手にやってくれるから、通信装置をちょっといじった」
「どんな?」
「名付けて、倍魔共鳴!」
「おおっ人工的に起こせるようにしたんだ!」
通信を聞いている人々は置いてけぼりだ。
「解りやすく言ってよ」
ゴルドフォーク地方調査本部長から苦情がでた。ミルドレッドは仕方なく説明をする。
自然に発生する魔法波は、ピークが幾つかに分かれて現れる。そのピーク同士はちょうど整数倍の高さで観測できた。
ミルドレッドは、収拾した1つの魔法波を別の魔法波とぶつけて共鳴を起こす装置を開発していた。
1日目には、魔法波のデータを収拾して記録する機能を通信装置に追加した。2日目には、発信側の機能にも手をつけていたのだ。
これで、より立体的な魔法効果を及ぼすことができるようになる、とミルドレッドは説明した。
魔法灯を街路樹に送信する場合には、この逆を行う。空気中の倍魔と共鳴してしまうと拡散されてしまうからだ。暗くしておきたい場所まで明るくなる上、料金を払わずに利用できてしまう。
「拡散の問題はどうするんだ」
「受信装置と受信した魔法波の再生装置を通さないと魔法が実現されないようにしてんですよ」
ミルドレッドが得意そうに続ける。それによれば、特別な部品や新たな外付け装置は不要で、魔法灯の送信制御装置を繋げばすぐに使えるようにしてしまったのだった。
「さすが姉御」
「いや、これ、過剰でしょ」
「いいから魔法通信試してみなよ」
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