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飛竜を投げて恋されて  作者: 黒森 冬炎
毒霧の壁
52/70

52.剛腕赤毛の武勇伝(2)

 ビルは目がいいだけである。身体強化を魔法で行えば、飛竜を投げる力はあるが。リサは足が速い。1人なら魔法で強化して逃げ切れるかも知れない。ティムは体が大きく素の状態で力も強い。しかし魔法が苦手だ。強化だけはだいぶ慣れてきたが、咄嗟に戸惑って魔法が切れたら危険である。


「フィル班長」


 スーザンが冷静に声をかける。


「棘草あるんじゃないすか」

「ぼくもそう思うよ」


 皆は魔力が抜けていくのを感じていた。現状を改善出来る可能性は、フィリップ班長とスーザンの規格外コンビにある。2人が倒れたら、四方からラスカルジャークに襲われる不運を切り抜けるのは難しい。


「棘草、あっちに」


 ビルが見つけたのは、右手に迫る小型ラスカルジャークの大群の近くだ。針玉のようなラスカルジャークたちは、棘草の薮を抜けてくる。魔力を吸い取られた針玉たちがバタバタと倒れ数を減らす。それでもまだまだ大量にいる。


「まずはあれを片付けようか」


 フィリップ班長はにっこり笑うと針玉の方へと走り出す。この針には猛毒がある。


「スー、炎はいける?」

「問題ないっす!」

「じゃ、スーついてきて!」


 他の3名はバックアップだ。とはいえ、2人と違って多様な魔法を使うことはできない。飛竜投擲部隊も騎士団の一部なので、一応は帯剣している。3人は全身に強化をかけると前以外の三方を向いて剣を抜く。



 前方へと魔法で火を放ちながら、フィリップ班長とスーザンが斜面を駆ける。太い幹や曲がった枝を避け、浮き出た木の根を飛び越えてゆく。


「壁を」

「うす!」


 スーザンとフィリップは、ラスカルジャークの毒針を避ける魔法の壁を展開する。棘草に吸われて魔力は減っているがまだ普通に使える2人である。


「焼き払おう」

「うす!」


 針玉全体に火を放つ。木々には燃え移らないように、薄い膜で山の植物を覆う。ラスカルジャークが嫌な臭いを出しながら次々灰になる。


「あれだ」

「うす!」


 針玉の群れをあらかた焼き、ようやく棘草の群落にたどり着く。


「うっきついっすね」


 どんどん魔力が吸い出される。


「さっさと焼いちゃおう」

「うす!」


 2人は出力を上げて棘草を焼き払う。


「はあ、ほとんど魔力残ってないっす」

「戻るよ」


 針玉と棘草だけが相手ではない。そして、これだけ多くのラスカルジャークを目にしたフィリップ班に、撤退の二文字は存在しない。


「魔力なんかなくたって、けっこういけるでしょ?」

「そっすかねー?」


 残りの魔力は温存して、2人は腰に下げていた剣を抜いて仲間の元へと駆け戻る。


お読みいただきありがとうございます

続きもよろしくお願いします

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