47•昼食の席にて
昼時になり、スーザンはいつもの居酒屋兼食堂に来ていた。廃村の調査に出かけたモンティとアンバー以外のストロングロッド雑草チームも同行している。
「リチャードの旦那とはまだ連絡とれないのかい?」
ミランダが座る間も惜しんで心配そうに聞いてくる。
「とれないっす」
相変わらずリチャードとの通話の魔法は繋がらない。通話を試みた時のゼリーに手を入れるような薄気味悪い感覚も同じままだ。
「その変な感覚、調べてみたんだけどさ」
皆がミランダに注目する。
「ごめんよ。何も分からなかった」
皆が落胆する中で、ミルドレッドの緑と金茶のオッドアイがきらりと光る。
「新種の道具か魔法だね?」
「そう考えるのが妥当だよな」
エシーも同じ魔法技兵部隊の先輩騎士ミルドレッドに同意する。
「情報通信で掴んでる範囲には無いんだよ」
「ゴルドフォークとの通信記録は普通なんですか」
ミランダの言葉にエシーが質問する。
「普通だねえ」
「俺も幾つかの機材を試したんですけど、今は連絡つきません」
「今回は未届け新種の抜き打ち検査の名目だから、公式通信出来ないしね」
「私信は公的記録に載らねぇですしね」
「いつから通じなかったのかわかんないんだよね」
ゴルドフォーク出身者は、帰省中にまで私信を交わすほど親しい間柄の人がいないのだ。記録によれば、首都で働く人もそれなりにいる。故郷との通信を調べることは可能だ。
私信は、王族特権でも余程の理由がなければ調査できない。今回は地域に関する抜き打ち調査なので、警戒されないために本人たちへの聞き取りも望めない。
皆が黙り込んでしまう。
昼定食の煮込み料理は、大きく切った野菜がゴロゴロと豪快だ。とろみのある茶色いルウは、スパイシーな香りを漂わせている。少しスジの残る大衆食堂らしい肉の塊も手伝って、健啖家のリチャードを連想させた。
のろのろと進まない食事を突いていると、スーザンに通話の魔法が入る。
「スー、そっちはどう?」
「フィル班長!」
幾分表情を明るくしたスーザンは、手にしたパンを一旦置いた。
「特に進展はないっす」
「残念だね。こっちは新事実もあるよ」
「何がわかったんすか?」
テーブルを囲むストロングロッド班が一斉にスーザンのほうを向く。悪名の方が高い雑草騎士たちは、なんといってもマイナスからの立ち直りが早い。だからこそ雑草と呼ばれるのだ。
「うん。村が荒廃した原因にはブルートパーズによる魔法毒の影響がありそうなんだよ」
フィル班長からの情報に、スーザンたちは顔を引き締める。
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