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飛竜を投げて恋されて  作者: 黒森 冬炎
廃村の謎を追え
45/70

45•消えた魔法使いたち

 くまなく村を調べ終わって、調査班は中央広場に集まった。ちょうどその頃、アンバーが操る乗り物(マジカルモビル)で村にモンティがやってきた。


「殿下」

「レインボースキップさん、"馭者台の(マドモアゼル)魔女(コシェ)" ハリケーンライドさん」


 フィリップ班長が、中央広場にコンパクトなマジカルモビルを乗りつけたカップルへと顔を向けた。


「ちょうど今検分が終わったところです」


 マジカルモビルを降りた2人は、真面目な顔をして聞いている。


「先ず明らかなのは、ラスカルジャークが暴れたほかに、少なくとも1ヶ月以内に魔力暴走を起こした魔法使いがこの村にいたということです」


 モンティはかるく頷いて、静かに口を開く。


「この村の人口と魔法使いの人数の推移はこれです」


 取り出したデバイスを皆で覗き込む。残留村人は少し離れた場所に固まって警戒している。



「最近の月次報告書はこんな感じですね」

「先月の月次報告書によると魔法使いは1人だね」


 村人たちの警戒が強まった。


「減少した原因は死亡ですね」

「死因は?」

「全て魔力枯渇(アンラック)です」

「全て?」

「全てです」


 生き物の魔力が全く無くなってしまう現象を魔力枯渇(アンラック)と呼ぶ。これは、魔力を際限なく吸い取る植物が側にあると起こる。植物の名は棘草(イリテイト)という。


「この村に棘草(イリテイト)の群生は見られないけど?」

「魔力が外に引っ張られる感覚もねっす」


 ビルが言ったのは、棘草に魔力を吸い取られるときの感覚のことである。これに気が付かないといつの間にか魔力を全部取られて死んでしまう。群生に出くわすと短時間で危険な状態にまでなるから注意が必要だ。


「記録によれば、魔法使いはだんだん減ってる。つまりは一時(いちどき)に全員死んだわけじゃないよね?」

「そうですね。この5年間でだんだん減りましたよ。もしも一度棘草(イリテイト)の繁茂を許したとしても、二度三度というのは考えにくいです」


 棘草(イリテイト)は見つけ次第、焼き払えば問題ない。地を這って増えるタイプの植物であり、地中にはさほど深く根を張っていることはない。強めの炎で焼けば根ごと焼き尽くせる。駆除は容易い。

 この雑草はかなり特徴的な、鋭く長い黒色の棘で覆われた植物である。一度被害が出た地域で、警戒をせず繰り返し繁茂してしまうのも考えにくい。



「食肉用家畜はどこへ行ったんだい?」


 フィリップ班長が改めて村人に問う。村人たちは顔を硬らせて答えない。村の外に広がる牧草地にも村の中にも、牛や羊などの家畜は見当たらなかったのだ。家畜小屋も人家同様荒れ果てている。かろうじて残っている家は数軒あるが、畑も家畜も存在する気配すらなかった。

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