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飛竜を投げて恋されて  作者: 黒森 冬炎
竜を投げる女のお見合い前夜
4/70

4•赤毛のフィリップ

1話千字程度、ヒーロー登場は4話目です。






「熊殺しだろ、落石粉砕して除去だろ、暴れ猪を乗りこなした話だろ、竜殺しの滝に飛び込んだ話だろ、怪鳥山のてっぺん杉の梢まで登った話だろ」

「ちょっとまって、それ全部エシーは話してないんだよね?」

「言ってねぇ」

「なんで知ってんの」

「俺も知らない話もずいぶんあった」

「たしかに、てっぺん杉の話は誰にもしてない」



 2人がゾッとして黙ったとき、スーザンの隣に小山のような赤毛の大男が座った。


「何かあったの?」

「フィル班長!椅子壊れるから!店員さん、フィルスツールお願いします!」

「はーい!」


 店員は慣れているようだ。専用の頑丈な椅子がすぐに運ばれてくる。この居酒屋は騎士たちの昼休みにも定食屋として利用されている。大男も常連なのだ。

 男は、真っ黒な厚手の綾織りに鮮やかな黄色いふさ飾りをつけた騎士服を着込んで、不服そうに口を歪める。


「みんなひどいなぁ」

「え?え?スーザン、フィリップ殿下、え?」

「あ、フィル班長、こいつあたしの幼馴染のエシーっす」

「おー、君がエゼルレッド・ペガサスウォークくんか。スーザンからも他の奴からもよく名前きいてるよ」

「恐れ入りますっ!」


 エシーはすっかり気が動転して声がうわずってしまう。


「で、何があったの」

「それが」


 スーザンはスッと表情を消す。


「知らない奴があたしのこと恋人だって言ってたらしくて」

「しかも、5年間も」

「誰にも話してない事まで知ってて」


 フィリップの眉間に深い溝が刻まれる。最早シワとは呼べないレベルの代物である。


「そいつは誰だ」


 フィリップ班長は、先程までの明るく人の良さそうな声とは別人のような低音で唸る。



「デイヴィス・レイニーフィールド=ゴルドフォーク長槍卿(ロングリーチ)、魔法技兵部隊2年次騎士で、俺のルームメイトです」


 エシーは大ジョッキから手を離し、姿勢をただして報告する。それを見たスーザンは大笑いし、フィリップ班長は苦笑いで片手を軽く振る。


「まあ、呑んでよ」

「はいっ。しかしっ、殿下は勤務中、いえ、休憩中といえども!我々は休暇中ですがっ!ですが!休暇と休憩は大きく異なりっ!非常に申し訳なく感じる次第であります!」


 すっかり混乱したエシーは、既に自分でも何を言っているかわからない。


「いいって。とにかく呑んで落ち着きなよ」


 とうとうフィリップ班長は声を立てて笑い出した。エシーは決まり悪そうに頭を下げて、言われるままにジョッキを口元に運ぶ。



「で、本当にそいつを知らないんだね?」

「っす」


 スーザンは心底気味悪そうに頷く。


お読みいただきありがとうございます

続きもよろしくお願いします

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