38•街道沿いの村々
「それより、ゴルドフォークに移住した人が多い地域に連絡取れない?」
ミランダが魔法技兵組に訊く。
「街道経由班が近くにいそうじゃない?」
アンバーが報告にあった村の名前と移動速度を考えながら発言する。
「聞いてみるか」
エシーがスーザンを見る。
「街道経由班には通話の魔法使える人いないと思う」
「じゃこっちか」
エシーは再び開発途中の試作機を操作する。しばらく待つと返信が来た。
「郊外の村を昼と夕方に通ったみたいだ」
「それで?」
トーマスが催促する。
「どちらも村として成り立たない人数しかいない。残ってる人たちもゴルドフォークに移住予定だって」
「またゴルドフォーク」
スーザンが思わず言った。エシーは頷いて更に返信を読み上げる。
「理由は移住受け入れに積極的で土地家屋が安く、今まで作っていたものと同じ作物を作れるから」
「ゴルドフォークは田舎だから、たしかに土地は余ってそうだけど」
「人数だけなら既にちょっとした大都市だよ」
アンバーは思案顔で呟き、ミランダが呆れている。
「何があったんだ」
トーマスが苛立ち、エシーは続きの報告を読む。
「作物に新しい病気が蔓延して、魔法使いたちは原因不明の魔法障害でどんどん衰弱死した。そこへ、えっ?ラスカルジャークの波状攻撃???」
「ちょっと見せろ」
エシーが大声をあげると、トーマスが覗き込む。他のメンバーもエシーの手元にある小さなデバイスを覗き込む。
「なにこれ」
スーザンが青褪める。ラスカルジャークが街場に降りてくることは確かにある。しかし、大群での襲来や途切れない波状攻撃は前代未聞だ。
「流石に本部へ連絡済なんだな」
「どうして今まで問題にならなかったんだ」
「街場の討伐遠征班の業務記録はどうなってる?」
モンティが確認し、トムが不満を露わにする。そしてスーザンがミランダに質問した。
「定期巡回だけだったよ。報告書にも特に不審な点はなかった」
「記録上、討伐はしてないってこと?」
スーザンが目を吊り上げる。ミランダは残念そうに目を伏せる。
「そうなるねえ」
「聞き取りが必要だな」
モンティが静かに言う。皆は黙って頷いた。
「エシー、魔法波含有率はどうなってる?」
ミルドレッドが唐突に聞いた。
「かなり低いね。ほとんど0だ。魔法使いがいる気配はないよ」
「なんで?」
エシーが答えるとスーザンとトムが声を上げる。他のメンバーも驚いた様子を見せていた。
「ラスカルジャークが波状攻撃してきたって言うのに、残留魔法波が検出されないなんてありえない」
常に最前線で討伐に当たっているスーザンが尖った声を出した。
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