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飛竜を投げて恋されて  作者: 黒森 冬炎
ムーンライトフルームフォール
22/70

22•夕飯の席で

 結局、夕飯の前に竜寄せの笛(ワイバンコール)につける装飾の案は浮かばなかった。


(素材を見てから決めればいいか)


 時間が来たので食堂へ行く。2人きりの夕食だが、寂しくはない。型破りの養父子であるから、テーブルマナーもそれ程煩くないし、食卓での会話も許されている。


「装飾は決まったか?」

「まだ」

「間に合いそうか?」

「たぶん」

「なんなら断ってもいいんだぞ」

「えっ、正式な依頼書貰ったのに?」


 スーザンの手が止まる。分厚いステーキにフォークを刺したまま、お行儀悪く宙に浮かせている。


「お守りが欲しいだけだからな」

「余計断れない」

「まったく、仲良いな」

「仲はいいけど」


 スーザンはもごもご言い訳しながら、食事を再開する。今日は2人とも酒は呑まない。リチャードは寝不足な上に明日は早くに出張調査である。万が一支障がでては大変だ。スーザンもこれからお守りがわりの竜寄せの笛(ワイバンコール)を作るのだ。変なものが出来上がったら渡せなくなってしまう。



「ほかに何かできないかな」

「お前が狙われてる理由がわからないからなあ」

「町番が全員現地に行くわけじゃないよね?」

「そりゃあそうだが」


 酒の代わりにミント水を飲みながら食事は進む。肉の後には魚と野菜の香草揚げが供された。リチャードの大好物である。これが食卓に載ったのには、特別な理由はなかった。

 遠征の前日とは言え、リチャードは十中八九普通に明日も帰宅する。移動の魔法(レイジー)を使えば一瞬なのだ。どうしても団体行動が必要な場合には諦めるが。


「フィリップ班は誰か残るの?」

「いや、みんな現地組だ」

「エシーは?」

「ギルバート・オーウェン・ハウスをしばらく調べる予定だ」

「1人で?」

「情報通信部隊から1人つく」

「むしろ、面が割れてんじゃないの?」


 情報通信部隊は諜報活動も(おこな)っている。新種の穀物から作られた危険な高級酒を扱う、裏町の酒場。そもそも高級酒を出すような店ではない。その上、酒の存在と生産地の印象を消してしまう。そうした怪しいバーならば、むしろ本職の情報通信部隊所属騎士を把握しているのではないか。


 リチャードはミント水を一口飲むと、少し考えてから口を開く。


「それはそうなんだが、やはりエキスパートがいないと危険だろう」

「エシーが行くなら偽装道具を使えるだろうけど」

「いや、そっちはむしろ念のため使わない」

「あの店、魔力の流れはおかしくなかったよ」

「見抜かれたら危ないだろう」

「うーん」


 スーザンは葉物野菜をカリカリに揚げたものを齧りながら唸る。


「やっぱりあたしが行くほうが良くない?」


お読みいただきありがとうございます。

続きもよろしくお願いします。

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