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飛竜を投げて恋されて  作者: 黒森 冬炎
竜寄せの笛は恋のお守り
21/70

21.飛竜と交流する

 藪から飛び出してきた毛むくじゃらのラスカルジャークと飛竜が激闘を繰り広げている。岩棚の飛竜は、そちらに参戦するやつとフィリップ班長をターゲットにしたやつとに別れた。こちらには二匹襲ってくる。


「よしこいっ」


 柔和な雰囲気をした赤毛の少年班長が闘気を漲らせて飛竜を迎える。新入生たちは目をキラキラさせて歳の近い指導員を見守っている。


「ほらっ」


 フィリップ班長は一匹の飛竜と取っ組み合いをしながら班員に声をかける。


「はいっ」


 スーザンは迷わず前に飛び出す。班長に向かって来たもう一匹の飛竜が火を吹く。スーザンはすかさず無効化し、飛翔の魔法で飛竜に飛びつく。尻尾の先を細い腕で抱えると、ぐるんと回転しながらラスカルジャークの群れに投げ込んだ。


 スーザンが仲間の元に帰ってくると、フィリップ班長は飛竜と仲良くなっていた。


「可愛いっすね」

「だろ?でも君、凄いね」

「何がすか」

「強化以外も大人顔負けじゃないか」

「そすか?」

「そうだよ!」

「あざっす」


 スーザンは太陽のような笑顔を見せる。フィリップ班長は一瞬惚けたようにスーザンを見た。



「それに、迷わず飛び出して正確な対応をする度胸は素晴らしいよ」

「うん、かっこよかった」


 フィリップ班長が褒めると、リサが頷く。


「スーザンすごい」


 ビルも感心する。ティムは無言で手を叩いた。

 上方の藪では、まだ戦いが続いている。ビルが別の岩棚に飛竜を見つけた。それに気づいたティムは自信なさげに躊躇している。


「行ってみる?」


 フィリップ班長の言葉にティムは目をつぶって深呼吸をする。


「はい!」


 慎重に魔法で全身を強化して、ティムは過たず飛竜に取りつく。尻尾ではなく翼の根元に組みついて跳びあがり、空中で前転しながら勢いよく投げて戻ってきた。


「次!」


 フィリップ班長が笑顔で促す。スーザンとティムに勇気づけられたリサが自慢の脚に強化の魔法をかけて飛び出す。ビルも気を引き締めて号令を待つ。




町番(まちばん)の擲竜も調査班に駆り出されたのかな)


 フィリップ班長と出会った頃のことを懐かしく思い出しながら、今の状況に意識が向く。


 飛竜投擲部隊は主に山岳地帯で活動する最前衛の実働部隊である。しかし、交代で首都の本部勤務も行う。擲竜騎士総勢750名のうち、首都勤務の町番は1月に30名程度だ。首都にいる間は、最前線から持ち帰った情報を纏めたり分析班に伝えたりしている。


 山岳地帯勤務の山番(やまばん)は、国中に散り、時には外国からの依頼にも応える。山番、町番ともに国内外の土地に関する調査は、職務対象外だ。しかし今回フィリップ班長も現地調査に赴くという。不測の事態に備えて擲竜の精鋭騎士が調査班に同行するのだろう。


 スーザンの養父リチャード大魔法卿(キルゼムオール)が参加するのだから、フィリップ班長すら不要かもしれないが。リチャードなら1人で事足りそうである。


お読みいただきありがとうございます

続きもよろしくお願いします

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