15•自宅待機
フィリップ班長を見送ったあと、スーザンは普段着に着替える。思いがけずしばらくの期間自宅待機になってしまった。朝食をとりながら、在宅でできることを考える。
そもそもが自分に関わる調査である。何もせず、ただ家に閉じこもってじっとしているのは落ち着かない。だが、こっそり出歩くのも気が引ける。
(リチャードおじさんやフィル班長から話を聞くくらいしか出来ないかなあ)
フィリップ班長は明日も来てくれると言っていた。その時相談してみてもいい。そう結論付けると、食後の紅茶をゆっくりと味わった。
昼過ぎ、リチャードが帰ってきた。どうやら一時帰宅に過ぎないようだ。手早く着替えてまた出かける。
「おじさん、なんか解った?」
「今のところ進展はない。調査班の編成がなんとか決まったところだ」
「あたしは」
「私は組み込んでいいと言ったんだが」
「自宅待機?」
「ああ。実働班に入れるのは、フィリップ殿下が頑として頷かなかったんだ」
「信用ないなあ」
「絶対に守ると仰って下さったぞ」
「それは嬉しいけど」
「気持ちはわかるがな」
スーザンは活動的な人物である。飛竜を掴んで害悪魔法生物ラスカルジャークの群れに投げ込むような仕事をしている。養父のリチャード・ナイトラン大魔法卿も行動力しかないような男である。首席大臣に収まった今ですら、隙をみてはラスカルジャーク討伐に出かけてしまう。
そして何より、スーザンを拾い上げたのは、その異常なまでの身体能力と無尽蔵の魔力、更に生き残るセンスのありえない程の高さによる。リチャードは、スーザンを過保護に自宅待機させておくのは勿体無いと思っていた。
「気持ちが深まって危険から遠ざけたくなったんだろう」
リチャードは少しからかうように言った。
「共に歩む最高のパートナーとしてしか見えてなかった頃なら良かったんだがな」
「おじさん、なにそれ?」
「今度のことがなくても、まあ自然に良い夫婦にはなったと思うが」
「なんの話?」
スーザンが不服そうに尋ねる。
「ようするに、だ。レイニーフィールドのガキがお前を恋人だなんて言いふらしたのに腹を立てて、王子権限で王宮会議を召集したんだよ、お前のフィル殿下は」
「あたしの?」
スーザンは頬を赤くする。
「そしたらレイニーフィールドんとこのゴルドフォークがきな臭くなってな」
「うん」
「途端に心配し出して、お前をしばらく家から出すなって言い出した」
「今朝フィル班長が家に伝えに来たよ」
「それは聞いた。心配で様子を見に来たんだろ」
リチャードは呆れたように息をつく。
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