11•夜間会議
「レイニーフィールド、思ったよりやべえな」
「あんな酒を流通させてたなんて」
「青色麦ってありゃ、なんだ」
「うん。凄い色だし、元の品種もわからないって、怪しすぎる」
ブルートパーズは、高級酒の名に恥じない素晴らしい酒であった。しかし、それは魔法的な才能が一切ない人間にとってだけである。魔法を使う力、すなわち魔力が多ければ多いほど、悪影響を受けてしまう。それが、魔法毒というのものであった。
スーザンやエシーのレベルだと、ワンショット舐めただけでも、酒乱もかくやとばかりに魔法で大暴れをしてしまう。どうしても魔力を解放し、大技を放ちたくて仕方がなくなるのだ。
「これと言った事件がないのも不気味だな」
「どうしよう、班長と連絡とる?」
「騎士団本部に行こう」
「うん」
フィル班長は今日、普段の業務に加えてデイヴィスの調査をしてくれている。辺りは既に夜だが、まず間違いなく騎士団本部で残業しているだろう。2人が今いる中央公園は王宮の騎士団本部から近い位置にある。これから行ってもフィル班長に会えそうだ。
「今晩はー」
「お疲れっす」
各部隊の班長が詰めている共同事務室には、案の定明かりが点いていた。2人が入ってゆくと、数人の班長たちが事務仕事をしていた。しかし、フィル班長は見当たらない。
「フィル班長帰っちゃいました?」
スーザンが近くにいた騎士に尋ねる。すると何人かが一斉に答えた。
「ん?なんだお前ら」
「ああ、フィリップ殿下んとこの」
「もうひとりは魔技でみたことあんな」
「擲竜と魔技は会議中だ。明日にしろ」
「時間外です」
フィル班長だけではなく、飛竜投擲部隊と魔法技兵部隊の班長たち全員が会議中だという。これは只事ではない。王宮騎士団はそこそこ時間外労働はある。夜勤もある。しかし、会議は普通日中に行う。特に魔法技兵部隊は夜勤がないので、定時退勤を旨としている。
それが、班長クラス全員が時間外の会議に召集されたのだ。
追い出されるように事務室を出た2人は、騎士団本部のある区画で不安な顔を突き合わせる。
「ねえ、レイニーフィールドの件かな」
「わかんねえ」
「何があったんだろ」
「とにかく今日は帰ろうぜ」
他にどうしようもないので、2人はそれぞれ家路に着く。だが、エシーは件のデイヴィスと同室である。不穏な空気が漂う中、自室に帰るのは緊張する。デイヴィスにどこまでこの状況が伝わっているかは不明だ。帰らないのも不自然である。結局エシーも騎士団の独身寮に帰って行った。
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