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怪異師伝奇  作者: 荒巻一
第一章【一部 怪異師への道】
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一尉家の令嬢・一尉雅

「祓うって…どうやってだよ。それに勝てる算段でもあるのか⁉︎」


「黙って見てろ。お前がこれからなる怪異師とはこういう職だ。そして俺たち安倍家の術式は、神将招来しんしょうしょうらいと呼ばれる式神を召喚して戦う」


 涼月りょうきは、ポケットの中に手を突っ込んで一枚の式紙を取り出し、手を組んで何かの型を作ると地面に落ちた式紙に霊力を流し込む。


天将招来てんしょうしょうらい! 来い、天空てんくう!」


 涼月りょうきが呼び出したのは、真っ白な毛並みを持つ戌であった。だが普通の犬とは明らかに違うオーラがある。


「噛み殺していいぞ、天空てんくう!」


 天空てんくうの遠吠えが響く。力一杯吠えた後、ぬらりひょんに勢いよく飛びかかると同時に涼月りょうきも地面を勢いよく蹴って、攻撃を仕掛けた。

  だか昭仁あきひとの目では、その速さを正確には捉えることはできなかった。

 

「これが…怪異師なのか」


 怪異師である涼月りょうきの戦いを呆然と見ていたが、それは恐怖から呆然していたのか、驚きから呆然していたのかは自分でもわからなかった。

 ただわかっているのは…


(こんなの無理、無理、無理! 人知も人外も超えてるじゃねぇか! どこぞのファンタジー世界だよ! 力をつけて戦う? 一瞬で死ぬに決まってる!)


「式神ですか…? 安倍家というワケですね。安倍家には千年前にもお世話になりました。とても厄介で面倒な相手でした。ですが、あなたはそうでは無さそうですね」


「千年前だと⁉︎ 何に執着して存在している⁉︎」


「平安時代からずっと夢を見ていたのです。私は妖怪総大将となることだけを。その夢を叶える方法が今、目の前にあるのですよ!」


 ぬらりひょんは刀を抜いて、天空てんくうを斬り捨てると、そのまま涼月りょうきに斬りかかる。


 キーン‼︎

 刀が何かに当たる音が聞こえる。


涼月りょうき!」


「チッ! 俺の名前を気安く呼ぶな!」


 心配して名前を呼んだだけなのに、何故か機嫌を損ねてしまったようだ。

 涼月りょうきは、ぬらりひょんの刀を霊壁で受け止め、睨み合うように競り合っている。霊壁と刀がギリギリと擦れるとき、火の粉のような小さな何が飛び散るのが見える。これは霊力と呪力がぶつかり合う時に見られるものだ。


 ぬらりひょんは次々に刀を振り回して、涼月りょうきの霊壁を破壊しようとしていた。激しい攻防が続くが、それも長くは続かなかった。

 

「強い霊力の持っているのですね?」


「お前の呪力が弱いんじゃないのか?」


「言ってくれますね。これでも私はまだ遊びのつもりです。少し本気を見せてあげましょう」


 ぬらりひょんは呪力を刀に込めると、禍々しい気が見える。呪力が涼月りょうきの霊力を上回ると、霊壁は簡単に破壊され刀が振りかかってくる。

 涼月りょうきはギリギリで躱すが、ぬらりひょんの攻撃は早い。涼月りょうきに隙が出来ると、腹に手をかざして呪力を込めて吹き飛ばしてしまった。


「がはっ!」


 昭仁あきひとの前で戦い、文句を言いながらも守ってくれていた涼月りょうきは遥か後ろで寝転がっている。

 昭仁あきひとを守るものは誰もいない。ぬらりひょんが無言で近づいてくる。昭仁あきひとは恐怖のあまり立ちすくんでいた。


(逃げろ! 逃げろ! 逃げろ! 涼月りょうきのところまで走るんだ! 背負って走るんだ!)


 頭で考え自分の心に言い聞かせるが、足が動いてくれないのが現状であった。

 

「では、アナタの血と肉をいただきましょうか! その力は私が貰い受けましょう!」


 ぬらりひょんが昭仁あきひとに襲いかかってくる瞬間——。


「睦式・八戸黒龍ヤエコクリュウ!」


 女性の声が一瞬聞こえると、天から龍が口を開いて降りてくる。龍と言っても、その身体は藤の花で出来ていて、地面にぶつかるとブワッと舞うように一瞬で散ってしまった。

 そして倒れた涼月りょうきの前に一人の女性が降り立ち姿を現す。凛とした顔立ちにロングヘアーからは、才女である雰囲気が伝わってくる。出来る女の顔立ちと言うべきだろうか。


(この人が…【一尉いちじょうみやび】なのか⁉︎)


「ホッホッホッ。邪魔が絶えませんね。一度退くとしましょう。またお会い出来るのを楽しみにしてますよ」


 ぬらりひょんは妖気を纏って地面の中へと潜るように姿を消してしまった。


「私の術式もまだまだね…それより涼月りょうき、大丈夫? 意識はある?」


 意識が朦朧としてる中、涼月りょうきみやびの手を握って一言伝える。


「ダラシないところを見られた…ハハッ…」

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