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怪異師伝奇  作者: 荒巻一
第一章【三部 怪異師への決意】
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四鬼

 突如現れた四体の呪妖怪じゅようかい。狙いは不明だが、京都に向かって来ているのは確かであった。


「速やかに対処しないといけないね」


「そうですね。こんなところで戦ったら被害が出ますからね」


「お、俺にも出来るでしょうか?」


 昭仁あきひとは声は震えていた。


「どうだろうね。昭仁あきひと君にどれだけの力があるかわからないし、それでもやるっめ決めたんだよね?」


「はい…」


「安心しろ。お前にまだ力がないのは知ってる。安全は俺が守ってやる。それにひなたなぎなみもいる」


涼月りょうき…。ごめん、弱気になって。やるしかないんだよな!」


「あぁ。あやかしは祓わないとダメだからな」


 昭仁あきひとは周りを見渡す。ハッキリ言ってここにいる怪異師は、涼月りょうき以外知らない面々だ。

 ひなた九條くじょう兄妹も賢人けんとも無言で頷いてくれる。信頼関係があるほどの関わりはまだないが、嬉しい気持ちになっていた。


(やるしかないんだよな。みんなの迷惑にならないようにしないと)


 そして昭仁あきひとたち六人は走り出した。しばらく走ると辺りは田園が広がる田舎へとやってきた。

 

「もうすぐ来るよ。かなり近づいてきた」


 六人は立ち止まって辺りを見回した。

 すると突如、賢人けんとが吹き飛ばされた。何者かに殴られた衝撃と音が聞こえた。


賢人けんとさん⁉︎ 大丈夫ですか? 何が起きたんだ?」


 昭仁あきひと賢人けんとに駆け寄ろうとしたが、『こっちに来てはダメだ!』だと賢人けんとに警告されると、そのまま暗闇の中へと姿を消してしまった。


「一体、何が起きているんだよ⁉︎」


「気をつけろ。既に呪妖怪じゅようかいが迫っていたんだ。なんて速さだ」


 涼月りょうきは自然と昭仁あきひとの前に立ち警戒を強めた。隣りではひなたも戦闘体勢に取っていた。なぎは刀を抜き、なみは弓を構えている。

 するとキラーンと光る何が猪突猛進でなぎなみに向かって来る。咄嗟に放った矢は簡単に弾き返されてしまった。一瞬ではあるが鬼が見えた。鬼はなぎなみに掴み、引きずりながら暗闇の中へと消えた。


なぎなみ!」


「気をつけろひなた。まだ二体いるぞ」


 涼月りょうきは警戒するように命じる。暗闇の奥の方からドドドッと音を立てながら津波が押し寄せてくる。涼月りょうきはすぐさま霊壁を張り、津波を防いで昭仁あきひとを守った。しかし、ひなたは反応が遅れたことで流されてしまう。


「お兄ちゃん!」


 手を伸ばすが、流水が速すぎて手を掴むことが出来なかった。ひなたも同じく暗闇の中へと姿を消した。


「みんなバラバラになっちゃったぞ…」


「おい、気を抜くなよ。まだ一体残ってるはずだ」


 涼月りょうき昭仁あきひとに向かって鎌鼬が飛んでくる。涼月りょうきは鎌鼬を躱したが、昭仁あきひとは躱すのが遅れて頬を掠めてしまった。傷口からゆっくりと血が流れてくる。


「何者だ⁉︎ 隠れてないで出てこい」


 暗闇の中から、出てきたのは緑色をした一体の鬼であった。その気からは強い呪力を感じ取れる。


「上手く分断することに成功したか」


「チッ。やっぱり呪妖怪か。最近沸きすぎだな。お前たちは何なんだ?」


「何だと聞かれたら答えてあげるのが世の情け。ということだな。いいだろう! 教えてやる。耳の穴をかっぽじって聞け! 我々は四鬼よんき‼︎ 藤原千方ふじわらちかた様に使える鬼! そして風を操る鬼こそが風鬼ふうき様だ!」


 昭仁あきひと四鬼よんきと聞いて、太平記で読んだ記事を思い出した。


四鬼よんき

 様々な説があるが、中でも『太平記』第一六巻『日本朝敵事』の記事が最も有名である。

 平安時代、豪族であった【藤原ふじわら千方ちかた】は、四人の鬼を従えていた。どんな武器も弾き返してしまう堅い体を持つ【金鬼きんき】、強風を繰り出して敵を吹き飛ばす【風鬼ふうき】、如何なる場所でも洪水を起こして敵を溺れさせる【水鬼すいき】、気配を消して敵に奇襲をかける【隠形鬼おんぎょうき】である。


 そうなると、流されたひなた水鬼すいき、攻撃を跳ね返していた鬼に拐われた九條くじょう兄妹は金鬼きんき、見えない攻撃を受けた賢人けんと隠形鬼おんぎょうきと戦ってることになる。


(いやおかしい。藤原千方ふじわらのちかたは架空の人物で存在はしてないはず。仮にその説が覆ったとしても1200年も前に死んでるんだぞ。どうしてそんなのが?)

涼月りょうき、不可解なことだらけだぞ」


「お前の言いたいことは後だ。どうにせよ祓うことが先決。油断するな」


 昭仁あきひとに緊張が走る。せめて涼月りょうきの邪魔だけにはならないようにと。


「さて、一戦やろうじゃないか!」


 それぞれの戦いが始まろうとしていた。

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