東京からの観光者
四月二十七日 —午後五時四十五分—
「おー! 久しぶり。元気にしてた?」
俺は東京に住んでいる、幼馴染みに電話していた。電話の内容は、俺が上洛する前から約束していた京都観光だ。
それが怪異師の修行で計画がお釈迦になるところだった。もっともそんなことは友達には口に出来ないのだが。
「そうなんだよ。それで明日から休みだから、計画してた京都観光やろうぜ。うんうん、了解。楽しみにしてる」
ピッ!
「はー明後日が楽しみだな。ずっと非現実的なことに付き合わされてたし、ようやく学生らしいことができる」
ベッドの上に寝転がり、天井を見上げる。
久しぶりの我が城にも戻って来れて、安堵したのか今日は快眠出来そうだ。明日は1日、英気を養うためにも寝よう。
じゃないと京都観光が楽しめないもんな!
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四月二十九日 -午後零時十分-
京都駅・時 の広場
「おーい!」
キャリーを引いて手を振りながら、昭仁の元に駆け寄ってくるのは、東京に住む幼馴染みである、【吉田和真】と【泉佳純】である。
「和真! 元気そうでなによりだよ」
「久しぶりね。昭仁」
「佳純も久しぶり! 化粧するといつも以上に美人だな!」
和真は浅草大学に通い、佳純は淡青大学に通う友人である。友人と言っても付き合いは幼稚園の頃からで腐れ縁みたいなものだ。
俺たちは歴史好きという共通点もあり、色んな場所へ三人で旅行することが多い。
「それで、昭仁はいい子が見つかったのか?」
「また、それかよ。実は初日から遅刻してクラスで浮いてるんだよ。もう最悪…友達みたいな人はいるんだけど、無愛想な奴でな」
「それって友達なの?」
「アハハ。いいスタートが切れなかったのかよ」
「和真と佳純はまだ付き合ってるの?」
「お前、まだって失礼だろ! それに別れてたら気まずくて一緒には来ないだろ!」
「それもそうだな。もし別れてたら佳純だけ呼んでたよ」
「男の友情を捨てるつもりかー!」
和真と佳純は高校2年生の頃から付き合い始めた。仲良し三人組だったのに、俺だけ除け者にされた気分はあったけど、いつも一緒に遊んだりして変化はなかった。
(友情って崩れないんだな。せめて俺もこっちにいる涼月や雅さんとこういう会話が出来たら少しは違うんだろな。出会って5秒もしないうちに、まともに会話が出来たのは一ヶ月振りだよ。こんなくだらない会話が新鮮で楽しいって感じてるんだから)
「それで昭仁、計画は立ててるの?」
「もちろん! バッチリだぜ! アクティビティに美味いご飯も歴史観光も完全制覇できるように組んである!」
「よし! 昭仁先生を信じてるからな! 俺と佳純をガッカリさせるなよ!」
京都観光は明日から開始だ。
今日は俺の家で食事会だ!
三人は昭仁の借りるアパートへと向かった。




