4:蜜月の夜
エミリアの屋敷にある浴槽の中、彼女は俺の膝に乗り、その身体を預けてきた。
「えへへっ、上手くいったね~ご主人様っ♡」
「あぁ、そうだな」
少女の身体を抱き締めながら答える。
――あの自演でエミリアを叱った件から数日。俺を馬鹿にしてくる者はいなくなった。
さらにそれだけではない。
あれからエミリアが『不器用ながらも周りを気遣うような言動』――をする演技を始めたことで、さらに俺の評価は上がっていった。
エミリアを変えたきっかけは俺っていうことになってるからな。
彼女への印象が良くなるたびに、俺に対しての評価も上がるって仕組みだ。
「最初は躊躇いがあったんだけどなぁ……。自分を認めさせるために、『エミリア』を利用してもいいのかって」
だがやってみたら何だこれは。
誰からも蔑まれない『普通の世界』というのは、こんなにも快適なものなのか。
生まれた時から貧乏領地の能無し魔法使いとして扱われてきたことで、俺の感覚は麻痺していたかもしれない。
馬鹿にされることは嫌だったんだ。侮蔑の目で見られることは、心が痛むことだったんだ。
今の環境を手に入れたことで、それをはっきりと自覚することが出来た。
そんな俺にエミリアが微笑みかけてくる。
「ねぇマスター、満足できた? この身体の持ち主である社会のゴミを蹴落として手に入れた幸せは、どんな感じ? もうお腹いっぱい?」
さえずるように問いかけてくるエミリア。
俺はそんな彼女を強く抱き締め、その耳元に顔を寄せた。
「いいや、まだだ。まだこんなものじゃ足りやしない。
女の子一人を犠牲にしておいて、普通の環境ごときで満足だと? そんなわけがあるか。
俺は『エミリア』のためにも……そして自分のためにも、もっと幸せを手に入れたい……ッ!」
「あははははッ! 流石はわたしのご主人様っ! そうだよね、もっと幸せになろう! わたしを生み出してくれたアナタには、世界で一番幸せになって欲しいもんっ!」
俺のほうを振り向いてギュッと抱きついてくるエミリア。
タオル一枚に包まれた豊満な胸が顔に当たり、甘い感触に吸い込まれそうになる。
エミリアは俺をまっすぐに見つめ、とろんとした瞳で微笑んだ。
「うふふっ……ねぇご主人様、明後日には校外学習があるよね? 勉強と称して、みんなで野生のモンスターを取り囲んで倒したりするんだっけ。
でもわたし思うんだぁ。わたしみたいなよわーいモンスターをイジメたって、何の成長にもならないって。だからぁ……」
――傭兵団、雇っちゃおっかぁ?
そう囁きながら彼女はタオルを剥ぎ取った。
「傭兵団をなぁ……あぁなるほど、そういうことか」
露わになった白い肌を見つめながら、言葉の真意を理解する。
――どうやら次は、『ヒーロー』を演じればいいらしい。
これは楽しくなりそうじゃないか。
俺は胸を高鳴らせながら、愛するヒロインを腰の上に乗せたのだった。
・ヒーロー……!(※自作自演)
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@新連載はじめました!
「俺は長男だから諦めない」~『ファイヤーボール』しか使えず『ブラックギルド』を追放された俺、『10万年』修行したことで万能魔法に到達する。戻れと言われても『もう遅い』。ホワイトな宮廷に雇われたからな〜
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