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4-15 兄弟

 楓恋とロッテがジュリアンを連れて神域に行っていた頃、魔王城に敵襲があった。ジェイコブが城門に現れたのである。ジョージとアメリア合作で張りなおした結界のおかげで、ダイレクトに中庭に侵入という事態だけは避けられた。

 兵士や冒険者の生き残り達が続々と城門に集まってくる。

「ふむ、まだこれだけの戦力が残っていたんだね。蟻がいくら集まっても蟻でしかないが」

 残存兵力は魔法でどんどん蹴散らされてしまう。

 ジェイコブの行く手をアメリアが阻む。

「残虐王子のお出ましだな。どっちが本物の魔王か決着をつけてやる!」

「くだらないね。僕が用があるのはミアさんだ。ビーコンが示す上空にはミアさんはいなかった。ミアさんをどこに隠した?」

 アメリアは違和感を感じて問う。

「あんた、誰だ? ジェイコブじゃないよね?」

「おっと失礼、荒事になると思ってこの姿できたが、僕はオスカーだよ。魔王アメリア君」

 紳士ぶってお辞儀をするオスカー。顔だけがオスカーのものに変化した。


「どういうこと? ジェイコブの体で中身はオスカー?」

「しょうがない、探求心を持つ者に答えてやらないわけにはいかないね。僕は楓恋君によって肉塊にされたジェイコブを回収してきた。だが、蘇生は間に合わなかったんだ。そこで、僕の体に取り込むことにした」

「なんだって!? それって、人間同士のキメラみたいなこと?」

「その通り。図らずも僕の頭脳とジェイコブの武力を併せた究極の王がここに誕生したわけだよ。本当はジェイコブを上手く使って、僕は裏から世界を支配しようとしていたわけだが、死んでしまったからね。まったくあのお転婆メイドには肝を冷やしたよ」

 アメリアは無詠唱でステータス透視をする。


オスカー・ド・フォルスタン♂ 43歳

レベル 20000

種族  悪魔

ジョブ 大魔王

職業  フォルステール王国第一王子

スキル 錬金術・呪術・死霊術・全戦闘マスタリー・全魔法マスタリー

特技  生体改造・マナに関する技術開発・蹂躙・凌辱・拷問


「なるほど、ジェイコブが持ってたスキルや特技まで引き継いでるんだね。それにしてもレベル20000って……」

 さすがのアメリアも逃げだしたい気持ちをこらえるのが精一杯である。アメリアも精進してきたものの、こちらの世界では大した日数が経っているわけでもなく、レベルは3000にも満たない。


「聞いた話では、レベルのカンストって10000じゃないの? あんたどうやって?」

「そこだよ。僕はジェイコブを取り込むことでその壁を超えることができた。二人で二倍。単純なことだろう?」


 イル・カンドーレが背後から不意討ちをした。巨大な手で鋭い爪の猫パンチである。

「よし行け、カンドーレ!」

 オスカーはジェイコブの格闘スキルで応戦している。

 カンドーレは二つの生命が合体した生き物だし、相手のレベルに合わせる性質だから互角のはずだ。

「ネロ、ビアンカ、おいで!」

 そばにいたネロとビアンカが鎧になってアメリアに装着される。両手には巨大な鉤爪かぎづめが装着されている。

「魔装イル・グリジオ装着!」

 アメリアがママの指導の下密かに温めていた合体フォームである。肩口がライオンの顔になっているゴツゴツとした装備だ。


「レベルブースト!」

 魔装状態のアメリアのレベルが五分間だけ10000まで上がる技である。

「せめてカンドーレのアシストだけでも!」

 オスカーは互角のカンドーレと戦いながらアメリアの邪魔も入って押され気味になった。

「鬱陶しいことをしてくれるね。だけど、この猫ちゃんの対策を考えずに乗り込むと思うかい?」

 オスカーは懐に手を入れると、注射器のようなものを乱射した。

 そのうちの一本がカンドーレに刺さってしまう。


「毒か!? 卑怯な!」

「安心したまえ。彼等の合体を維持できなくするだけの薬だよ。こう見えて僕も猫派なのでね」

 カンドーレは合体が解けて二匹の猫に戻ってしまった。


 オスカーは高笑いする。それもそのはず、この城にもはや敵う者などいないし、陽平が帰ってきたところで10000レベルを超えているとは思えない。

「倫理観のおかしい悪魔ならではの強さか。あたしらの負けだね」

 ジョージ国王やギルドマスター、蛇娘デルフィに勇者マティアスも駆けつけてきたが、

「みんな、逃げて。こいつはあたしがなんとか……」

 オスカーの手刀がアメリアの胸を貫き、心臓をつかむ。

「あたしがなんとか、できると思うのかい?」

 フンと鼻を鳴らしてそれを握りつぶした。

 声を上げる暇も無く、アメリアの目から輝きが消えた。

 魔装が解けてネロとビアンカに戻る。


 即死して放り出されたアメリアをジョージが蘇生・ヒールする。

「ああ、面倒だ。あれを使ってみようか」

 オスカーはストレージから真っ黒な刀身の長剣を取り出した。赤紫のオーラが燃えるようにまとわりついている。

「古代の強力な呪いがかかった代物を発掘してね。これで斬られるとヒールや蘇生で治らないんだ」

 ヒール中のジョージはアメリアにかぶさるようにしてかばう。

「アメリア君を渡すんだ、父上」

 オスカーはジョージの首根っこをつかんで無理矢理立たせる。

「オナゴをイジメるのはよさんかオスカー、情けない男め」

 立ちはだかるジョージを裏拳で弾き飛ばし、アメリアの首をつかんで持ち上げるオスカー。


「何者かは知らないが、この魔王アメリアに助力し、我が妻ミアを秘匿している者よ、聞いているな! 今すぐ僕をそこに転移させるんだ。さもなければアメリア君の手足を一本ずつ切り離し、手も足も出なくなったところで犯してやる! 虫けら共が見ている前で魔王をおもちゃにしてやるぞ!」

 ジェイコブの残虐性が乗り移ったような叫び声でアメリアは目を覚ました。

「……ママ! だめだからね! あたしはどうなってもいいから、こんな奴の言うこと聞いちゃだめだ!」

「どうなってもいいか。いつまでカッコつけていられるかな?」

 オスカーは一思いにはやらず、アメリアの左肩からノコギリを引くように少しずつ切り始めた。

 悲鳴をこらえて呻くアメリアだったが、とうとう叫んでしまう。

「魔王が可愛い声で鳴くじゃないか。元々これは拷問用に痛みを何倍にも増幅して、持続させる呪いがかかった剣らしい。相当痛いんだろうね」

 次の瞬間、オスカーの体が転移し、アメリアは解放された。

「ちくしょう……ママが危ない……」

 転移しようとするアメリアをギルドマスターが止めた。

「よせ、女神様に止められなきゃ、どの道世界はもうおしまいだ。女神様に娘が犬死にするさまを見せることはあるまい」

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