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4-10 束の間の平穏

 マデリンと王妃の救出に成功して城に戻った一行は、それぞれに来たるべき戦いに備えていた。

 前庭ではジョージ国王を慕ってついてきた兵士達や、周辺各国から集まった生き残りの冒険者達が訓練をしている。アメリアや聖獣、魔獣の兄弟も参加して胸を貸している。

「見込みのあるやつはいるかい?」

 ギルドマスターに問われ、アメリアは答える。

「直接戦力になりそうな人はいないかな。だけど一人威勢のいい勇者が陽平に会うって息巻いてるよ。彼はまあまあだと思う。あとはうちのメイドのデルフィもちょっとはやれそうかな」

 マスターは肯いて城に戻っていく。


「魔王アメリア、もう一本稽古をつけてくれ! 暗黒大賢者が帰ってくるまでにもっと強くなっておかなくては!」

 討伐対象だったはずのアメリアになぜか稽古をねだる、ハーフエルフの勇者マティアス。

「あのさ、暗黒大賢者もいまやウチらの頼みの綱だから、帰ってきても君に構ってる暇無いと思うよ?」

 言いながらも木剣片手にヒラリヒラリと相手をするアメリア。

「分かってるさ。だから、今度の件が全部片付いてから、ぶちのめして村の復興を手伝わせるんだ。俺が村のあちこちを壊したり穴掘ったりしたから長老様がカンカンで、暗黒大賢者を連れてこいってすごい剣幕だったからな」

 陽平の想像をはるかに超える脳筋勇者だったらしい。

 アメリアは戦いながらも片手で腹を抱えて笑う。

「笑うな! 長老様も含めてうちの村は全滅したんだ!」

「ああそっか、ごめん……でも、がら空き!」

 マティアスの足の運びがお留守になっていて、両足揃ったところを足払いで倒される。アメリアは木剣で胸を突く動きをして寸止めする。

「君が最初に会ったのがヨーヘイゲンじゃなくてあたしだったら、サクっと始末されてただろうな。あいつと出会ってからあたしも少し優しくなった。……あのバカまだ帰ってこないのかな」




 ゲストルームでは王妃エマが国王ジョージに懺悔していた。

「――すると、そなたはジェイコブに監禁されて、無理矢理手込めにされたわけではないと?」

「はい、私はあなたに見初められて王妃になる前、メイドとしてジェイコブぼっちゃまのことを密かにお慕い申していました。もちろん、結婚前、あなたとお付き合いが始まって以降は別です。あなたへの愛は嘘じゃないし、ずっと貞操を守っていました。でも、サンレームに軟禁されてからは……」


 ジョージはストレージから宝剣のような古めかしくて豪華な剣を取り出して抜いた。

「そこに直れ」

 エマは素直に従い、床に両手をついて首を差し出す。

「言い残すことはあるか?」

「せめてお腹の子を産むまではと思いましたが、大罪人の子です。私があの世に連れて参ります。コブ付きメイドの私に、あんなに優しくしてくださったのに……ごめんなさい、王様……でも、マデリンだけはせめて……」


 ジョージは扉に向かって話しかける。

「だ、そうだ。入りなさい」

 立ち聞きがバレたマデリンが気まずそうに入ってくる。

 ジョージは納刀してストレージに戻すと、王妃の頭をワシワシ撫でた。

「無様に言い訳したならあるいは斬っていたかもしれん。だが、そなたは潔かった。そなたを赦すぞ、エマちゃん」

 普段通りエマちゃんと呼ばれて安心したのか、王妃の目から涙がこぼれた。

「元はと言えば、気付かなかったとはいえ、息子の初恋の人を横取りしたワシが悪かったんじゃ。産まれてくる子どもはワシの子、マデリンの妹として養子縁組しよう」

「そんなもったいない……」

 ジョージは穏やかな笑顔で首を振る。

「愛するそなたと、愚か者とはいえ息子の子、愛する者達の子を我が子とするのになんのためらいもないよ」


 エマがジョージに抱きつくと、ジョージはマデリンに手招きする。

 親子三人で感動的なハグを交わしていたのだが、

「ちょっと、父上!」

「おっと、エマちゃんと間違えたわい」

 ちゃっかりマデリンの尻を撫でていた。

「王様、私が言えたことじゃないけど、これ以上家族構成をややこしくしないでくださいね」

「魔王城のマナで若返ったのか、あっちのほうがすっかり元気になってきてのう」

「だからって、娘にセクハラする人がありますか!」


 夫婦の小競り合いを眺めながらマデリンがふと疑問に思ったことを口にする。

「ママはなんで王様って呼んでるの? 前は名前で呼んだり、人前では陛下だったわ」

 ハッとするエマ。代わりにジョージが答える。

「ワシとエマちゃんが結婚する前、ラブラブで付き合ってた頃そう呼んでいたんじゃ。皆が呼ぶ『陛下』では恋人感が無いし、ジョージと呼び捨てるところを人に見られでもしたらまずい。そこで王様というのが二人だけの秘密の愛称だったというわけじゃよ」

「それが無意識に出ちゃったってことは……ああ、はいはい、ごちそうさまでした」

 ノロケた思い出話を聞いて損したという顔で、マデリンはゲストルームをあとにする。

 一度出かかったところで顔だけ戻るマデリン。

「ママはもう臨月だから、あんまり激しいことしちゃだめよ」

 二人は抱き合って熱く口づけている最中だった。エマの肩越しにジョージは親指を立てた。

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