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3-13 王

 国王不在の王城ではジェイコブが代理として指揮を執っていた。

「申し上げます! エシタルッサ伯爵領が攻撃を受けています! 至急援軍を乞うとのこと!」

 エシタルッサ伯爵領は南の隣国で同盟国のルドヴィンに属している。

「おのれ化け物め! 次から次と!」

 オスカーの実験によってジュリアンのレベルは飛躍的に上がり、5000を超えていた。人の姿を保ったままのレベル大幅アップにオスカーは大成功だと喜んだ。しかし、理性を失って制御不能のジュリアンが次々に街を襲って滅ぼしている。

「今のところ、アレに対抗しうる手段がないから、うかつに手を出すな。目標の監視を続けつつ、白魔導師団による蘇生、治療と避難を急がせろ!」


 命令を受けた兵士が出て行くと、入れ替わりにオスカーが入ってくる。

「兄上、酒臭いぞ。兵たちの士気にかかわるから飲むなら街に出るなり、目立たぬようにしてくれ」

「どうせ民共を救う気などないんだろう? この機に乗じてジュリアンに大暴れさせて、世界の勢力図が塗り替わるのを待っている。我が弟ながらに恐ろしい男だよ、まったく」

 トロンとした目で絡んでくる兄を冷徹な目で見る。

「怖じ気付いたのか兄上? 王家に生まれた以上、勢力拡大の野望を持って当たり前、世界を支配するチャンスとなればなおさらだ。俺は血がたぎって止まらないぐらいだぞ」

 オスカーは愉快そうに笑った。

「怖じ気付いたりはしないさ。実験の大成功を祝って祝杯を挙げていただけだ。強化の準備は整っているから、体が空いたら研究室までくるといい」

 オスカーは転移で帰っていった。

 ジェイコブは部下達に二、三引継ぎをしてすぐに追いかけた。


 ジェイコブが研究室に着くと、オスカーはソファーに寝そべって眠りかけていた。

「兄上、起きてくれ」

 オスカーはめんどくさそうに起き上がり、眼鏡をかけた。

「今すぐやるのかい?」

「万が一王都が襲われたら厄介だからな。俺が抑止力になっておくのは必要だろう」

「一応言っておくけど、エッセンスは大勢の子ども達の思念、怨念の塊みたいなものだから、気をしっかり持たないとジュリアンのように制御を失うよ。覚悟はいいのかい?」


 ジェイコブは鼻で笑う。

「この俺様がガキ共の怨念ごときにビビるとでも思うのか? 怨霊の千や二千、支配しきってみせるさ」

「千や二千ではだめだよ。ジュリアンと互角では抑止力にならないからね。そう思って一万人近くの子ども達を追加してあるから、さすがの君でもきついかもしれないよ」

「くどいぞ兄上。いくら増えたところで民は民。王たる俺様には逆らえないのだ。それが民の宿命、王の宿命だからな」

 二人は階段を下りていく。

「父上はどうするつもりなんだい? 父上が存命のまま王位を奪ったところで国民達が納得するだろうか?」

「当分は魔王アメリアの尻でも撫でさせておけばいいさ。いずれジュリアンの大破壊の責任を親である父上に押し付けて退位を迫ればいい。俺は最愛の弟を泣く泣く手にかけた悲劇の英雄として王位をもらい受けることになる」


 檻のある部屋に着くとジェイコブは自ら檻に入っていく。

 オスカーから受け取った酔い止め薬を飲み下して、ごろりと横になった。

「戦争ごっこで寝不足だからな、眠っていても構わないか?」

「ああ、どうせ施術中はまともに意識など保てないさ。気をしっかり持つと言ったところで、それは元々の心の強さ、素質のようなものだ。まあ、君なら大丈夫だろう」

 オスカーがタッチパネルを操作すると、緑の霧に続いて血の色の霧が発生する。

「僕も久しぶりの酒で眠くなってきたよ。それじゃあ、素敵な悪夢を」

 オスカーが帰っていくと、ジェイコブは間もなく眠りについた。

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